【3122】極度の心配性の夫への適切な対応は?
Q: 私は30歳女性です。32歳の夫のことで質問です。
夫は普段からスポーツをしており身体が大きく、性格が大らかで明るいタイプなのですが、時々ひどく落ち込んでいる様子を感じることがありました。恋人時代を含めて6年以上の付き合いになりますが、今年に入り理由を話してくれました。
・屋外で軽いすり傷を作った時に、映画で見た破傷風を思い出して自分も感染してしまったのではないかと不安になる
・怪我をしたわけでもないのに足に違和感を感じて、骨肉腫のような悪い病気に罹ったのではないかと不安になる
といった小さな不安の種が、「もし死んでしまったらどうしよう。妻と子どもが路頭に迷ってしまうだろう」と大きくなり、夜眠れなかったり、仕事中も頭の中から消えずに小さなミスをしてしまうこともあるようです。期間は1週間から10日、それが年数回程度だと思います。
幼いころからこの傾向があり、人に話すと笑われると思い、誰にも言えずにいたそうです。夫にも自分は病的であるという自覚はあるようで、最近はカウンセラーを探してみようかなと言っていました。
ここで質問なのですが、
1)私に打ち明けてくれた時「辛いのに話してくれてありがとう。辛くなったらいつでも話を聞くよ」と言ったのですが、この対応で良かったでしょうか。積極的に専門機関の受診を勧めた方がいいでしょうか。
2)インターネットで検索すると出てくる「不安障害」というものよりは軽いように思うのですが、上記のような症状では何か病名が診断されるのでしょうか。落ち込んでいる期間は苦しそうですが、生活に支障をきたすレベルではないようです。行動の繰り返しはありません。
よろしくお願いいたします。
林: 診断名がつくレベルには至っていないと思います。つまり正常範囲内ということです。
【3123】私の強迫障害の傾向は、病気といえる範囲でしょうか
のようなレベルになると、強迫性障害という診断名がつくことになります。
また、
【3124】強迫性障害でしょうか、ただの心配性でしょうか
は、診断名がつくかつかないかの境界線上にあるといえるでしょう。
が、この【3122】は境界線のレベルに至っているとも判断できません。(但し、もっと詳しい様子がわかれば、この判断は違ってくるかもしれません。たとえば「仕事中も頭の中から消えずに小さなミスをしてしまう」が具体的にはどの程度のものなのか。実は小さいとはいえないレベルのミスであれば、強迫性障害という診断名がつくこともあり得ます)
1)私に打ち明けてくれた時「辛いのに話してくれてありがとう。辛くなったらいつでも話を聞くよ」と言ったのですが、この対応で良かったでしょうか。
はい、それで良かったと思います。
積極的に専門機関の受診を勧めた方がいいでしょうか。
現時点ではそれは必要ないでしょう。
但し「現時点では」です。もし生活に支障をきたすレベルになれば、受診が必要です。
すると「生活に支障をきたすレベルになる前に受診したほうがいいのでは?」という問いも考えられますが、強迫性障害は、正常範囲の不安との差は微妙ですし、【3122】のようなケースが将来強迫性障害になる可能性が必ずしも高いとはいえません。
この点が統合失調症やうつ病(真のうつ病)との違いで、統合失調症やうつ病では、たとえその時点で症状が軽くても、将来悪化する可能性はかなり高いので、軽いうちに受診することが強く勧められます。しかし強迫という症状にはそれはあてはまりません。
2)インターネットで検索すると出てくる「不安障害」というものよりは軽いように思うのですが、上記のような症状では何か病名が診断されるのでしょうか。
診断基準上は、不安障害と強迫性障害は区別がつきにくい場合もあります。しかし実際のケースでは、そういうことはあまりありません。この【3122】のケースは、もし今の症状が重くなれば、強迫性障害という診断になるでしょう。質問者である奥様の適切な対応によって、病的レベルの進展が防止されているという見方もできると思います。
(2016.1.5.)