精神科Q&A
【0280】治療を促すと激怒する弟
Q: 現在28歳の弟は、元々はどちらかというと大人しく優しい子だったのですが、4年前から様子がおかしくなりました。一時(2年前)は、病院へ通い薬を飲みつづけていたのですが、弟は自分が直ったと思い薬を飲むのを止めてしまいました。(飲んでいたのは、一年間です)。それからしばらく(一年ほどでしょうか)は特に変わったこともないように見えたのですが、半年ほど前から行動、話すことがおかしくなってきました。
母が言うには、うつ病の反対で感情が常に高まっており自分の感情をコントロールできない用になっていると2年前に相談した医師に聞いたそうです。2年前のピークの時は、会社の上司を殴り半殺しにし入院させる事件を起こしていました。薬を飲むようにすすめると激怒し、私に「お前がおかしくなっている、お前が病院に行き薬を飲め!」と激怒します。弟は、私の行動や話すことが気に入らないのか毎日のように激怒しています。ひどい時には、殺意さえ感じられます。強引に病院に連れて行こうかと思いましたが、日ごろ弟は鍛えているので力では全く勝てなく強引にはできません。
弟の主な行動は下のようなものです。
・話し掛けると、完全に無視をする。
・話をしていると感情が高くなり怒り出す。でも自分は冷静だと言う。
・毎日、英語の本や新聞を読み書かれている内容を紙に書き写している。 (日本語の本や新聞などは一切読まない)
・音に対して敏感になり、隣の部屋の電話の話し声に激怒する。
・食べ物は焼き魚、焼いたニンニク、生のニンジン、フライパンで炊いた洗っていないお米しか食べず、しかも箸やスプーンなどを使わず手で食べる。
・外部の人間とまったくコンタクトを取らない。
・自分の考えを否定や人の意見を聞くとそれは間違いと言い、自分の考えや哲学を話し始める 話している途中で興奮し激怒する。又、自分の考えを人に押し付け反論すると激怒する。
2年前は弟が飲んでいる飲み物に薬を2週間かけて混ぜ落ち付き始めた頃に話をして病院へ行かすことができました。現在は、毎日飲む物が変わるので同じ手を使うのは困難です。
家族としてはどうしたらいいのでしょうか。医療関係仕事をしている叔父がいるのですが、叔父は、専門のスタッフがいるのでその人らに強引に連れて行く方法があると言っていますが、それだけは避けたいと思っています。
林: まず弟さんの病名は統合失調症(精神分裂病)だと思います。「主な行動」としてこのメールに書かれた項目のひとつひとつは、本などに出ている統合失調症(精神分裂病)の症状と一致しないように見えるかもしれませんが、元々は性格的に特に問題のない人が20歳代で人が変わったようになり、それが服薬によってかなり良くなり、薬を飲むのを止めたらまた再発した、という経過と、「主な行動」を総合的に見れば、統合失調症(精神分裂病)にまず間違いないといえます。「主な行動」の中で特に統合失調症(精神分裂病)なのは、音に対して敏感なこと(統合失調症(精神分裂病)ではとてもよくある症状です。これ自体が被害妄想であったり、あるいはここから被害妄想に発展することがよくあります)、限度を超えた奇行(弟さんの場合は食生活に出ています)の持続です。さらに人の話を受入れなかったり外部と全くコンタクトを取らないなどの頑なな自閉的態度が加わっていますので、診断はほぼ確実だと思います。
統合失調症(精神分裂病)の多くは薬物治療でかなり良くなります。特に弟さんの場合、一度はよく薬が効いているのですから、効果は十分以上に期待できます。また、暴力的になることもあるようですので、一刻も早く受診(入院)が必要です。治療しなければ悪化して【0153】、【0178】、【0245】、【0293】、【0396】のような状況も予想されます。