精神科Q&A
【0635】統合失調症の息子に早く薬をやめさせたい
Q:
私は50代の父親ですが、私の息子(20代)も【0603】擬態統合失調症? の方と全くといっていいほど同じ状態になっています。
ただ、私の息子は最近就職し、社会復帰の第一歩を踏み出しました。
様子も、失業直後の1年前に比べると、顔つきも良くなってきているし、本人も「大分良くなった」といっており、とにかく安心しました。
ただ不可解なのは、良くなったにもかかわらず、未だ薬をやめられないことです。
本人はむろんのこと、妻も、
「医者がそういっているんだ!」
「再発したらどうするんだ!」
といいます。
しかし、私は納得できないのです。
医者に馬鹿正直になっているとしか思えないのです。
病状が良くなったら、薬をやめていくのは当然ですよね。わたしなんか、ずっと腰痛で悩まされていましたが、やがて症状が消え、医者に説得して自分なりに薬をやめた経験があるのです。だから、息子も良くなったら医者を説得するべきだと思うのですが…
また、再発するのはあくまで可能性ですし、万が一再発したら、そのとき薬を再開すればいいだけのことだと思うのです。
息子は、医者の言うとおり、本当にまだ薬が必要なのでしょうか?
アルコール中毒のような、一種の中毒にかかってしまったのでしょうか?
それとも、私の認識が間違っているのでしょうか?
林: あなたの認識は間違っています。
統合失調症(精神分裂病)が再発するもっとも多い原因は、薬の中断です。少々よくなったからといって薬を中断するのは非常に危険なことです。【0578】などに実例があります。
良くなったにもかかわらず、未だ薬をやめられないことです。
このことにあなたはひっかかっているようですが、良くなった、というのは、薬を飲んでいる限りにおいて良くなっているのか、それとももう薬を飲まなくても良くなったのか、息子さんの現状では判断できません。
たとえば高血圧や糖尿病をお考えください。これらの病気では、薬が合っている状態ならほとんど何の問題もありませんが、薬を中断すればすぐに再発し、場合によっては命にもかかわります。
ただし統合失調症(精神分裂病)が高血圧や糖尿病と違うところは、薬なしでも再発しないケースがありうるということです。そうなりますと、
再発するのはあくまで可能性ですし、万が一再発したら、そのとき薬を再開すればいいだけのことだと思うのです。
というあなたの意見ももっともに思えるかもしれません。
しかし、統合失調症(精神分裂病)の再発というものを、あなたは軽く考えておられるのだと思います。今の息子さんは素直に薬を飲んでおられます。統合失調症(精神分裂病)では、病状が安定している時期には病識もあり、ご自分から薬を続けられるケースも多いのですが(たとえば【0300】や【0468】)、逆に病状が悪くなると、まわりがいくら説得しても自分は病気でないと言い張り薬を拒否することが非常に多いものです。そうしますとご家族は【0380】や【0280】や【0178】のように大変な苦労をされることになります。もちろんご本人にとっても非常なマイナスになります。
ですから、
万が一再発したら、そのとき薬を再開すればいいだけ
というほど簡単なことではないのです。
統合失調症(精神分裂病)での薬の減量は、慎重なうえにも慎重に行う必要があるのです。
病状が良くなったら、薬をやめていくのは当然ですよね。わたしなんか、ずっと腰痛で悩まされていましたが、やがて症状が消え、医者に説得して自分なりに薬をやめた経験があるのです。
このように、ご自分の経験から他の人も同じようなものと考えるのは、きわめて浅はかです。病気が違えば薬の飲み方をはじめとする治療法が違うのは当然です。このような思い込みを押し通せば、息子さんにとってもご家族にとっても、大変な不幸につながるでしょう。