【3776】自分の視点がカメラのように切り替わる

Q: 40代女性です。
私が幼少期から当たり前に体験していて、最近それは一般的なことでなかったと解った事について相談させてください。

・人が変わったようになる、とよく言われる。アルコールなどを摂取せずに、口調や雰囲気が瞬時に変わる
私は幼少時に母から日常的に暴力を振るわれていた関係で、とても自己評価が低く周りの顔を伺う人間なのですが、妙に冷静で冷徹な自分が自分の中にいて、共存しているような感覚があります。そちらの自分は、人を恐れず、堂々と振る舞い、他人からまるで人が変わったようだと言われます。

・頭の中で会話する
例えば買い物ひとつする時でも、頭の中で自分と会話しています。言い合いをすることもあります。何かをする時、その声によって制止されることもあります。これも当たり前だと思っていたのですが、自分の声が聞こえるのです。自分の声なので、幻聴とは思っていませんでした。

・視点がパチパチ入れ替わる
私の中に、2つの視点があります。ひとつは、自分の目に写っているもので、ひとつは、違うところから私を見ているものです。それはテレビカメラの1カメと2カメのように、ぱちぱちと切り替わります。
夢の中で第三者の視点になることがよくありますが、あのような感じです。しかし自分で自分を見られるはずはないので、その映像は脳が作り出したものだとわかるのですが、
幼少期から当たり前にそうだったので、人の視界というのはこういうものだと思っていました。
特に緊張を覚える時などは、自分で見たはずのものは全く思い出せません。人と話していて、その人の顔だけがどうしても見えないこともあります。そんな時記憶には部屋のあちこちから私と相手を見ている映像や、話している自分の顔が残っています。

・幼少時の記憶がない
私の記憶は、突然小学一年生の夏休みから始まっています。朝顔を持ち帰っている背中が記憶に残っています(これも、自分の背中です)
それ以前のことは、全く思い出せません。幼稚園で仲が良かったのは誰だったのかなど、今も昔もわかりません。記憶に関していえば、小学校3年生まで、クラスメートに誰がいたのかなど、覚えていません。

特に人が変わったようになる部分のせいなのか、双極性障害II型の診断がついています。
しかし、ある先生に話をすると「いわゆる二重人格の状態。解離のなり損ない」 と言われました。が、自分で調べてみたところ解離とも少し違う気がします(解離性健忘はあるのかもしれません)

ご相談したいのは治療方法です。私は鬱状態にしばしばなるのは間違いがないのですが、その状態の時は、絶えず頭の中で自分と言い合いをしているような感覚で、頭が冴え、休まらず、苦しい時間がずっと続きます。
これは病気なのでしょうか、性格なのでしょうか。
投薬で治ることがあるのでしょうか。

宜しくお願い申し上げます。

 

林: 自分の視点がカメラのように切り替わる という質問タイトルに象徴される質問者の症状は、解離性障害に一致しています。

ある先生に話をすると「いわゆる二重人格の状態。解離のなり損ない」 と言われました。

この先生の説明は、本質的には正しいと思います。「なり損ない」という表現が適切かどうかはともかく、教科書に出ているような典型的な解離ではありませんが、解離であることはまず間違いないです。

が、自分で調べてみたところ解離とも少し違う気がします

典型的な解離ではないので、文献の記載とは「少し違う」のはその通りでしょう。もっとも、解離性障害の中で最も多いタイプは、公式の診断基準では「他に分類されない解離性障害」ですので、「典型的でないほうが典型的」といえるかもしれません。

私の記憶は、突然小学一年生の夏休みから始まっています。

小学校1年生より前の時期に質問者が体験した何らかの出来事が、現在の解離性障害に密接に結びついていると考えられます。ただしその出来事が何であったかを追求することが、良い結果になるとは限りません。

これは病気なのでしょうか、性格なのでしょうか。

解離性障害の「一種」と呼ぶのが最も正確だと思います。

投薬で治ることがあるのでしょうか。

投薬では治りません。解離性障害の専門治療が必要です。

(2019.1.5.)

05. 1月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害