【3177】脳が薄い膜に覆われているような感じ

Q: 高校生の女子です。
悩みの内容ですが、私は、自分が食事をしたり、怪我をしたりしても、それを自分の事だという認識が出来ないのです。

例えば、自分が転んで膝に擦り傷が出来たとします。
擦りむいて、血が流れて、痛みを感じます。
でも、それが自分の体に起きている事だという感覚(といいましょうか…)
が感じられないのです。
怪我をした他人の精神に入り込んで、ただ痛覚だけを共有しているかのような、そんな感覚しかないのです。

物を食べて、これは「甘くておいしい」とか、「味が薄くて不味い」と感じるのに、やはり、自分が味わっているように思えないのです。

上記には、二つの状況を書きましたが、これは常に感じている事です。

まるで、誰かの体・脳に寄生でもしているような、脳が薄い膜に覆われているような、高熱に魘されて意識が朦朧としているような……。

中学2年生〜3年中期までの間、持病のせいで周りから虐め(といっても、からかい程度でしたが)を受け、不登校になり、心療内科をあたったのです
が、そこでは、軽い鬱状態との診断を受けました。厳密に言えば、躁と鬱を繰り返している状態だったそうですが。
その際に処方して頂いた安定剤を飲んでいたため、何か後遺症的なものとして残ったのでしょうか?(軽めのお薬だと言われていたので無いとは思いますが)
それとも、長い間休んでいたため、脳の機能が低下(?)してしまったのでしょうか?

自分の事だと感じないせいで、物事を覚えておくことが苦手になり、ノートに書いた覚えのないページが多々あったり、最近では、中学の友人の名前さえ忘れかけていたりと、困っています。

この症状は、何かの病気だったりするのでしょうか?

受けていた心療内科がかなり予約が入っているようで、自分の予定と合わせるにしても、数ヶ月は行けそうにないので、メールを送らせて頂きました。 どうか、回答のほどよろしくお願いいたします。

 

林:

私は、自分が食事をしたり、怪我をしたりしても、それを自分の事だという認識が出来ないのです。

この一文から始まる体験の記載は、離人と呼ばれる症状です。それもかなり典型的な離人です。

離人は、統合失調症(特に初期)、解離性障害うつ病など、様々な疾患の症状として現れます。また、離人だけが唯一の症状の場合もあり、これは離人症と呼ばれています。
したがって、離人という症状があるだけでは、病名が何であるかは推定できません。

しかしこの【3177】では、

自分の事だと感じないせいで、物事を覚えておくことが苦手になり、ノートに書いた覚えのないページが多々あったり、最近では、中学の友人の名前さえ忘れかけていたりと、困っています。

という症状があり、これは解離に間違いないことから、【3177】の離人は解離の一症状と判断することができます。

そこで経過を振り返ってみますと、

中学2年生〜3年中期までの間、持病のせいで周りから虐め(といっても、からかい程度でしたが)を受け、不登校になり、心療内科をあたったのです
が、そこでは、軽い鬱状態との診断を受けました。厳密に言えば、躁と鬱を繰り返している状態だったそうですが。

このときすでに解離性障害だったかもしれませんし、このときの虐めの体験が、解離性障害を引き起こしたのかもしれません。

安定剤を飲んでいたため、何か後遺症的なものとして残ったのでしょうか?

それはあり得ません。

長い間休んでいたため、脳の機能が低下(?)してしまったのでしょうか?

それもあり得ません。

なお、虐めに関しては、

からかい程度でした

と書かれていますが、解離性障害を引き起こすようなトラウマを体験した場合、その内容は記憶から消えていることがしばしばありますので、本人の「からかい程度」という報告をそのまま受け入れることはできませんし、その後不登校になったというからには、少なくとも本人にとってはそう軽いものではなかったと考えられます。
(なお、持病のせいで と書かれていますが、その持病とは何であったかも本来は欠かせない情報です)

この症状は、何かの病気だったりするのでしょうか?

離人という症状です。他の症状や経過とあわせると、この離人は解離の一症状です。病名をつけるとすれば、解離性障害になるでしょう。

(2016.4.5.)

05. 4月 2016 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害 タグ: , |