【3006】10年前からおかしくなってしまった父

Q: 40代後半の父のことについて相談があります。私は長女、20代です。
10年ほど前から父の言動がおかしくなってきました。

自分のものでリビングが散らかっているのに「部屋が汚い。片付けろ」と言ったり、自分が使用して放置したコップを「片付けていないのは誰だ」と言ったりするのは日常茶飯事で、自分の言動を忘れます。更にひどかったのは父方の祖父母(父の父母)の前で「結婚してから一度も朝食をつくってもらったことはない」と発言したことでした。もちろん、そのような事実はなく、母は毎日朝食を作っています。

もともと融通が利かない性格ではありましたが最近では特にひどく、母が「自分が食べ終わったからって人が食事をしている時に、人が食べているところまで食卓を拭かないで」と注意をすると「うちでは食卓を拭いてはいけないんだ」と言い、その後「うちでは食卓を拭いちゃいけないからね」と食事のたびに言うようになりました。その後、「まだ食事をしていると邪魔だし、食べ終わってから拭かないと二度手間でしょ」と理由を説明しても「いや、普通の家は食卓を拭くのが当たり前だろ」「拭いて何が悪い」とコミュニケーションが取れません。

家では『なるべく誰かに食べられないように、冷蔵庫へ入れる個人のお菓子は名前を書いておいたほうがいいかもしれない』という話をした後、皆が名前を書くようになりました。普通なら(と書くのもおかしいかもしれませんが)うっかり食べてしまっても謝罪をして埋め合わせをするものだと思います。
父はこれを『名前の書いてないものであれば食べてもいい』と言うような曲解をし、妹が「自分のもの」と宣言したお菓子を直後に食べ「自分のと言わなかった」「名前を書いてなかった」「じぶんはこの『名前を書いてないものは勝手に食べていい』というルールは間違っている。それを示すためにやっている」という主張をしました。妹と私で「そもそもそのようなルールはない」「ルール以前にモラルとか常識的に『誰のかわからないものを食べるのはおかしい』でしょう」と指摘しましたが「誰のものかわからなかった」と指摘を全く無視した返答が返ってきました。その場で「このルール(父の曲解)は廃止」と決め、父が忘れるためにルール廃止の旨を父の声で録音しました。

父は仕事は普通に行っています。職場でうまくいっているのかまでは窺い知れませんが。

どこまで書けばいいのかわかりませんが聞きたいことは父はどうしてこのようになってしまったのかということです。

林: 40代後半のお父様が10年前から変わってしまったということは、30代後半の頃からということですね? するとこれはよくわかりません。

もともと融通が利かない性格ではありましたが最近では特にひどく、

とのこと、何か心理的な原因があって、徐々に変わってきたということかもしれません。

これがもし、40代からの変化であれば、脳の何らかの器質的変化をまず考えるところです。たとえば若年性のアルツハイマー病です。その場合には、CTやMRIなどの検査が診断上重要になります。認知症の初期症状として、それまでの性格が極端になるのは比較的よくあることです。

逆に20代くらいであれば、統合失調症の発症を考えるところです。その場合には、他の症状の有無が診断上重要になります。

しかし30代からということになると、どちらもあてはまりにくく(絶対にあてはまらないということではありません。率としては低いですが、可能性としてはあり得ます)、冒頭の通り、「わかりません」と言わざるを得ません。

さらに考えるとすれば、何らかの体の病気に伴う精神症状です。膠原病などでは、当初は精神症状だけが目立つ場合があります。けれども10年経過して精神症状以外は見られていないとすれば、体の病気に伴う精神症状という可能性は低いです。(これも、率としては低いですが、可能性としてはあります)

父は仕事は普通に行っています。職場でうまくいっているのかまでは窺い知れませんが。

職場でどのような状態であるか、確認する必要があると思います。
もっとも、ご家族の立場としては、もし職場で問題があって、それでも何とか仕事を続けている場合には、あえてその問題を顕在化させたくないというお気持ちがあるかと思いますが、それでも何らかの形で確認されることをお勧めします。

(2015.7.5.)

05. 7月 2015 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A