【2776】82歳の母が、盗まれたと言い張る
Q: 82歳の母がおります。
家族は母と主人と小学生の娘と4人で暮らしております。
6年前に母のお金が盗まれ、大騒ぎになりました。
警察によると、外部からの侵入はなかったため、母は私の夫を疑いまし
た。被害額は最初数万と言っていましたが、警察が捜査するうちに何倍に
も膨れ上がり、警察には「お母さん、認知症の検査を受けたことはありま
すか?」と言われました。
それから、何度も認知症の検査を受けに行こうと勧めましたが、本人は嫌
がりました。ただ、かかりつけのクリニックでは簡単なチェックを受けて
いるようで、先日話を聞きに伺ったところ、「軽度な認知症」とのことで
した。
日常生活は、二世帯住宅に暮らしておりますので、私がサポートしなが
ら、洗濯はすべて母が自分の分をやり、食事はご飯は私が炊き、おかずは
足りない分を私が補っています。片付けが苦手なため、部屋は乱雑で、モ
ノがあふれています。整理整頓は若いころから苦手で、全く出来ていませ
ん。用心深く、普段は鍵をかけています。私たちは母の部屋に入ることは
できません。母は私たちの部屋には自由に入ってきます。モノがなくなる
と、私たちの部屋にないか探しています。電車や新幹線で遠くに一人で出
かけていくことも出来ます。年齢的には自立した生活ではないかと思いま
す。
6年前から現在まで、数え切れないほどモノがなくなりました。母は自分の
物忘れでどこかになくしてしまったとは決して思わず、常に家族に疑いの
目が向けられました。
私たちは、母に泥棒扱いされようとも、それは認知症のせいだからと自分
に言い聞かせるようにしてきました。そのために、強く責めることはあま
りありませんでした。しつこいときは言い合いもしましたが、強く言った
ところで、母は自分の物忘れだとは絶対に思いませんでした。
ここ数年、私を見る目が違ってきました。
先日、母の住所録がなくなりました。モノがなくなることは一日に何度か
あります。母は私に直接責めるのではなく、小学生の娘に「お前のお母さ
んが盗んだに違いない。盗む時は必ず、まず隠して、おばあちゃんがあき
らめたころを見計らって、本当に盗みに来るんだ」と言ったそうです。過
去にアクセサリーなどがなくなると、私が疑われることもありました。
「なぜ、実の娘を疑うの!」と母に言いました。すると、母は思いがけな
いことを言ってきました。「お前はアドレス帳を使って、私の友達にかた
っぱしから電話をかけて、私の秘密を暴露している。親戚に電話したら秘
密を知ってたから、あんたが言ったんだとわかったんだ。それに、そのこ
とをあんたが旦那に話してるのも聞いて知っている。その時に、(私の夫
が)『そんなこと言うもんじゃない』と言っていた。(母が)友達に電話
した時に、ちょっとあんたに代わったら、あんたはあのことをペラペラし
ゃべり始めた。私はものすごく辛かった。辛くて言葉も出なかった。それ
に、空き箱に砂を入れて置いておいたり、寝ているときにそっと忍びこん
だり、あんたが全部犯人だってことは分かっている!」と言うのです。
いくらそんなことはしていないと言っても取り合いません。見たんだ。聞
いたんだ。と言い張ります。もちろん、そんなことは一切現実には起こっ
ていないのです。他にも身におぼえたないことを母の妄想の世界で私がい
ろいろとやらかしています。そのため、母の中では私は極悪非道な人間と
なってしまっています。
これは妄想性障害なのでしょうか?それとも認知症が進行した症状なので
しょうか?または全然別の病気でしょうか?
林: 認知症に典型的な妄想である、物盗られ妄想に一致する症状です。したがって、年齢と経過とあわせ、認知症の可能性が最も高いですが、他の病気も否定することはできません。医学的な治療が必要です。精神科かまたは神経内科を受診させてあげてください。このままでは悪化する一方になるでしょう。
(2014.9.5.)