【4093】自分が恐喝メールを送ったようなのだが、その記憶がない
Q: 僕は都内の某大学に通う20歳の男です。僕は近日警察へ突き出されるかも知れません。その前にご質問させて頂きます。
話す順番がよく分からないですが、頑張って話してみようと思います。 僕は去年の春に大学進学のため上京しました。その後、5月の中旬にある女性とお付き合いをしました。この付き合いが僕の人生においては初めてと言って良いほど、それまでに経験がありませんでした。当時18歳です。その時の僕の過去のエピソードなどを話すと凄く嬉しそうにしていました。そのせいか、僕はネタが切れてくると新たなネタを作らねばという強迫観念に駆られつつも彼女と付き合い始めでよく遊んだ結果、あまりネタというネタが生み出せずにいました。そんな自分にどんどん焦っていきました。わざわざ親に東京まで来させて頂いて何をしているんだろうという疑問と同時に。 また、その時と同じくして彼女から「ある人に告白された。」と告げられました。全てが初めての僕には、とてもショックで胸が痛かったです。話を聞くと、その人は中学時代から勉学に関して面倒を見てくれている先生だそうです。その方は家庭も子供もいる人です。 不倫まがいのようなことが現実起こり得るのかと不安に駆られつつも、どうして良いか分からず、少しずつその人のことを彼女づたえに聞きながら動きを探る日々。時折、彼女も先生と生徒という関係上から神奈川県の方にある先生の塾まで行っていました。すでに彼女の大学受験も終わり、先生との関係が終わってもおかしくないと思っているのも相まって、よくわからないストレスのようなものを感じました。 後々話を聞くと、その先生からは携帯電話を渡されていたり、金銭の授受があったりと猜疑心を持つようなことばかりを聞かされることになりました。また、彼女が先生に会いに行く時には何故か僕には、はぐらかした様な言い方で「用事。」というようなことを匂わすのみ。
それとは別に、大学へ入ってから自分が予想していた満足な環境がそこにはないことがわかりました。周りは飲み会の誘いばかりで勉強はそっちのけ。 大学は好きな仲間と好きな勉強をし、そこで築いた関係で遊ぶものだと思っていました。満足に勉強が出来ず、確実に自分の能力が落ちていくような感覚に陥ってしまいました。 上記は心に残る断片を書き綴っただけですが、もっといろいろあると思います。
重要なのは、このあとです。 その結果なのかはわかりませんが、今年の初めごろに酷い倦怠感と軽い抑うつのような症状になりました。春になると少しおさまりました。ですが、5月ごろから不審な微熱が続くようになり、何かの病気かと思って内科を受診しました。血液検査の結果は異状がなく、健康体とのこと。ですが、自分のなかで何か合点しません。その後も微熱が続き、体もだるいままでした。 その頃からでしょうか、自分自身に何か違和感があるのです。常に肩には重い何かが載っているような感じがしたり、情緒不安定で過呼吸や発狂をするようになったり・・・ あるカウンセラーの方から言われました。「あなた(僕)は人より感受性が強いから苦しいでしょう」、「月に1度、泣くと体が楽になるよ」と。 確かにそうなのです。泣き叫ぶと体が楽になるのです。 そこまでは、その解決法でなんとか誤魔化しつつ生活ができました。彼女には大変な迷惑を掛けてしまいましたが・・・
その後、先日彼女から「その先生(彼女が告白された先生)へ恐喝のような嫌がらせのメールが来てる」と言われたのです。聞いた途端に、ただそれはお気の毒に。と思っただけでした。 しかし、彼女の言いたいことは違ったのです。そのメールは僕の関係の人間から送られているとのこと。 真相は以下です。 今日、急に数日間携帯で連絡をとってくれなくなったので理由を聞くために彼女の家の前で待っていました。そうするとその先生と一緒に彼女がやってきて、「このメールはどういうこと?」、「誰がやったの?」と聞いてきました。 しかし、僕の関係の人からの嫌がらせということもあり2人に急に責められたために咄嗟に謝ってしまいました。そして、そこでは話が終わらず処罰すると言われ、訳のわからぬまま学校へ連れて行かれ事情を聞かれました。 学校で見せられたその文面を見て驚きました。そう。それは自分が打った文章に限りなく似ているのです。 自分ではそのメールを打った意識は限りなくありません。見てから初めて「このメールどこかで見たような…」というような印象です。また、そのメールを打ったとされている日は自分の記憶では自宅にはおらず仕事の勤務のために移動していたような気がしています。でも、その文章は僕が打ちそうな文章で、恐らく僕が打ったのでしょう。 その先生は学校での処分では足りず、警察へも通報するというのです。でも、真相を聞かれてもよくわかりません。 学校でそんなことを言うと変な要注意人物かのように思われてしまうと思い、怖くて適当な証言をしてきてしまいました。 今年の春ぐらいから、疲れからか精神的に衰弱しているような気はしていました。また、自分を自分でコントロール出来ていないと感じることも増えてきつつありました。 意識に何か問題でもあるのでしょうか? 不安です。 文章が下手なので伝わりにくいかと思いますが、判断をよろしくお願いいたします。
林: 自分が不適切な内容のメールを送ったようだが送った記憶がない。この【4093】はこのように要約できます。【0810】友人を非難するメールを送ったようだがその記憶がないと基本的に同じ出来事です。これは現代の解離性健忘の一つの典型的な形です。
また、この【4093】では、この解離性健忘に先行して、
自分自身に何か違和感があるのです。常に肩には重い何かが載っているような感じがしたり、情緒不安定で過呼吸や発狂をするようになったり・・・
という、いわば非特異的ないしは神経症的というべき症状が認められていますが、このような状態を背景に解離が現れるというのは少なからずあることです。
メールの冒頭に書かれている、
僕は近日警察へ突き出されるかも知れません。
それはその通りで、質問者が恐喝めいたメールを送ったことは事実ですから、刑事事件になるだけの十分な理由があります。
但しここで重要な問題は、質問者にどこまで責任を問うことができるかということです。つまり人は、自分に記憶がない間になした行為についてどこまで責任を取らなければならないのかという問題です。当事者である質問者としては、そのような問題を持ち出すのは責任逃れをしようとしているように感じられ、たとえ記憶になくても自分のしたことであれば自分が100%責任を取らなければならないと思われるかもしれませんが、その気持ちはその気持ちとして、責任とは罪の大きさに見合ったものでなければなりません。端的に言えば、「記憶にない行動について、反省しろ」と言われても、当事者本人は当惑するばかりでしょう。
その意味では、
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真相を聞かれてもよくわかりません。 学校でそんなことを言うと変な要注意人物かのように思われてしまうと思い、怖くて適当な証言をしてきてしまいました。
これは非常にまずい行動でした。記憶にないなら記憶にないとはっきり証言しなければなりませんでした。記憶にないことにとても当惑していることをはっきり証言しなければなりませんでした。
犯罪者一般においては、「犯行の記憶がない」というのは、ごくありふれた言い訳です。本当は記憶にあるのに、記憶にないと言い張るのは言い逃れの定番です。その一方で、とても稀にはこの【4093】のようなケースがあるのは事実ですから(ここで「稀」というのは、犯行についての記憶がないと本人が主張する場合に、その中にはとても稀に解離性健忘が含まれているという意味です。犯罪との関係を別にすれば、解離性健忘自体はとても稀な症状というわけではありません)、取り調べの当初から、自分に起きていたことをはっきりと証言しなければなりませんでした。そうすれば、解離性健忘であることが認められる可能性があり(それでも認められない可能性もありますが)、通常とは異なる罰(それが適切な罰であると考えることができます)が課されることが期待できたでしょう。しかし最初の時点で 怖くて適当な証言をしてきてしまいました ということになると、たとえその後になって、当時は怖かったので事実と違うことを言ってしまった、本当は記憶にないのだ、と主張しても、それは犯罪者によくある言い訳とみなされてしまうでしょう。
それはともかくとして、ご質問の本題に戻りますと、
今年の春ぐらいから、疲れからか精神的に衰弱しているような気はしていました。また、自分を自分でコントロール出来ていないと感じることも増えてきつつありました。 意識に何か問題でもあるのでしょうか?
質問者に起きた出来事は解離性健忘です。
精神的に衰弱しているような気
がその背景として存在します。
自分を自分でコントロール出来ていないと感じることも増えてきつつありました
それも解離と密接に関連する症状です。
(2020.8.5.)