【3321】虫が寄生していると言って皮膚科受診を繰り返す兄
Q: 40代後半の兄に相談です。弟である私は20代です。
兄は30代後半に、有機リン中毒で救急搬送され病院からの連絡をうけ、それをきっかけにそれまで長年疎遠だった私とのかかわりが再開しました。兄は、車上生活を送っていたのですが、車の中に虫がいて、刺されるとのことで、農薬を散布したのですが苦しくなって、自分で救急車を要請したようです。実際に足などに発赤疹もありましたが、入院中に自分の歯に盗聴器を埋め込まれている、などの妄想を訴えるようになりました。医師の話では、精神病(統合失調症)の可能性と一時的な有機リン中毒の精神症状の可能性の説明をうけました。その後も便から虫が出てくるなど話していました。その時の目つきは、異常でしたから、おかしかったと思います。それからも性格なのかな?と思われる程度の「変さ」ありましたが、学生時代からだったので、家族は一時的な中毒の精神症状だったのでは、と統合失調症だとは信じたくなかったのですが、1年ほど前より「虫」の話をし始めました。精神異常者と思われたくない、誰も信じてくれないとひた隠していたようです。何年も前からスキンヘッドにしたり、今では、体毛を剃っています。今一番困るのは、疥癬だ、ダニだ、寄生虫だ、と言っていろいろな皮膚科受診を繰り返します。確かに全身湿疹がひどくかゆくて眠れない、一日何回も入浴をする、など本人も大変苦しんでおります。ただ、幻視、幻覚である話をしても怒り出します。相談は持ちかけられるが、アドバイスを聞いてもらえない。最近は精神科の受診もしておらず、統合失調症の症状が悪化していくばかりで心配です。何か突破口がないかと悩んでいます。
林: 「虫」についてのお兄様の言動、すなわち、
何年も前からスキンヘッドにしたり、今では、体毛を剃っています。今一番困るのは、疥癬だ、ダニだ、寄生虫だ、と言っていろいろな皮膚科受診を繰り返します。
これらは皮膚寄生虫妄想を思わせる症状です。(【0623】母が、体内に虫が潜んでいるといってききません
が典型的な皮膚寄生虫妄想の例です)
皮膚寄生虫妄想は、その症状だけが単独で現れるケースもあり、その場合は現代の診断基準では妄想性障害の一型ということになりますが、この【3321】のケースは皮膚寄生虫妄想以外の精神病症状が著明ですので、統合失調症に間違いないでしょう。
最近は精神科の受診もしておらず、統合失調症の症状が悪化していくばかりで心配です。
心配するだけでは何も解決せず、文字通り「統合失調症の症状が悪化していくばかり」です。行動を起こしてください。統合失調症である以上、精神科の受診以外には方法はありません。
(2016.11.5.)