【2938】自称多重人格の友人

Q: 私は二十代の女性です。学生時代からの友人(同い年の女性)について質問があります。

彼女との付き合いは数年になりますが、仲良くなってからわりとすぐにおかしな事を言い出しました。(いつもおかしい訳ではなく、九割がた普通の人で、性格は良いです。一般常識もあり、友人も大勢います。)
彼女は霊感があると自称していて、霊を見ただのタチの悪いのを拾って来ただのとたまに言っています。
私は否定も肯定も出来ないので世間話のように聞き流していました。
他にも周りに霊を信じている人は居て、その人達ともその手の話題で盛り上がったりしているようでした。

そこまではいいのですが、暫くして「自分は多重人格だ」と言い出しました。
彼女の言をまとめると大体以下のような感じです。
アルファベットの頭文字は便宜上、私が勝手に付けました。

・他の人格には色々な性格の者が居る。
・他人格には性別が男の者も居る。
・人格の名前は友人本人が付ける事もあるが、他人格自身が「自分は○○だ」と名乗る時もある。
・人格が交代している時の記憶はあったり無かったりする。
・人格交代している時に、友人本人の意識があれば他人格の行動をある程度抑えられる。
(窓から飛び降りる→直前でなんとか踏みとどまる。)
・他人格は、自分が他人格だという事を分かっているし、友人本人としての記憶もある。(これが全ての他人格に当てはまるかは不明)
・戻る時は本人が意志の力で他人格を抑えて交代する時もあり、自然に戻る時もある。
・人格Aは、実は自分に取り憑いている霊であり、悪さをする。
・気が付いたら声に出して笑っている時がある。そんな時は人格Aが出て来ようとしている時だ。
・気が付いたら人格Aに交代してしまっていた時がある。自分でも驚き、恐怖を感じた。
・自分はそんなつもりは無いのに、人格Aが勝手に(友人本人は嫌っている)知り合いに電話して約束を取り付けたりする。
・人格Aは男好きで、誰彼構わず付いて行こうとする。非常に困る。その上自傷しようとしたりする。
・友人(私ではありません)と話し合いをしていて、あまりにも腹が立って冷静でいられないので、冷静な人格Bに交代してもらい、
話し合いをした。(その相手が人格交代に気付いているかは不明)
・あまり長い間他人格に交代していると、その人格が強くなってしまい、なかなか戻れなくなるので人格交代は極力抑えている。

彼女が人格交代した時の私と彼女(の他人格)との会話は大体以下のような感じです。

私「あなた誰?」
他「○○」
私「何か目的があって出て来たの?/(もしくは)またあなた?あの子(友人)はどうしたの?」
他「**********(その時によって内容は違う)」
(中略。会話だけの時もあり、外出する時もある。だんだん私が疲れてきて投げやりになる)
私「いいから戻りなさいよ」
(ここでまた戻る戻らないの会話)
他「・・・」
友「ごめん今戻った」

人格Aは一時期よく出てきていた面倒な人格です。窓から飛び降りようとしたり、やたらとハサミやカッターを持ち出したり、出会い系サイトで知り合った人と会おうとしたりしていました。が、御祓いをしたとかで出てこなくなりました。
敵対的な人格と、友好的な人格がいるようです。
あと、何故か関西弁の人格もいます。友人は関西人ではなく、関西に住んでいた事もありません。
私は友人が本当に多重人格なのか疑問を持っています。というか、そもそも「多重人格」という病気はあるのでしょうか?
友人が多重人格であるという事は私しか知りません。彼女のご両親が知っているのかも分かりません。
私から見た限りでは、多重人格のせいで彼女の生活が無茶苦茶になる、といった事にはなっていないようです。
例えば仕事中にいきなりあらぬ事をわめき出すとか、日常生活で関わりのある人に多重人格がばれるような事態になるとか
そういった事は今のところ起きていないようです。
彼女の様子が変だとかそういった噂やなんかも聞いた事がありません。
人格Aにしても、色々面倒な事をしようとしましたが、結局大事に至る事は一度も無く、大した怪我もしていません。
私と二人きりの時にはよく人格交代していましたが、私に本当に危害を加えたり、私を罵倒したりといった事はありません。
顔つきや喋り方や話す内容や服装が極端に変わるといった事もありません。

このように、私は多重人格や霊がどうのの話はあまり本気にしていないのですが、もしかしたら本当に心の病気なのかもしれないという気持ちも捨て切れません。
というのも、彼女は多重人格である事を理由に勉強や仕事を怠けたりはしませんし、自分に気を使ったり優しくするようにという要求などもしてきた事がありません。その事に関していつも私に対してすまなそうにしています。
霊がどうのの話も、もしかしたら本当に幻覚幻聴があるのでは・・・と思ったりもします。
彼女は過去に色々人間関係などで辛い思いをした事があるらしく、その事も関係あるのかもしれません。
私と彼女の関係は対等で、お互いが譲り合うような良い関係です。(私はそう思っています。)
他人格に変わるタイミングも本当にまちまちで、特に彼女に都合の悪い時に変わるとかでもありません。

そしてこれは最近の話ですが、霊がどうのの時は何も言えませんでしたが、多重人格の話になった時に、彼女に病院を受診した方がいいんじゃないかと勧めました。すると彼女は
「実は以前病院で人格を統合する治療を受けていた。おかげで大分統合されたんだけど、担当の先生が転勤でいなくなって、治療が続けられなくなった。他に良い先生がいないし・・・」と言いました。統合、と言うのは彼女が使った言葉そのままです。
それを聞いて私は何か変だと感じましたが、新しい先生探した方がいいね、とだけ言いました。
先生が転勤で居なくなるならば、後任の医師を紹介してもらえるのではないでしょうか?
それに、人格の統合と言うのは何なのでしょう?今現在何か薬を飲んでいる様子もありませんし、飲んでいたという話も聞いていません。(聞きそびれました。)
霊の話はたまにしかしませんし、そんなに重大でもありません。多重人格の問題は波があって、何も起こらない時期もあります。
そんな事の繰り返しで数年が経ちました。事の程度は大して変わりありません。

長くなってしまいましたが、私が疑問に思っているのは
・彼女は本当に多重人格、もしくは別の心の病気なのか?
・彼女は本当に病院で治療を受けた事があるのか?
・単に彼女の思い込みだったとして、いつかそのうちおさまるのか?
それとも、思い込んでいるうちに本当に心の病気になってしまわないか?

もし宜しければこの事について林先生の意見をお聞かせ頂けたらと思います。宜しくお願い致します。(質問される方へ、はちゃんと読みました。)

 

 

林:

というか、そもそも「多重人格」という病気はあるのでしょうか?

あります。正式には解離性同一性障害といいます。

私は友人が本当に多重人格なのか疑問を持っています。

解離性同一性障害は、演技であるように見えることがしばしばあります。
この【2938】の女性の症状は、解離性同一性障害として矛盾はありません。(本などを読むと、別人格の時の記憶はないことが特徴、と書かれていたりしますが、別人格の時の記憶がある程度あるケースもそれほど稀ではありません)
他方、解離性同一性障害とは、そもそもすべて演技であるとする考え方もあります。

・彼女は本当に多重人格、もしくは別の心の病気なのか?

上記がその答えになります。

・彼女は本当に病院で治療を受けた事があるのか?

そんなことが私にわかるはずがありません。
ただ、彼女のいう「統合」は、解離性同一性障害の精神科的治療では治療目標とされることがあるのは事実です。

・単に彼女の思い込みだったとして、いつかそのうちおさまるのか?
 それとも、思い込んでいるうちに本当に心の病気になってしまわないか?

質問者が「思い込み」「心の病気」という言葉をいかなる意味で使っているのか不明ですので、回答は不可能です。

(2015.4.5.)

05. 4月 2015 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害