【3107】72 歳の父が 4 年前から人が変わったようになりました
Q: 40代女性です。
実家の72歳の父が、4年前までは温厚だったのが、突然(私から見ると)73歳の母に精神的DVまがい、もしくはモラル・ハラスメント的な態度をとるようになりました。県の女性健康相談センターに相談したら、はっきりDVだと言われました。
・何か母に言うときは必ず睨みつけながら、恫喝する。
・自分がすればいい用事(JAFの会費のコンビニ振込みとか)を、母に命令する。
・二人ともパソコンを持っているのですが、父が操作がわからなくなると母を怒鳴りつけ、母にメーカーのサポートに電話をかけさせる。更に、またわからなくなったら困るからと通話内容を録音するために自分でICレコーダーを買ってきて、その操作もわからなくなると母を怒鳴りつける。
・物忘れが増えてきたように思います。
・でも、趣味でできた友達が家に遊びに来ると愛想いいです。
・父は18年前に狭心症のステント手術を受け、退院時に両親で栄養指導を受け、全く健康な母も病人食に付き合い続け(父の嫌いな餃子さえも食べられないと泣いていました)、その割に父は4年前からせっかく体重が減ったというのに菓子パンをこっそり買っては押入れに隠して母とけんかになり、病院の栄養士に白砂糖は控えめにするように言われたらしいのですが、コーヒーに隠れて角砂糖たっぷり。母は病院で勧められた人工甘味料を安売りの時に買っているのですが、絶対入れない。
・4年前に実家がケーブルテレビの契約をしたのですが、父は一日中韓国の時代劇を観て、「老後のため」とDVDに録画までしています。膨大な量です。
一度、父が「買い物に行く」とふらっと出かけて2時間ほど帰ってこないことがあり、半狂乱になった母が私の所へ来て「警察頼もうか」寸前になったことがありました。結局は近所の親戚の家に上がり込んでいたのですが。
物忘れを母が気にして、心臓でかかっている病院で神経内科に院内の紹介状を書いてもらい、長谷川式認知症スクリーニングテストを2年前に受けさせたのですが、結果は正常でした。(大きな病院なのに、なぜか精神科がないのです)
母は50年前に嫁に来てから小姑、姑にいじめられ、友達もできず、近所づきあいもほとんどなく、私以外に相談できない状況です。先日の住民健診ではDVに関するチラシとかいうのを貰ってきたそうですが、「私だけが我慢すればいいがや」「市の健康課の保健師さんに相談しても、秘密は本当に守られるのか」と言います。母が言うには、私に言えないけどいろいろなことを父に言われたり、我慢できない態度を取られてきたりしたそうです。
私が相談した県の女性健康相談センターでは「認知症の初期に性格が荒っぽくなる」と言われましたが、一応神経内科の検査ではシロだったわけですし。
このままだと母が参ってしまうか、父が本当に治療を必要とする状態になってしまったのか、心配です。
林: お父様は認知症である可能性が最も高いです。おそらく認知症の初期でしょう。それもかなり典型的です。ここに記されているように、性格が変化し、かつ、物忘れが目立つようになるというのは、認知症の発症の典型的なパターンです。このご年齢ですと、「性格の変化」と「物忘れの増加」のどちらかだけでも認知症の発症が疑われるところ、この【3107】のケースは両方であり、かつ、「性格の変化」はかなり明らかですので、認知症であることはほぼ間違いありません。
長谷川式認知症スクリーニングテストを2年前に受けさせたのですが、結果は正常でした。
それは認知症でないと診断する根拠には全くなりません。長谷川式認知症スクリーニングテストはあくまでも認知症の「スクリーニングテスト」ですから、得点が認知症の領域になくても認知症ということはありますし、逆に得点が認知症の領域であっても認知症でないことはあります。もしこの病院の医師が、長谷川式認知症スクリーニングテスト(正確には「長谷川式簡易知能評価スケール」といいます)の結果だけに基づいて認知症でないと診断したのであれば、その医師は認知症についての知識はゼロというに等しく、神経内科を標榜する資格はないと言うべきでしょう。
一応神経内科の検査ではシロだったわけですし。
以上の説明のとおり、「シロだった」とは言えません。「長谷川式簡易知能評価スケールでは、認知症の領域の得点ではなかった」が正確な表現です。お父様は認知症でしょう。早急にもっと信頼できる病院で診断していただくことをお勧めします。
(2015.12.5.)