【3807】親と子が同じ医師にかかることの是非
Q: 30代男性です。統合失調症で5年ほど治療を続けており、現在は就労継続支援A型事業所で働いています。母親もうつ病を患っており、同じ精神科の同じ医師に、別々の日にかかっています。主治医は私の診察の際には仕事の状況のことなどを聞きますが、母との診察の際には家での私の様子を母に聞いてきて、母親もそれに答えているようです。加えて、「息子さん、落ち着いていましたね」などと診察時の私の様子を母親に話しています。私としては直接私に聞けばいいことも母親に聞くことや、主治医が私に対して言ったことを母親を通して聞くことが面白くないことから、主治医に母親に私のことを聞き出すのをやめてもらうよう頼み、了承してもらいました。しかし主治医は後日母親の診療の際に「息子さんに自分のことを聞くのをやめてもらうように言われました」と言いました。結局その後も、母親に私のことを聞いたり話したりすることはやめていないようです。精神科では主治医が診察の際に患者の親族の知り得たことを話すこと、親族から家での様子などを聞き出すこと、また、親と子が同じ医師にかかることなどは一般的に行われているのでしょうか。
林: 一般的には、親と子が同じ精神科医にかかることは避けるべきであるとされています。ただしこれはあくまで一般論であって、ケースによってはむしろ同じ精神科医にかかったほうがよい場合もあります。また、地域によっては別の精神科医を探すのは非現実的という事情もよくあります。
それでも一般論としては「親と子が同じ精神科医にかかることは避けるべき」という理由の一つは、まさにこの【3807】のケースのような問題が発生することがあるからです。すなわち、
主治医に母親に私のことを聞き出すのをやめてもらうよう頼み、了承してもらいました。
医師がそのように了承したからには、
しかし主治医は後日母親の診療の際に「息子さんに自分のことを聞くのをやめてもらうように言われました」と言いました。
後日、医師が母親にこのように言ったのは信頼関係を失わせる不適切な言動だと言えるでしょう。
ただしここには不可解な点も残ります。医師が後日に母親にそれを言ったことが、なぜ質問者にわかったのでしょうか。この「後日母親の診察の際」に、質問者が同席していたということはあり得ないと思われますので、すると医師がそのように言ったという情報を質問者がどのようにして得たかが不明です。そうなりますと、質問者のこのメールの内容の、どこが確実な事実で、どこが不確実であるかということに疑問が発生することになります。
また、たとえば子が病識のない精神病(たとえば統合失調症で病識がない場合)で、主治医と親が話すことを拒否している場合に、親が自分が受診するという形を取って、子の病状について主治医と相談するというケースも、精神科では時折あることです。
(一般的には時折あるということにすぎません。この【3807】がそれにあたると考える理由はありません)
(2019.4.5.)