【2574】理不尽な医療保護入院を避けたい(【2490】のその後)

Q: 【2490】不当に医療保護入院させられないためにはどうしたらいいでしょうかの質問者です。ご多忙のところ、ご回答いただけたこと感謝いたします。
大変恐縮ではございますが、再度の質問をお許しいただければ幸いでございます。前回質問では要点を絞るために省いた部分があり、恐らくその省き方がやや不適切だったと思われますので、追記いたします。

1.今受診をしていない理由とそこに至るまでの詳細な経緯

まず、私が一度任意入院をするに至った経緯をご説明させて頂きます。当時、私は19歳でした。その時に母親と父親が決定的に仲違いしました。細かい理由は不明ですが、特にそのタイミングで母親の病状が悪化したという印象は受けませんでした。個人的には、その時も、それまでも、ずっと母の病状は思わしくなかったと思います。もちろん、私には病状を判断できませんので、これは主観的な意見です。さらに父と母の間に何があったのかをそれほど詳しく知らされていないので、詳細は分かりません。ただ、事実として突如、父が母を入院させると言い出した…ということです。
そして、それからすぐに父は叔母に連絡を取って母を医療保護入院させました。その時、僕は自分に細かい説明もないまま、周囲の状況が大きく変わってしまったことに強い絶望感を覚え、さらに自分が幼少で病気の母親から理不尽な扱いを受けても何一つ抵抗できなかった頃は何もしてくれなかった親戚が、もうすぐ成人というタイミングになって周囲を掻き回したことに不快感を覚えました。当時未成年だった自分に決定権が与えられない、相談が来ないのは、今となっては当然だと納得できます。しかし、その当時未熟だった私には承服できないものでした。結果、私は家族数人に暴力を振るい、家の壁に穴をあけるなど、相当に暴れたのです。
そうして、親戚からは「あの息子も異常だ」という扱いを受け、入院するように強く言われました。そして、親子まとめて入院させたほうが良いという意見でまとまったようです。どうすれば良いのか分からず、自暴自棄になっていた私は、入院して長く時間が過ぎれば色々なことが解決しているかもしれないと安易に考え、病院で叔母に「こう言え」と言われたとおりの症状を訴えました。幻聴、幻視といった症状で、内容まで作り込んだものです。医師のうち1人には詐病を見抜かれていたか、もしくは半信半疑程度に見られていましたが、主治医は「入院したいっていうんならベッドが空いている病院に紹介状を書く」と言われ、結局、受診してから数ヶ月後に入院することになりました。
ですが入院から1週間ほど経って、事情を知っている友人が面会に来ました。そして「自棄になるな。馬鹿なことをしていないで出てこい」と説得され、考えを改めた私は、父親に頼んで退院しました。ちなみに、この友人がここまでしてくれたのは、その友人も家族間トラブルを抱えていた時期があり、互いに良き相談相手だったからです。(友人の家庭が抱えていたのは病気関係ではなく、別種のトラブルです)
そのあと、別の心療内科でこれらの事情を医師に話し、その医師からは「未成年だったことを差し引いても、正直、あなたのやったことはあまりに幼い。医療費だって7割は社会が出しているようなものなのに、詐病で受診するのは言語道断」とお叱りを受けた上で「ただ、あなたの親戚には大きな問題があると思うし、医師の診断を待たずにあなたに圧力をかけて入院ありきの行動を取らせたわけだから、あなた以上に反省するべき」とのお言葉も頂きました。その医師は私に対し、結論として「過去の診断結果を云々ということは判断を差し控えるし、取り消せるものでもないが、少なくとも今、あなたが統合失調症だとは思わない」と診断しています。私が今、受診をしていないのは以上の経緯が理由です。

2.叔母が私に悪感情を持っている理由

これについては私自身にも落ち度があります。退院後しばらくして、親戚の思い通りに物事が進んでいる状況を腹に据えかね、母親を勝手に退院させて、私のアルバイト代でアパートを借り、そこに住まわせました。母はパート・アルバイト程度はできるので、今はそこで自活しています。
ただ、これについては不適切な対応だったことを自覚しています。私自身、母を直接面倒見られるわけではないのに、自分が親戚に対する溜飲を下げるためだけに行動を起こしてしまったわけですから。ただ、当時の私はそこまで頭が回らなかったのです。
こういった勝手な行動が理由で、親戚からは非常に強い怒りを向けられています。そして、叔母は私を生涯にわたって病院に閉じ込めておきたいというのが口癖のようになり、実行可能であれば実行してしまうのではないか…という印象を受けています。

以上の経緯があり、前回のご質問に至りました。
その上で、今一度、ご回答をいただけましたら幸いです。

また、合わせてお伺いしたいことが1点ございます。
医療保護入院が「病識がない要治療患者を治療するための制度」ということであれば、自分から精神科を受診している人間に対して医療保護入院を適用するのは非常に困難、という認識で正しいでしょうか?もちろん、主治医が通院で構わないという判断をしている場合です。
私自身、追い詰められて上述のような行動をとったことがあるため、少なくとも自分自身が精神的に不安定であること、精神年齢が実年齢に比べて著しく幼いことは自覚しています。統合失調症かどうかは医師でもない私には分かりませんが、何らかの問題がある人間であることは自覚しており、通院については真剣に考えています。通院であれば、仕事や趣味を失うことはないので前向きに考えておりますし、事実、過去の行いに対する罪悪感と後悔にさいなまれ、現在の私の精神状態はあまり良いものではありません。

恐れ入りますが、以上、ご回答願えれば幸いです。

林: 詳細な追加情報をいただきありがとうございました。医療保護入院を、さらにはもっと広く、本人の同意によらない入院というものを考えるうえで、大変貴重な情報であることに間違いありません。あらためて感謝申し上げます。
今回の文中のご質問の件については、

医療保護入院が「病識がない要治療患者を治療するための制度」ということであれば、自分から精神科を受診している人間に対して医療保護入院を適用するのは非常に困難、という認識で正しいでしょうか?もちろん、主治医が通院で構わないという判断をしている場合です。

そのような場合に入院するとなれば、任意入院の適応になります。医療保護入院にはなりません。
・・・という回答を書いたあとで、メール全体の趣旨からあらためてこの質問文に目を向けますと、この質問の意図は、「医療保護入院させられないためには、自分から精神科を通院していればいいのでしょうか」ということだと察せられることに気づきました。であれば上記2行の回答は答えになっていないということになるのでしょう。そこで考え直した回答は下記です。

主治医が通院で構わないと判断していれば、入院になることは通常はあり得ません。例外として、本人が希望し、主治医も本人から事情を聞いたうえで、入院がプラスになると判断すれば、入院もあり得ます。その場合は任意入院です。
また、別の例外として、主治医は通院で構わないと判断しており、本人も入院を希望していないが、実は家族等からの情報で、本人が医師に伝えている内容には事実と異なる点がかなりあり、家族等からの情報のほうが信頼でき、その情報にしたがえば入院の適応であるという判断になる場合があります。この場合は医療保護入院でしょう。
さらなる例外があります。それは、通院で構わないという主治医の判断の背景に、「確かに相当な精神症状はあるが、家族等が十分にケアしているので、通院で構わない」という判断があり、そして、経過の中のある時期に「ケアする家族等の負担が過剰になっているので、長い目で見ると、いったん家族等を休ませるために本人を入院させることが望ましい」と判断する場合があります。このようなケースはむしろ認知症でよくあるものです。この場合(病名が何であるにせよ)、入院形態をどうするかは難しいところです。医療保護入院の法律の文言を言葉通りにとれば、医療保護入院で問題ないということになりますが、主たる理由が家族都合であるケースにまで医療保護入院という制度を適用することが倫理的に正しいかとなると、答えはそう簡単ではありません。

【2574】の質問の趣旨から外れてきましたので回答はここまでとします。
なお【2490】不当に医療保護入院させられないためにはどうしたらいいでしょうか の回答は、今回のメールの情報により何ら変更点はありません。

(2014.3.5.)

05. 3月 2014 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A