【2426】「お酒をやめる以外の治療法はありません」と言われても・・・
Q: 30代女性です。批判かたがた質問させていただきます。 私の弟はアルコール依存症です。弟は明確な病識を持ち、根気強く通院してもいますが、断酒と飲酒の無限ループを繰り返しており、本人も家族も疲弊し切っています。 林先生は、ホームページのなかで、アルコール依存症の治療について「お酒をやめる以外の治療法はありません」と仰っています。林先生以外にも、多くの先生方が、著書等の中で判でも押したかのように同じことを仰います。 しかし、お酒を簡単にやめられたら、それは依存症ではありません。お酒をやめられないから「依存症」なのではないでしょうか。従って、「お酒をやめる以外の治療法はありません」という情報ぐらい、アルコール依存症の当事者にとって無益なものはありません。 私の理解では、アルコール依存者とは、ブレーキが壊れた車のようなものではないかと思うのです。いま、ブレーキが壊れた車が、下り坂を猛スピードで走っているとします。下り坂の先は崖で、車が崖から落ちたら運転手は死んでしまうでしょう。このとき、運転手に「ブレーキを踏め、それ以外に助かる方法はない」と言ったところで仕方がないではありませんか。だってブレーキは壊れているのですから。 うちの場合、「お酒をやめる以外の治療法はありません」なんてことは、弟本人も、家族も、百も承知です。でもやめられない、やめてくれないのです。そんな我が家族にとって必要なのは、「ではどうやってやめるのか」という具体的な指針です。 投薬による対処法はあるのか? 入院した方がよいのか? 自助団体やカウンセリングはどれくらい有効なのか? 患者本人はどういう心の持ち方をすべきなのか? 家族はどのような支援をすべきなのか? 等々という、具体的な指針が、我が家族には必要なのです。 にもかかわらず、どの先生も、そのような具体的な指針を殆ど示されず、ただ「お酒をやめろ」だけです。これでは、専門家の意見にしてはあまりに雑すぎやしないかと思ってしまいます。 林先生は、私のこのような見解をどう思われますか。甘えていると思われますか。
林:
林先生は、ホームページのなかで、アルコール依存症の治療について「お酒をやめる以外の治療法はありません」と仰っています。林先生以外にも、多くの先生方が、著書等の中で判でも押したかのように同じことを仰います。
それは、お酒をやめる以外の治療法はないからです。
お酒を簡単にやめられたら、それは依存症ではありません。お酒をやめられないから「依存症」なのではないでしょうか。
その通りです。
従って、「お酒をやめる以外の治療法はありません」という情報ぐらい、アルコール依存症の当事者にとって無益なものはありません。
有益か無益かは問題ではありません。事実が問題です。お酒をやめる以外の治療法はない。それが事実です。
私の理解では、アルコール依存者とは、ブレーキが壊れた車のようなものではないかと思うのです。
そのたとえは適切だと思います。
いま、ブレーキが壊れた車が、下り坂を猛スピードで走っているとします。
はい。
下り坂の先は崖で、車が崖から落ちたら運転手は死んでしまうでしょう。
そうでしょう。下り坂の先が崖なら。
このとき、運転手に「ブレーキを踏め、それ以外に助かる方法はない」と言ったところで仕方がないではありませんか。
ブレーキを踏む以外に助かる方法がないことは事実です。
だってブレーキは壊れているのですから。
「ブレーキが壊れた車のようなもの」と「ブレーキは壊れている」は違います。
(もし文字通り「ブレーキが壊れている」のであれば、文字通り絶望です)
林先生は、私のこのような見解をどう思われますか。甘えていると思われますか。
甘えているとは思いません。しかし、事実から目をそむけようとしていると思います。
(2013.8.5.)