【2583】68歳妻の統合失調症、運命と考える方がよろしいでしょうか
Q: 私は72歳、妻68歳です。妻は35歳の時に統合失調症と診断され、今まで2回の入院で、いずれも夫である私が調子悪いので病院へ行くので付いてきてくれと言って連れて行き、本人の理解が得られないままでの入院です。最後の入院は42歳です。2度とも半年ほどの入院で退院しましたがその後の通院は10ヶ月ほどで中断してしまい、仕方なく私が通院し、セレネース液を処方して頂き、お茶などに混入させて内緒で服用させる日が長年続きました。当然のことですが手足の震え、足踏みなどの副作用がありましたが何とか過ごしてきました。60歳のころ、手足の震えを治療する名目で近隣の心療内科に通院するようになりましたが又すぐに中断し、セレネース液の治療が3年ほど続きました。しかし手足の震えを理由に又同じ心療内科に通院するようになり、今回は主治医先生とのコミニケーョンが上手く行き通院する日を楽しみにしている様子が窺えます。手足の震えも収まり、日常生活も普通にこなせます。只、この2年ほど前から妄想が激しくなり、私は3人の姉妹がいますが「その子供は私の子供である。姉が隣の家に入り込んでいる。姉とセックスをしている。姉から大麻を受け取っている。姉にお金を脅し取られている。買い物で外出しても、旅行をしても姉や妹が後をつけていた。」などと四六時中妄想の世界に入り込み、私に兄妹で馬鹿な事をして謝れなどと攻めてきます。年金生活者で夫婦二人だけで24時間顔を合わせていますので逃げようがありません。主治医にはFAXで様子を伝えて入院を希望したりしますが、「入院は経験から言っても良くなるより悪くなる事例が多いので賛成できない。今,大切なことは通院してくれて服薬してくれることを重点にすべき。」とのことです。私及び家内に天が命じた運命と考え残りの人生を過ごす覚悟をした方がよいのでしょうか。尚、現在の処方は、(朝)セレネース0.75×1錠、アーテン錠×1錠 (夕)セレネース0.75×1+1/2錠、ジプレキサ2.5×1+1/2錠 アタラックスP×1カプセル です。
林: 30年以上前から統合失調症で、ここ2年ほど前から妄想が激しくなったとのこと、であれば、ここであらためて治療法を検討し直すというのが普通の考え方です。具体的には薬の処方内容の見直しをすべきです。かつては手足の震えなどの副作用があり、現在はおさまっているとのことですが、セレネースを増量すればまた同様の副作用に苦しまれることになると予想できますので、非定型抗精神病薬への切り替えがまず考えられる手段です。適切な処方変更のため、また症状の評価等のためには、入院が現時点での最善の方法でしょう。
入院は経験から言っても良くなるより悪くなる事例が多いので賛成できない。
この主治医の先生の見解には賛同しかねます。もっとも、「入院は経験から言っても良くなるより悪くなる事例が多い」というのは表向きの理由で(それにしても不可解な理由ですが)、入院を勧められない真の理由があるのかもしれません(たとえば下記)。が、経過と症状、そして現在の治療内容からすれば、入院が最善という判断は動かないところです。
但し、
今回は主治医先生とのコミニケーョンが上手く行き通院する日を楽しみにしている様子が窺えます。
とのこと、すると、この主治医の先生は、本人の意にそぐわない入院によってせっかくのこれまでの信頼関係が壊れることを危惧し、時間がかかっても外来で薬物を調整することによって改善を目指しているのかもしれません。
私及び家内に天が命じた運命と考え残りの人生を過ごす覚悟をした方がよいのでしょうか。
統合失調症に罹患したのは運命という考え方もできますが、最善の治療によって本人の最大の幸福を追求することが、その運命の範囲内で人間のすべきことであると思います。
(2014.3.5.)