【3367】統合失調症と診断された息子の発病経緯について、また 予後の見通しについて

Q: 5ヶ月前からIT系会社にて仕事を順調に始めた息子(25歳)が、2ヶ月前に妄想と異常行動が起こり「統合失調症」と診断されました。あまりにも、突然のことで(一週間あまりで進行したのか?)私自身が大変驚いています。唯、何年間かの息子の経歴から もしかしたら気づかぬうちに発病潜伏していた可能性もあるのかもしれないと思い、病状の正確な経緯を知りたくメール致しました。

0、息子はもともと無口な真面目な大人しい性格の子供で、小学校のとき、「いじめ」になった経験もあります。友達と遊ぶセッテイングをしても、、どこか一人で楽しんでいる風情である印象はぬぐえない子供でした。また、会話している途中で、自分の空想の世界でいるようなこともありました。

1、息子は県下のトップの私立中高一貫進学校に進学していた折、ある留学試験に合格し、高校2年の半ばからイギリスの寄宿制の高校に留学致しました。 2年間のここでの生活は、当初は慣れるのに苦労いたしましたが(日本人は誰でもそうなるそうです)、成績も良好で本人の希望によりロンドン大学に数学専攻で進学致しました。(イギリス・アメリカの第一志望の大学には不合格でした。)この頃は、自分の前途に自信と希望を持っていたように思います。

2、ところが、2年次に留年してしまい、その後は何とか単位を取ってようやく卒業出来たという結果でした。 この頃から、自分に対する自信が感じられなくなったでしょうか・・・この頃の、息子の様子がよくわかりません。 そして、2年前に帰国致しました。

2‘、一度、訪れたロンドンで 下宿させていただいている大家さんの話です。主人は、とてもハードワーカーだと言って下さったのですが、女主人の方は友達が誰も尋ねてこなくて、よくベットで寝ている。と、おっしゃいました。 そのとき、私は勉強スタイルが 集中してその後に良く眠る子供だったので、今もそうなのかと思いました。また、留学したら人と関わらないと生きていけないので、少しは社交に気を使うことを期待していたのですが、本人曰く『本人がそう思わなければどこにいても一緒だ』と一蹴されました。

3、帰国後、田舎に帰省した折、犬に手をかまれる事件がありました。側にいた祖父から「阿呆」と言われたことをいたく気にしていましたが・・・しばらくして、吐いてもどす体調不良(原因不明・一日のみ)がきっかけで、『パニック障害』を起こすに至りました。幸い、2ヶ月あまりでその症状は無くなりました。

4、就職に関して。 帰国当初より、私にせかされる形で活動していましたが、(本人に勤労意欲はあまり無かったように思います。) 帰国時にはその年度のほとんど実質的な就職活動は終わっていたことと、本人にコミュニケーションに問題があるようでなかなか決まりません。 そこで、帰国した年次での就職はあきらめ、次年度の新卒採用で就職活動をすることとし、しばらくは趣味のプログラミングをすることで過ごしていました。

5、ところが、年明けになっても、新卒採用の就職活動を始めず、夜間に自室に引きこもり、ネットでゲームをしたり将棋をしたりしていまして、ほとんどエントリーシートを書かない様子に業を煮やした私が、無理やりエントリーシートを書かせるようにしました。が、質問内容に答える内容を作成できずに何時間も費やすばかりでした。 このときは、日本の事情に疎いこと。日本語を書く機会が6年間も無かったこと。もともと理系のことが好きで、自分の内面を掘り下げるのは不得手であること等が原因かと思っていたのですが・・・

6、そして、今回の発病です。 それまで、やる気満々で仕事に打ち込んでいたようですが・・・ 月曜から新しい仕事に入り、それに没頭していた木曜ごろから独り言を言うようになり様子がおかしくなったようです。 金曜に唐突に電話が有り、仕事に疲れたので一時帰宅したいと土曜日曜と家に戻ってきました。そのときは、今の仕事の愚痴?ソフトのおかしいことを盛んに言っていましたが、様子に不自然さはなく、騒いで話している様子は凡そいつもより元気なようにも見えました。(普段は、大人しいですから) 何とか宥めてアパートに帰し、月曜に何も連絡が無いので落ち着いたと思った夜中の4時に「寝れない」と電話。それから会社の上司を私が知っているのかと聞きました。(これが、被害妄想の始まりだったかもしれません)  そして、火曜の午後3時頃に泣きながら「もうお母さんに迷惑かけられない」という電話が有ったので、あわててアパートに様子を見に行きました。上司に今日は帰れと言われて帰って、アパートで寝ていましたが・・・その第一声が・・・『会社の人に薬を少しづつ盛られて勃起障害にさせられた』というものでした。 息子を知る限り、このようなことを言う息子は初めてでしたし、聞いた内容は有り得ないことでしたので、強く否定し、何とか落ち着かせて事の経緯を聞きました。(息子は、私の否定に表面上は従いましたが、納得できなったのでしょう・・・主人に「救急車で連れられて、去勢手術を受けさせられた」とメールしていました・・・後で知りましたが) 息子の話では、自分勝手に仕事を進める息子に上司が苦言を呈したこと。やる気が無いと思われて、今日は帰れと言われたとのこと。そこで、今日のところは上司に謝りのメールを出させ、一日休みを貰うように言って連れて帰ろうとしたのですが、疲れて寝てしまったので一晩アパートで過ごしました。ですが、眠りは浅く、眠れないようで何度も目覚めては有り得ない事を口走り、朝型には何度も散歩に出かけました。  次の日、朝から精神クリニック(『パニック障害』を治療していただいた先生)で、、『不安障害』と診断され、一週間分の薬を貰って帰りました。 が、その日の午後3時頃、自宅に上司から私に電話が有り、息子の行状と解雇を告げられました。問題は息子の仕事の進め方では無く、もっと事態は悪いという始まりから話されました。 息子は、木曜頃から変調の兆しが見えたこと。しかし、この仕事では度々見受けられることなので、金曜にいろいろ声かけをしたこと。(これを息子は、報告をせかされたと言っています。)火曜になって、直属の上司(女性)にセクハラの暴言を吐いた。フロアに寝そべる。机の下に潜り込む異常行動があった。そして、最後に二重人格と言われました。  息子から聞いていなかった火曜日の息子の行動でしたし、未だ試用期間中でしたし、たとえ戻ったとしても皆が息子の行動を見ているので、復帰しても上手くいかないだろうと言われて『解雇』に従うしかありませんでした。その後、息子に確信したところ、火曜の朝に勃起障害になり、人生が終わったと思ってしまい自暴自虐の行為に及んだと言いました。  自宅に戻ってよく眠るようになってから、すぐ正気を取り戻し、勃起障害も4日ぐらいで回復した頃から、一週間後にはいつもの息子に戻っていました。  ところが、一週間目に今度の相談をするためにキャリアカンセラーに会ってからまた、勃起障害になり、気分が不安定になったので、医者に連れて行ったところ、『思っていたより根が深い。』と言われ、統合失調症の診断が下り、薬を一ヶ月出されました。  それからは、疲れた疲れたと言い、統合失調症の症状を顕著に見えるようになったようにさえ思えます。
私自身 当初、症状としては軽いほうだと思い、突発的な発病だったので,却って予後良好と思っていたのですが・・・ なかなか、消耗期?に意向しないように思えますし、思考のまとまりは改善されつつあるものの、以前の息子の明晰な頭の使い方には復帰出来ないのかと悲観的に思うようになってきています。 また、もしかしたら陰性症状に気づかず放置していた期間が長いため、予後不良もあるかもしれないと思うようになりました。(それで、このメールを出しています。)  統合失調症をいろいろ知るにつけ、すでに留学中から変調をきたしていたのではないかと思ったりしてしまいます。 留学生活の孤独から、悪しきネット社会の情報によく接していたことや、ゲームにはまって勉強を疎かにしてしまった面があることなど、今回の病気になってから初めて本人が言ったこともあります。 反面、大学のカリキュラムに満足出来ず、自分の好きな分野の書籍を講義以外まで読んでいたとも言います。 本人の言をどこまで、信じていいのかわからない病気ですので、果たして本当のところの息子の姿はどうなのか・・・とても不安になっています。  いわゆる陽性症状は、リスペリドン2ミリグラムとサイレース2ミリグラムを寝る前に飲むことで抑えられています。多少、イライラ落ち着かないようで、よく話します、散歩に行ったり、部屋の中を徘徊するように歩き回りますが、薬は出来るだけ少量使う方針の主治医ですので、仕方ありません。 身体的には元気ですので、日常したいことは、制限されることはありません。  妄想は2,3日で収まったので当初、病職が本人に無く、薬が切れて再び同量の薬を処方されたことに納得がいかず(薬への依存症になると固執する考えでいました)、服用拒否を起こしていました。が、一回でも薬をやめると陽性症状が出るので、今は納得してキチンと薬を飲み続けることは了解致しました。 また、落ち着いているときにどんな病気であるかを話しましたので、治る病気であることと薬を飲む必要性はわかったようです。
今後 どのような展開になるのでしょうか。  本人の性格と能力から、(もともと、だれもが普通に出来る事務能力等を苦手としていました)出来ることが限られるのですが、(実際にはプログラミングが好きでよく出来る)この仕事が異常をきたした原因でしたので再び仕事にするのは再発の危険が大きいような気がします。  それと、発病のきっかけは、ソフトの解析に夢中になったあまりの変調だったのですが、結果会社を『解雇』され、今はそのショックの方が大きいような気がします。  落ち着いたら、日本の大学なり大学院に入り直して、日本社会に慣れる猶予期間を取れればと思うのですが・・・そこまでの回復が見込めるのはどうか不安で仕方ありません。  取り留めの無い長文になり 申し訳有りません。正直、息子の将来をどうしていいかわからないでいます。

 

林: 詳細にお書きいただきありがとうございました。急激に発症した統合失調症という診断で矛盾はないと思います。発症の急激さからは、脳炎も疑われるところですが、その後の経過からすれば脳炎ということはないでしょう。また、少年時代の様子からは発達障害の雰囲気も見られますが、これだけで発達障害とは診断できません。しかし主治医にこの点も確認する必要はあるでしょう。

今後 どのような展開になるのでしょうか。

将来をご心配なさるお気持ちは理解できますが、まだ今の時点では予測は困難です。ただ、かなり少量の抗精神病薬で効果が出ていること、親である質問者が統合失調症という病気について正確な知識をお持ちになり、病状改善について真剣かつ現実的に考えておられることは、将来の良い 経過を暗示するものだと言えます。ご家族のサポートは、統合失調症の経過を良くする大きな要因の一つです。主治医の先生とよく相談しつつ、慎重にサポートを続けていかれることが第一だと思います。なお、確実に言えることは、薬を安易に減らしたりやめたりすればまず間違いなく悪化するということです。慎重に治療を受け続けてください。

(2017.2.5.)

05. 2月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症