【3350】強迫性障害の患者が職場で女性を凝視する
Q: 私は50代女性です。。職場にうつ病と強迫性障害で3年間休職後に復職して6ヶ月の30代男性がいます。その人は休職前に、職場の女性を待ち伏せする、付きまとう、職場で見つめる、等の行為で女性から上司に訴えがあったことが2回あり、上司からの注意を受けたことがあります。1,2ヶ月前から、職場内の複数の女性を近くや遠くから長い間じっと見つめていたり、人気のない部屋で待ち伏せたり、目で追ったり、どうでもいいことを女性だけに話しかける、という行為が始まりました。現在その人の行為により不安・不快を訴えているのは女性だけで、凝視されているのも女性だけのようです。今回上司に訴えたところ、「じっと見る」行為は、強迫性障害の確認行為にあたり、たまたま確認したいものが女性になれば、女性を見つめ続ける事になるので、病気の症状である(注意できない)、と言われました。また、うつ病は自殺する場合もあるので管理職として注意深く対処せざるを得ない、とも言われました。その人のこれまでの症状としては、机の鍵を何べんも確認する、自分のロッカーの前でじっと立ち止まっている、などは見た人がいます。昨日、ちょうど現場を目撃した人の話によると、はじめは職場内をうろうろし、その後女性職員がコンピュータに向かっている斜め後ろ(2m程度)に歩いていって立ち、テーブルにもたれるようにして顔をその女性職員に向けてじっと見始めたそうです。(職場は技術系の24時間勤務の職場なので、あちらこちらで人が行き来したり立ち止まっていても目立ちません)目撃した男性が一旦、その男性と女性の間に歩いていって見ている男性の視野をさえぎり、振り向いて「何してるの?」と聞くと、(チェッというように見えたそうです)黙ってすぐ立ち去ったそうです。目撃した男性は、病気の症状にしては、さえぎっても何の戸惑いも見せず、自分に対して感情を露にすることもなかった、と言いました。女性だけをじっと見続ける行為が強迫性障害の症状と言えるのでしょうか?上司が言うように、注意しては症状が重くなるようなものなのでしょうか?休職前の行為も含め、別の性的な要因を含んだ障害の可能性はないのでしょうか?病気を理由に職場を止めてもらうわけには行かない状況ですので、今後も引き続き起こる可能性があり、女性の立場からは症状だと説明されても納得が出来ない状態です。中には数日恐怖で出勤できなくなった人もおります。長い文章になりすみません。なにとぞよろしくお願い申し上げます。
林:
今回上司に訴えたところ、「じっと見る」行為は、強迫性障害の確認行為にあたり、たまたま確認したいものが女性になれば、女性を見つめ続ける事になる
納得し難い説明です。強迫性障害で、「確認したい女性を凝視する」という症状は、ないとは言えませんが、かなり非典型的です。この方の他の言動もあわせれば、むしろ統合失調症の可能性のほうが高そうです。
たまたま確認したいものが女性になれば、女性を見つめ続ける事になるので、病気の症状である(注意できない)、と言われました。
上司として従業員の病気の症状について配慮すべきであることは当然ですが、だからといって注意できないというのは不合理です。
また、うつ病は自殺する場合もあるので管理職として注意深く対処せざるを得ない、とも言われました。
それも当然ですが、他の従業員が迷惑し職場に問題が発生しているのにもかかわらず、注意しないというのは上司としての責務放棄でしょう。
女性だけをじっと見続ける行為が強迫性障害の症状と言えるのでしょうか?
上記の通り、強迫性障害の症状とは考えにくいです。但し「病気の症状」の可能性は高いです。
上司が言うように、注意しては症状が重くなるようなものなのでしょうか?
わかりません。
休職前の行為も含め、別の性的な要因を含んだ障害の可能性はないのでしょうか?
それもあり得ます。
病気を理由に職場を止めてもらうわけには行かない状況ですので、今後も引き続き起こる可能性があり、女性の立場からは症状だと説明されても納得が出来ない状態です。中には数日恐怖で出勤できなくなった人もおります。
納得できないのは当然です。但しここは、(1)病気の症状であるという説明そのものが納得できないのか (2) 病気の症状だから我慢せよという指示が納得できないのか の二つのどちらであるかを明確にする必要があります。この【3350】のように、ある人の言動に周囲が困窮している場合、その現場では「その言動は病気ではない。だから許せない」という結論に到達しがちです。しかしそこには、自分の側を正当化したいという気持ちが内在しています。すなわち、「病気でないから許せない」という姿勢を自分がとることには罪悪感は通常ありませんが、「病気だとわかっているけど、でも許せない」という姿勢をとることには罪悪感が生まれることが否めません。このケース、質問者のメールのトーンも、そして職場の他の方々の空気も、上記、(1)病気の症状であるという説明そのものが納得できない であることが読み取れますが、この男性は、強迫性障害かどうかはともかく、病気である可能性は高く、「凝視する」もその病気の症状である可能性は高いです。したがって質問者をはじめとする方々の気持ちの真実は上記(2) 病気の症状だから我慢せよという指示が納得できない のであると思われます。そういう自らの気持ちを認めたうえで、ではどう考えるか、この男性に対し、また、上司に対し、どのような姿勢をとるかをお決めください。
(2017.1.5.)