【4682】祖母の妄想癖について

Q: 私は20代女性です。80代の祖母が、「知人に付きまとわれている」という妄想に取り憑かれてしまい困っています。

知人というのは、祖母の夫(=私から見た祖父)と昔親しかった女性のことのようです。
「ずっと玄関を見張っていて、自分がゴミ捨て場と家を往復している隙に家を荒らしていく」だとか、「隣の人の家でこっそり暮らしていて自分の家を監視している」だとか、「留守の間に勝手に洗濯機を回すから遠出できない」だとか、被害妄想としか考えられないようなことをしょっちゅう話しています。

母曰く、祖母には若い頃から妄想癖があり、「その女性に嫌がらせをされている」というようなことを時おりしていたそうです。
80代になってから急激に症状が悪化し、毎日我が家に電話をかけてはその話をしてきます。
話を聞いてあげるのも孝行だとは思いつつ、こちらも辟易してしまっているというのが正直なところです。

母は祖母に対して毎度「それは妄想だよ」とはっきり否定しているのですが、あまり効果はないようです。
「勝手に家に侵入してきていると思うなら玄関に監視カメラを設置すれば?」と提案していましたが、それもやんわり却下されていました。

歳が歳ですし、これらは認知症の症状なのかな?とも思います。

ずっとよくしてくれていた祖母に「病院に行った方がいいよ」とはなかなか言えず、しかし祖母の妄想話に付き合わされてストレスを溜めている母も気の毒で、どうすればよいか分からず悩んでいます。

お伺いしたいのは以下の3点です。

(1) 祖母は統合失調症なのか、認知症なのか、または別の心の病気なのか。
(2) 祖母を早急に医療機関に受診させるべきか。
(3) 祖母の話にはどのように受け答えするべきなのか。
(受け流すべきなのか?いちいち否定するべきなのか?)

ご回答いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 

林:
「知人に付きまとわれている」という妄想

それは統合失調症や妄想性障害に典型的な被害妄想の一つです。

「ずっと玄関を見張っていて、自分がゴミ捨て場と家を往復している隙に家を荒らしていく」だとか、「隣の人の家でこっそり暮らしていて自分の家を監視している」だとか、「留守の間に勝手に洗濯機を回すから遠出できない」だとか、被害妄想としか考えられないようなことをしょっちゅう話しています。

このように、監視・侵入をテーマとするのも、同じように典型的です。

母曰く、祖母には若い頃から妄想癖があり、「その女性に嫌がらせをされている」というようなことを時おりしていたそうです。

その「時おり」と、その「妄想癖」の強さが、後述の通り、診断上は重要です。

母は祖母に対して毎度「それは妄想だよ」とはっきり否定しているのですが、あまり効果はないようです。

妄想を否定しても効果はありません。

ご質問の3項目への回答は次の通りになります:

(1) 祖母は統合失調症なのか、認知症なのか、または別の心の病気なのか。

統合失調症や妄想性障害に典型的な被害妄想です。ただその始まりでいつであるかがこのメールからは不詳です。つまり 祖母には若い頃から妄想癖があり、「その女性に嫌がらせをされている」というようなことを時おりしていた とのことですが、若い頃のその言動は、単なる勘ぐりのレベルなのか、病的なレベルかが問題です。病的なレベルだったのであれば、若い頃に発症した統合失調症か妄想性障害が、高齢になって悪化したという判断になります。他方、若い頃の状態は勘ぐりのレベルで性格的なものであったとすれば、現在の被害妄想は認知症に伴うものである可能性が高まります。ただしそれでも妄想性障害や統合失調症が否定できるとまでは言えません。高齢でそれらが発症することもあるうるからです。

(2) 祖母を早急に医療機関に受診させるべきか。

もちろんです。

(3) 祖母の話にはどのように受け答えするべきなのか。
(受け流すべきなのか?いちいち否定するべきなのか?)

受け流すべきです。

(2023.6.5.)

05. 6月 2023 by Hayashi
カテゴリー: 妄想性障害, 精神科Q&A, 統合失調症, 認知症 タグ: , , |