【2646】引越し後、物が盗られたと騒ぐ母
Q: 先月、母(65歳)が引越をしました。母は一人暮らしです。私が(一人娘:39歳)手伝いに行きました。家に着くと箱詰めなどしていなく、散らかり放題で時間までにと急いで箱詰めしました。その間も「散らかっていていいんや。業者が全てする」と動く気はありませんでした。業者の方が来て何度も「貴重品はご自分で責任を持ってお持ちください」と言われました。引越が終わり、私たちはタクシーで貴重品を持ち引越先に向かいました。荷物を運び終え、ありがとうございますと無事終わりました。母は私にも「疲れたやろう。ありがとう」と言いました。 一週間後「貴重品が無くなった」と母から連絡がありました。正直「またか・・」と思いました。10年前の引越時にも同じことがあったからです。 母は業者に連絡し、次の日担当の方が来たようです。「一緒に探しましょう」と言う方に母は「何度探してもない!」と拒否したようで、「確認をしないとだめでしょう」といっても一切応じようとせず、話がかみ合わないようでした。その際にまた貴重品・印鑑・通帳を盗まれたと母は言いました。次の日、警察に通報したらしく自宅に電話がかかってきました。「お母さん、認知症ですか?無くなったと言ってらっしゃいますが、確認をとらないと被害届も出せませんよと言うのですが話が二転三転して話にならないんですよ。明日、お母さんの家に来て確認していただけるとありがたいのですが」と。次の日、早速母の家に着くとまた業者に電話中でした。ヒステリックに声を荒げて「貴重品600万円以上のものが無くなってるんです!」と。私がすぐ電話を変わり、「これから確認をとって、すぐ連絡します」と言いました。探そうと一つ目のタンスを開けると私たちがタクシーで運んだ貴重品のカバンが・・まさかと思いあけてみると印鑑・通帳・指輪が出てきました。そこで私は激しく憤慨して「いいかげんにして!どこまでいろんな人に迷惑かけるの!」と。母はボーっとした顔で(睡眠薬を飲んでいたよう)廃人の様に「どこにあった?天袋に上げていたものを勝手に下ろされた」と意味不明なことを言いました。私はすぐ家を出てそのまま警察署に行き、「ご迷惑をおかけしました。貴重品見つかりました」と連絡しました。すると「今朝5時にもない!ない!と連絡がありました」と。余計に私は情けなく怒りがこみ上げました。業者にも同じ旨を連絡しました。 すると2.3日後にまた母から電話が。「なぜ全部あったとうそをつく!まだまだ貴重品がない。鍵を取られ、合鍵を作られ昨日の夜寝ている間に家に入られ、またカバンを取られた」と。その日は一歩も外出していなかったと。こういう行動は20年ほど前からあります。普通の時は冷静に話できるのですが、何かをきっかけに過度にしつこく固執した考えで相手を攻めまくります。これは精神病でしょうか。どう付き合えばよいでしょうか。
林: これは、アルツハイマー病にしばしば見られる被害妄想で、物盗られ妄想と呼ばれているものです。 【1224】被害妄想の母を受診させたが、家族の内輪もめが原因と言われたなどもご参照ください。
ただし、物盗られ妄想はアルツハイマー病以外でも見られますので、この症状をもってアルツハイマー病であるとはいえません。この妄想が出てきたのが高齢になってからで、さらに他の認知症症状(記憶障害など)が認められれば、アルツハイマー病の可能性はかなり高いといえます。
この【2646】では
正直「またか・・」と思いました。10年前の引越時にも同じことがあったからです。
とのことですので、遅くとも55歳時には物盗られ妄想が見られたということになります。55歳という年齢はアルツハイマー病の発症としては普通よりかなり若いこと、また、その後の10年間にもし何の症状もなかったとすると、アルツハイマー病という診断には疑問符がつくことになります。
しかしいずれにせよこれは病的な被害妄想ですから、精神科を受診し、診断と治療を受けることが必要です。
(2014.5.5.)