【3532】妻の独語がまったくおさまりません
Q: 統合失調症の妻(30代)についての質問です。私と妻は4年前に結婚し、3歳の女の子と1歳の男の子がいます。妻は、今から10年前に橋本病を発症し、甲状腺の値が正常に戻った後まさに統合失調症の急性症状といえる症状(いきなり泣き出す。服を着たまま風呂に入る。突然笑い出す)などが発生し、チラージン、リスパダールを飲み続けた結果、集中力が続かない、疲れやすい等の軽い症状は残ったものの、寛解し、結婚前にはリスパダールを飲まなくてもまったく普通の生活をできるようになりました。子供が二人生まれましたが、子育てもまったくほかのお母さんと遜色なくこなし、無事生活をしていました。私の仕事も順調に進み来月には海外勤務をすることとなり、家族みなで渡米することにしていました。しかしながら、先般の台風被害のニュースの後すべてがくるいました。私たちの住む地域が台風被害を受けたわけではないのですが、妻は、「自分が○○(台風被害が報道された地域)にいるような気がする、子供をすぐに完全防備して連れ出さなければ」というようになり、ツイッターを一晩中眺めるという状態になったようで、すぐにリスパダールを飲ませたものの、その後極度の急性症状が起こり(泣く、自分たちが殺される、もう終わりだなどと言い意、子供と話すこともできない)ました。その後リスパダールを6mgに増やしたところ極度の急性症状は治まったものの、独語(機械から私に情報が送られてくるといって日常に関係があることを自分の知っている人が言っている形で独り言を続ける)はまったくおさまらない状態が続いています。子供が話しかけても反応するときは反応しますが、反応しないときはなかなか反応しない状態です。その後、エビリファイ12mgを足したことにより、ある程度日常の家事等はすこしずつできるようになってきました。ただ、薬を飲まないと急性症状が現れ、薬を拒絶する場合もあります。なお、子供に対する対応はある程度できるようになってきましたが、まだ子供の世話はほとんどできません。ゆっくりしか動けませんので。このような状況で質問は2つです。
1.私はこれから海外に行かなければならず、家族を残さなければならない状態です。子供は私の実家の両親が見てくれるのですが、子供を引き離すことは妻の病状に影響を与えることは考えられるのでしょうか?
2.独語は急性症状にあたるのでしょうか?またこの症状が取れないということは、薬を増やす必要があるのでしょうか?
3.私は私の海外勤務後(1年半)は妻のみ妻の実家で暮らすように薦めているのですが、妻は今の家で暮らしたいといいます。この場合、妻は一人暮らしになってしまうのですが、それは避けるべきではないでしょうか? 一人で暮らすと病気が悪化することは考えられますか? ちなみに実家ではすべて実家の母が家事をやってしまうので、自分はやることがなく、色々忘れてしまうと主張します。 よろしくお願いいたします。
林:
1.私はこれから海外に行かなければならず、家族を残さなければならない状態です。子供は私の実家の両親が見てくれるのですが、子供を引き離すことは妻の病状に影響を与えることは考えられるのでしょうか?
考えられます。
しかし今の奥様の病状そのものが、強力な治療を要する状態ですので、「子供を引き離すことは妻の病状に影響を与える」か否かをお考えになるより、今の状態を早く治療することをお考えになるべきです。適切な家庭環境の調整はその次の段階です。
2.独語は急性症状にあたるのでしょうか?またこの症状が取れないということは、薬を増やす必要があるのでしょうか?
あります。上記「強力な治療を要する」というのは、薬を増やす必要があるという意味です。入院を検討していいレベルの状態だと思います。
3.私は私の海外勤務後(1年半)は妻のみ妻の実家で暮らすように薦めているのですが、妻は今の家で暮らしたいといいます。この場合、妻は一人暮らしになってしまうのですが、それは避けるべきではないでしょうか? 一人で暮らすと病気が悪化することは考えられますか?
「一人で暮らすと病気が悪化する」かどうかを考えることも重要ですが、それよりむしろ、病気が悪化したときに一人暮らしでは迅速な対応ができないという事実を危惧すべきです。奥様はすでにこれまでに2回、急激な精神病状態になっているわけですから、今の状態がよくなってからも、今後また同様の状態に急激に陥ることは十分に考えられます。一人暮らしは避けるべきです。
なお、
機械から私に情報が送られてくるといって日常に関係があることを自分の知っている人が言っている形で独り言を続ける
これは「させられ独語」と呼ばれるもので(あるいは少なくともそれにかなり近い性質の独語で)、統合失調症にかなり特異的な症状です。(林の奥 の 独語か幻聴か をご参照ください)
但し、奥様の場合、橋本病が精神症状全体に関与している可能性も完全には否定できませんので、甲状腺の検査も定期的に続けることが必要でしょう。
(2017.9.5.)