【2404】母親が壊れていく
Q: 母(50代後半、一人暮らし)が4年前から家(マンション)にひきこもるようになりました。理由は「隣の住人がものを投げてきたり、いやがらせをするから、家から出られなくなった」というものです。「留守番をしてもらわないと外に出られない」というので、仕方がなく、週1くらいで留守番をしに帰りました。私(長女)もイライラすることが多くなり、母が「ボケないように作った」と言って見せてきた服にも全く何の反応も示すことができなくなっていました。そんな生活が3年続き、ここ1年くらいは少し様子が変わりました。給湯器が壊れてしまい、お風呂に入れなくなりました。もともと冷え症、運動不足ですが「寒い、寒い」というようになっていました。「給湯器を買おう、お金も少しは出すし」と言っても「お金もないのにできひん」とかたくなに拒否しました。「どうも上の人が水を垂れ流しているらしい」といって天井をはがし始めました。そして、家をどんどん破壊していきました。壁や天井、畳もすべてはがして、コンクリートむき出しになってしまいました。挙句の果て「一酸化炭素を流されている」とガスも利用しなくなりました。調理はおろか、「もうこの家には住めない」と言い、いったんは別の兄弟の家に身を寄せましたが、何にでもケチをつける性格で、誰かと一緒に住む、というのはとても無理でした。そして、賃貸アパートを借りることになりました。今はそこで暮らしていますが、何の連絡も取れません。ケータイを持つことも拒否しています。一体どうなっているのか、分からないし、どういった生活をしているのか知るのもとても怖いです。 気難しく、妄想もひどい母親を一体どうしたら救えるのか、普通の生活ができるようになるのか…さっぱり分かりません。体調も悪いようなので、「医者に行こう」と誘っても「医者に行ったら薬漬けにされて殺される」と強く拒否します。
林: お母様は統合失調症(または妄想性障害)です。隣人や階上の人に対する被害妄想が強まって引っ越す、しかしそこでもまた被害妄想が出る(被害妄想は病気の症状ですから、引っ越しても解決しないのは当然です)というのが、【1114】、【0884】にも見られように典型的な経過の一つです。
今はそこで暮らしていますが、何の連絡も取れません。ケータイを持つことも拒否しています。
被害妄想が悪化しているのは間違いないでしょう。
一体どうなっているのか、分からないし、どういった生活をしているのか知るのもとても怖いです。
「怖いです」と言っている今も、お母様の症状は悪化し続けています。
気難しく、妄想もひどい母親を一体どうしたら救えるのか、
精神科で治療を受けていただく以外、救う方法はありません。「一体どうしたら救えるのか」という問いは、実はナンセンスです。答えはひとつしかないからです。
「医者に行こう」と誘っても「医者に行ったら薬漬けにされて殺される」と強く拒否します。
その拒否に対して引き下がり、何もしないのであれば、お母様はさらに壊れていくばかりです。
(2013.6.5.)