【2658】嘘ばかりの部下は、虚構の世界に生きているのでしょうか

Q: 私は30代女性です。以前、団体職員として勤務していた頃の、部下Aの言動について、今でもあれはなんだったのか、と不思議に感じております。 彼女は私より年齢が上でした。入社時期としては同期であり、同職種での勤務経験があることから、入社当時は新人の教育にともに携わり、問題ない関係性が築けていたと、今でも思います。 ただ、付き合い始めから、不思議な言動をする人だと感じていました。なんというか、「そんなわけないだろう」と誰もが感じる事を、本当のことであるとして話し、なぜか誇らしげなのです。例えば、普通の小学校で6年間1度も給食を食べずにいた(詳細を聞くとハンストしていた、理由はまずいからと。食べてないのに)とか、生まれてから一度も気持ち悪くて、電車のシートに座ったことがない(と言いつつ、後日共に電車で帰宅した際に私と一緒にシートに座っていたのです)等です。周囲の人達も、彼女のそういった嘘をついたとて、なんのメリットもないであろう内容を聞き、なんとなく驚嘆した反応を返さなくてはならない、そんな予定調和でもあるのか「本当すごいねえ」といった、矛盾の指摘や否定しをない反応を返すのです。 他にもA自身が、以前言ったことと、全く反対のことを、それが最初から彼女の反応として振舞うこともありました。例として、ある男性職員が煙草を吸っていたら、大げさに「臭い臭い」と大騒ぎし、彼を責め立てたのに、後日その職員に貰い煙草をして吸っているのです。自分が煙草のことで彼を、不快な思いをさせていたことについては、何一つ釈明せず昔から煙草をすっていたようなことを、声高に話すのです。もちろんその男性職員も不思議そうな、なぜ彼がと思うのですが、そこを言及してはいけないような、変な雰囲気でいるのです。 あとは、職員間の飲み会では、飲み会の最中に「こんな店選んだのだれ~」とか「おいしくなーい」等、幹事や店員の前で言います。この記述だけ見ると、ただの気遣えない人のように思えるのですが、彼女はあらかじめ誰が幹事で、どうしてその店になったのか知っていて、そういう事をいうのです。まるでそういったことを言われた後の、周囲の反応を愉しんでいるような、私としては大変不快な気持ちになる言動がありました。そういったことを、後日注意をすると、彼女なりの論法なのか、嘘を交えたまとまらない話を流暢に話し、こちらが理解できずにいるまま、論点の外れたところで帰結してしまいます。 話の流れを戻すと、私のほうで昇進し、実質彼女の上司となった後、徐々に彼女と私の関係が変わってきました。私の指導に対し思うところもあったと思うのですが、反発が過剰で且つ筋が通ってないのです。例えば、彼女が提案してきたことについて、上司内で検討しOKを出しました。彼女の提案の通りに、事を進めていたら急に激昂し、なんでそんなことをするのだと声をあげます。あなたの提案がこれこれこうだったから、それにそって、今この段階を行っているのだと説明すると、まさしくその通りなので、一旦怒りを納めるのですが、その後私の職場内の些細なミス(水道の蛇口の閉めがゆるかった等)を声高に、他職員にふれまわり「あんなこともできずに、何が上司か」と言いまわります。不思議なのは、それでも彼女は職員内で孤立することなく、一定の者とは表面上かどうかはわかりませんが、仲良くすることができているのです。彼女と仲良くしている職員が、私をともに糾弾するということなく、私との関係も良好に保てているのです。 他にも「友人が死んでしまって、月の明かりを見ていたら朝になり、朝日をみて放心していたら、もう出勤時刻がすぎていた」という理由で遅刻をし、その日は急に大声で泣き出したりするので、早く帰宅させると、さっきまでの緩慢な動作とはうってかわって、すばやく身支度し飲みにいってくる言うのです。なんだか信じられない話なのですが、他の職員は彼女にはなんだか何もいえないという雰囲気が共通してあり、彼女の早退や欠席には何一つ苦情が来ません。(他の者の病欠や、私事の休みには不満が聞こえてくることも少なくないのに) 私への彼女の反応や、反発に私自身、当時はかなり参っていたので、リアルタイムで意識できなかったのですが、他の職員にも私と同様に、いわれのない無視や、過剰な叱責を受けていた職員がいました。その子たちを上司として助けてあげられなかったことは、今でも悔やみきれないのですが、その子達と私の共通点があったことに最近気づきました。 Aの虚言に対し、「へえ、すごいねえ」と驚嘆せずに、矛盾を指摘したことや、彼女の勧めるやり方に意見をしたことがある者は、軒並み私程ではありませんが、妥当でない仕打ちを受けているのです。例をあげきれなかったので、あの時の不思議な雰囲気を、正確にお伝えできないのが、大変もどかしいのですが、私なりに表現すると、彼女は虚構の世界(彼女が演じたい彼女像と言ったほうがいいのでしょうか)で生きていて、その世界を壊す(矛盾を指摘するなど)者を徹底的に排除していたと感じるのです。 先生に質問させていただきたいのは、以下です。
(1) Aの不思議な言動は病気でしょうか。性格的なものとするには、あまりにもエキセントリックに思えます。
(2)私が攻撃された理由としてあげている仮説は「Aの世界に付き合わなかったこと」かと考えています。他の攻撃された職員も共通しています。この仮説は正しいでしょうか。正しかった場合、「Aの世界に付き合えた人」が本当に不思議でなりません。揶揄でなく、なぜあんなに突拍子もない嘘に、微妙な雰囲気を醸しながらであはあったけど、普通の会話のテンポで、付き合う反応を返すことができるのでしょうか。Aのような方には、否定せず受け止めて彼女の世界に付き合った反応を返すということが、一般論で普及しているのに、攻撃されている私たちだけが知らなかったのかと、本気で悩みました。 今はその職場を離れ久しいのですが、当時攻撃されなかった職員達に彼女の言動について、どう思っていたのか質問したところ、私同様に虚構の世界ととらえていたと返答がありました。 長文失礼いたしました。あの不思議な現象を解明できたら救われます。宜しくお願いいたします。

 
林: Aさんには病的な虚言があります。

(1) Aの不思議な言動は病気でしょうか。性格的なものとするには、あまりにもエキセントリックに思えます。

病的な虚言を、性格と考えるか病気と考えるかは、確定した考え方はありません。「性格的なものとするには、あまりにもエキセントリック」という質問者の見解はその通りですが、では性格がエキセントリックすぎる場合、それでもそれは性格の範囲と考えるか、それとも病気の領域に達していると考えるか、という問いが生まれることになります。 美少女L、その他、の虚言 もご参照ください。

(2)私が攻撃された理由としてあげている仮説は「Aの世界に付き合わなかったこと」かと考えています。他の攻撃された職員も共通しています。この仮説は正しいでしょうか。

正しいと思います。

Aの虚言に対し、「へえ、すごいねえ」と驚嘆せずに、矛盾を指摘したことや、彼女の勧めるやり方に意見をしたことがある者は、軒並み私程ではありませんが、妥当でない仕打ちを受けているのです。例をあげきれなかったので、あの時の不思議な雰囲気を、正確にお伝えできないのが、大変もどかしいのですが、私なりに表現すると、彼女は虚構の世界(彼女が演じたい彼女像と言ったほうがいいのでしょうか)で生きていて、その世界を壊す(矛盾を指摘するなど)者を徹底的に排除していたと感じるのです。

おそらくその通りでしょう。Aさんのこれまでの人生で、このようなことが繰り返されてきた結果、彼女の虚構の世界が強化されてしまったと考えられます。

(2014.5.5.)

05. 5月 2014 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 虚言