【2806】母が統合失調症です。私に何か出来ることはありませんか。

Q: 私は高校一年生女です。中学二年の夏に母が統合失調症を発症しました。最初の頃ただのヒステリックだと思って見過ごしていたことを今でも後悔しています。症状が悪化し、暴れまわるのでほぼ無理やりになりましたが、秋を過ぎた頃に母は病院へ行きました。何度か入院し、今は定期的に通院しています。 母が統合失調症と診断されてから、私は必死でした。最初は病気の自覚がないために薬を服用せずにまた暴れて、の入退院を繰り返し。その都度、部活と塾と家事を両立させました。母が暴れて父に軽傷を負わせ、家の周りに救急車やパトカーが止まった日もありました。日曜日の深夜に「外に悪いやつがいる、外に出るな、一階に降りるな、携帯は開くな、殺される」と怒鳴る母が父と妹を二階に監禁し、三階の自室にいた私は急いで電話して近所に住む伯母に助けを求め、早朝に暴れる母を父が押さえている間妹を抱えて家から脱出し、妹を伯母に預けてから何事もなかったかのように登校し、定期テストを受けて帰った日もありました。 母が心の病気を患ったことは、親戚などの身内以外誰にも言いませんでした。気付かせませんでした。部活の顧問も、担任もすごく良い先生で大好きでしたが、言えませんでした。部活仲間も、仲良しの友達にも。顧問に、部活を引退するときに打ち明けたときは心底驚かれました。そんなこと思ってもみなかった、と。気付いてやれなくて済まなかったと言われました。卒業した今でも私は顧問や当時の担任と連絡を交わします。近況を伝えると安心してくれますし、何かあったらいつでも言いなさいと言われます。本当に良い人たちに恵まれたと思っています。 たくさん泣きましたし、何度も何度も癇癪を起こした母から罵詈雑言を浴びせられました。こんな家で生活するくらいなら死にたいと思ったこともあります。暴れる母を見て「ああこの人に殺されるかもしれない」と何度も思いました。母が母であることを、母が病気になったことを恨みました。でも私は家族を壊したくない一心で、朝から晩まで働く父を気遣い、薬を服用し始めて気の強かった頃からは似ても似つかないくらいおっとり笑うようになった母のサポートをし、妹の話の聞き役になって少しでもストレスを溜め込まないように配慮しました。そのすべてが完璧であったとは思いません。でも私はどう考えてもヒステリックという言葉では済まない母の言動を見ていて逃げたから、だから私はするべきことをしなくちゃいけないという思いで頭がいっぱいでした。部活を引退してからは下がっていた成績を上げ、定期テストでは全教科合計100点以上上げました。学校からも塾からも落ちると言われた第一志望の高校に合格しました。そういう「明るいニュース」を家にいれるべきだと思ったからです。両親も妹も笑顔になりますし、笑うことは大事なことだと思ったからです。必死でした。

私が高校に上がると母も安定し、穏やかになりました。父は転職して休日が増え、そういう日は母の家事を手伝っています。妹も遊びたい盛りで、楽しそうに毎日を過ごしてます。 私はもういいんでしょうか。頑張らなくていいのでしょうか。確かに、勉強や部活や、頑張ることはたくさんあります。それは頑張ります。でも私はもう家族のために必死こいて頑張らなくてもいいのでしょうか。自分のために、好きなことのために時間を費やしてもいいのでしょうか。先日顧問に「家族に縛られすぎてる。自分のこともっと大切にしなさい」と言われました。 統合失調症を患った母とその家族に、出来ることはもうないんでしょうか。 誰にこの気持ちを打ち明けていいのか分からず、ずっともやもやし続けています。先生の率直なお言葉で構いません、お願いします。

 

林: 質問者が中学生のときにお母様が統合失調症を発症されたとのこと、質問者のご苦労をお察し申し上げます。
そして今は、

私が高校に上がると母も安定し、穏やかになりました。

とのこと、質問者のご努力の賜物に間違いありません。

そしてこれからのことですが、

私はもういいんでしょうか。頑張らなくていいのでしょうか。

このご質問にイエスとお答えすることは出来ません。これからもお母様を支え続けることは必要です。
しかしだからといって、

好きなことのために時間を費やしてもいいのでしょうか。

このご質問に対する答えがノーになるわけではありません。

お母様のことと、ご自分のこととの、バランスを取れた生活を続けていただくことが大切です。このバランスとは、常に一定のものではありません。時には(病状がとても良い時には)お母様の病気をほとんど忘れてしまうこともあっていいですし、時には(病状がとても悪い時には・・・そういう時は今後、来るかもしれませんし、来ないかもしれません)これまでと同じくらいお母様をサポートすることが必要になるとこともあるでしょう。

先日顧問に「家族に縛られすぎてる。自分のこともっと大切にしなさい」と言われました。

これはおそらくその通りでしょう。ご家族のことだけを常に最優先することは、長続きしません。ご自分のことを大切にすることが、結果的にはご家族を大切にすることにつながります。

(2014.10.5.)

05. 10月 2014 by Hayashi
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