【3047】学内に自分を陥れようとしている者がいると言う留学生

Q: 当方は某大学の研究室に所属している学生(20代男性)です。研究室の学生の言動について精神疾患の可能性はないか気にかかり、メールを差し上げました。その方(ここで仮にAさんとします)の言動については、私が直接見たものと、同じ研究室に所属する友人から聞いたものがあります。とりわけ後者については友人からの「又聞き」なので、事実と食い違っている部分もあるかもしれません(まして先生からすれば「又聞きの又聞き」になります)が、できるだけ見聞きしたことを事実通りに記載できるよう努めます。以下、具体的な言動を書きます。「友人」と記載している人物は断りなければすべて同一の人物を指します。またAさんは30代女性で留学生です。

・友人が学校で勉強しているときに一休みしている際、Aさんがやってきて助けてほしいとのこと。話を聞くと、学費を滞納していることが原因で除籍の警告を受けたとのこと。祖国の親に相談する、事務に行って事情を説明しどうにか待ってもらう、バイトで頑張って稼ぐ、などのアドバイスをするがどれもかたくなに拒む。たとえば、事務に行くべきとの忠告に対しては、事務は以前行ったとき態度が悪かったので相談したくない。そもそも学費の滞納による除籍を警告した紙を貼るなんてひどい(もちろん学籍番号のみの記載で本名を書いてあるはずはないが)、という風にまったく聞く耳を持たない。また、学校に自分を追い出そうとたくらんでいる人がいるとのこと(常識的に考えればそんな人はいないし、仮にいたとしても、学費を納入さえすれば誰も彼女を追い出すことなどできない。よってお金を払いたくないということをごまかすために適当なことを言っている可能性もあるが、後述する言動から、本気でそう思っている可能性も否定できない)。最後は友人も、自分に言われても解決できないからもう勘弁してくれ、と言ったそうだが、助けてくれと言い続け、一時間程度拘束された。

・上記の件で教授室にも行ったとのこと。そこでも、同様のことを繰り返し、教授が退室を促すも出て行かず。最終的には教授が、出て行ってくれ!と声を荒げ、半ば追い出すようにして退室させる。

・卒業生と院生で会合を開いた時、Aさんに出席できるか尋ねたところ、バイトがあるから出席できないとのこと。後日、研究室内全員が参加しているLINEに「シフトを盗んだ犯人がこの中にいることは知っている。学生の仲間に対してそんなひどいことをどうしてするんだ」といった趣旨(単純化しています、途中いろいろ、たとえば「私が馬鹿でした」など、書いてありましたが文章の理解がしづらくなるため割愛しました)の25行程度の長文を掲載する。どういうことか後から聞くと、誰かがシフトを盗み、わざと自分が参加できない日に会合を行ったと思ったとのこと。

・特定の卒業生(友人と仲が良いそうです、ちなみにAさんとはほとんど交流はなかったそうです)に電話をかけ、上記のような話を繰り返す。話をやめてくれないので最終的に、いいかげんにしてくれ!と言って電話を切ってもまた電話をかけてくる。違う日に、仕事が終わって着信履歴を見たら一時間に20件ほどかかってきていたこともあったとのこと。また、友人にも同様のことをしている(風呂上りに携帯を見ると10件以上着信があったとのこと)。

・これは私のされたことですが。ある日の深夜11時頃、「着信不可能」から立て続けに着信があり、出てみるとAさんだった。バイトで客に暴力を振るわれそうになったからどうにかしてくれとのこと。そういうことは警察を呼ぶべきというと、警察を呼ぶと大騒ぎになって日本にいられなくなるからいやだと言う。とにかく店長に相談すべきと言うと、店長は女性の気持ちが分からないから話しても意味がないと言う。女性の気持ち云々ではなく社会人なら当然対応するはずだ、と言おうとすると、途中で言葉を遮って興奮した様子で何か言う。何を言っているかはよく分からず。自分に話されても何もできない、と言い電話を切る。自分にはその後電話はしてこない。

・上記の卒業生や教授が困っていたため、友人は時々Aさんの話を聞いていた模様。しかし、これまでの記載のように堂々巡りのため、限界が来て相手にしなくなる。ある日、校舎で話しかけられたため、自分はもう話を聞きたくないと断ったところ、その後ずっと(40分程度)後ろをつけられる。

・一つ上の件の後から、毎回研究室の講義が終わるたびに必ず友人の後をつけるようになる。私は講義後、友人と一緒にいるが、会話をしていると近くの物陰からのぞいており、どこかへ移動するとついてくる。一度こちらへ近づいてきたことがあるが、半笑いを浮かべこちらを凝視しながら、何も言わずに横を通り過ぎた。おそらく友人が一人になるのを見計らっていると推測できるが、私と友人は外まで一緒に帰るため、友人と二人で話す機会はないはずだが、毎回のぞいては追いかけてを繰り返す。

・時々Aさんを見かけるが、半笑いしながら歩いていることが多い。普通に歩いているときも、件の友人の後をつけているときも見かけたが、半笑いだった。

・研究室の飲み会があり(ちなみに飲み会ではそこまでおかしな言動はなかったです。かなり声が大きかったくらいが気になりますがそれくらいなら他でもちょくちょく見かけますよね)、終わった後に外で二次会をしようと、友人と私に言う。数日後試験があるためこれから勉強しなければいけないから無理だ、と言って解散する。その後、友人が駅の地下道を歩いているところ、10分ほど後をつけられ、電話が来たので電話をしていると突然後ろから無言でカバンをつかまれたので怖くなって逃げたとのこと。

・他に友人や教授が受けた相談として、就職活動がうまくいかない。エントリーシートもまったく出していない(出す気がない?)が、助けてほしい。アパートの水道が壊れて下の階から苦情が来た。助けてほしい。管理会社に連絡するしかないがそれも拒否?(このあたりの会話は私が欠席した講義中でなされたらしく、やや曖昧です。講義中なので教授がむりやり流したそうですが)などがあります。

上記が私の知るAさんの言動です(ほかにもいくつかありますが具体的なことが分からないものは省きました)。多くに共通していることは、具体的に解決案がありそうな悩みを、解決できなさそうな人間に持ちかけ、案を提示しても否定し続ける点。そして、学内に自分を陥れようとしている者がいる(単数か複数か、特定の誰かを想定しているのか、特定はしていないがいるはずと考えているのかは不明)と考えているらしい点です(特にこちらが被害妄想ということで何らかの疾患の症状としてよく見られるものに感じます)。

異国の地で、おそらくなかなか気の合う友人ができず、不安が多々あることは想像できます。だれしも、不安が大きくなると言動が不安定になることはあるでしょう。しかし、それにしてもAさんの行動は精神状態になにか問題を抱えているのではないかと考えてしまいます。Aさんは精神に疾患を抱えている可能性は高いと言えるでしょうか。あるとすれば何という病名もしく
は障害にあたるでしょうか。

私が本メールを送った動機はAさんを援助したいからではありません。仮に何らかの精神疾患の可能性が高く受診した方が良い、との診断が得られても、本人に伝える機会はないと思います(さらに言うなら、伝えてもおそらく行かないのではないかと推測します。もしも機会があれば、一応は伝えるかもしれませんが)。ただ、友人や教授が迷惑を被っていることが忍びないので、仮に何らかの疾患の可能性があるとのお返事がいただけたら、「Aさんは○○という病気の可能性がある。」と伝え、その病気の人への接し方等を各々が勉強すれば、ある程度の対策や心構えができるのではないか、と考えメールをさせていただきました。場合によっては、本サイトの該当ページ(及び本サイトの趣旨を書かれたページ)を二人には見せる可能性もあります。妙な噂が立たないようにその他の人物には見せないつもりです。
駄文、長文失礼しました。

 

林: 質問者が慎重な姿勢で断り書きされているように、このメール内容の多くは「又聞き」であること、また、対象者は留学生であり、日本語によるコミュニケーションに問題があるかもしれないこと(これについては記載がないので推定にすぎません。日本語に全く問題がない方なのかもしれません。しかし一応は問題があるかもしれないという前提で話を進めます)、これらを考慮して慎重な判断をしたとしても、この留学生は、高い確率で統合失調症であると思われます。

そう判断する根拠の一つは、被害妄想が活発であることです。
このとき、日本語によるコミュニケーションの問題のため、どうしても他人に猜疑心が生まれやすくなっているという解釈も可能ですが、このメールに書かれている被害妄想は、単なる猜疑心のレベルを超えた病的なものと言えます。

また、

半笑いしながら歩いていることが多い。普通に歩いているときも、件の友人の後をつけているときも見かけたが、半笑いだった。

これは統合失調症にしばしば見られる空笑と解釈できます。

質問者は慎重に、

異国の地で、おそらくなかなか気の合う友人ができず、不安が多々あることは想像できます。だれしも、不安が大きくなると言動が不安定になることはあるでしょう。

と指摘しておられます。それもまたもっともですし、このメールの内容のひとつひとつだけを取り上げてみれば、異国の地の生活によるストレスで説明できないこともありませんが、全体として見れば、やはりそうしたレベルを超えた病的なものであると言えます。

そして、

毎回研究室の講義が終わるたびに必ず友人の後をつけるようになる。

これは、被害妄想が特定の人物に向けられていることを示唆するもので、ある意味危険な徴候であると言えます。
したがって、

友人や教授が迷惑を被っていることが忍びないので、仮に何らかの疾患の可能性があるとのお返事がいただけたら、「Aさんは○○という病気の可能性がある。」と伝え、その病気の人への接し方等を各々が勉強すれば、ある程度の対策や心構えができるのではないか、と考えメールをさせていただきました。

「ある程度の対策や心構えができる」だけで十分かどうかは何とも言えません。留学生ご本人のためにも、このご友人のためにも、また研究室全体のためにも、この留学生には精神科で治療を受けていただいたほうがいいと思います。

(2015.9.5.)

05. 9月 2015 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症