精神科Q&A

【0294】夫が3年間会社に半分程度しか出勤していません。本当にうつ病でしょうか。


Q:  32歳の夫が、私と結婚後きょうに至る3年間、会社を半分程度しか出勤していない状態です。
症状としては、
・夜なかなか寝付けずに朝方になってようやく寝る生活を繰り返し、結局、昼夜逆転の生活が繰り返されるようになる
・起きても倦怠感がありゴロゴロする
・人と会うのが億劫になる
・食事を食べなくなる
・お風呂に入らなくなる
などで、会社に行こうとするとためらってしまい、出勤出来なかったことを後悔し、そこでまた落ち込みその繰り返しで長い病欠になってしまっている状態です。また、一日中寝込んでいる日が何日か過ぎると今度は家中のお金を遣い込むほどパチスロに没頭する日々が続く状態です。
 私一人で何軒もの精神科を回りました。大体どこでも、本人と会って見なければはっきりとはいえないが「うつ病」の可能性が高いと言われてきました。私もうつ病の本を何冊も読みました。 読むば主人の症状に当てはまる部分もあってやっぱりこの人はうつ何だな〜と思っては見るのですが何かが違うと疑問点がありました。
 今主人の通っている心療内科のクリニックの先生ははっきりと「うつ」と言い張ります。
 しかし、抗うつ剤が効いているかどうかわからない状況です。実際3ヶ月くらい休むとまた会社に復帰することを繰り返していくのがここ3年間続いています。
 去年は入院を勧められ大学病院に2ヶ月間入院しました。何故入院を勧められたかというと 「じっと休んでくださいと言っても若いからすぐ無理をして休まないから入院して早く治しましょう」と言うクリニックの先生の薦めでした。入院中はうつになることも全くなく途中で嫌になり退院した次第でした。
 日曜日には野球チームの練習があって、うつで会社を休んでいるときもさっそうと着替えて野球の練習に行けるのです。次の日の月曜日になるとうつが出てきます。
 私ははっきりイライラすることが多いです 病気と言えどもこんなに都合のいい病気なら私もなりたいくらいです。先日、林先生の「擬態うつ病」を読ませて頂いて、本当のうつ病を知り納得できた気がします。だた、主人の場合全く健全と言うわけでもないのです 寝つきが悪くなり出してから生活リズムが崩れていってるからです 私はそこに原因があると思っています ただ、どこの精神科に受診しても「うつ」で片付けられるのがわかっているから病院に行くのが億劫です。簡単に「うつ」と診断する医師たちのお蔭で彼自身が堕落した人間になってしまっている気がしてなりません。

: はっきりしない状態が3年間も続き、イライラされる気持ちをお察し致します。あなたの意見としてお書きになっている通り、ご主人の状態はあまりうつ病らしくありません。少なくとも典型的なうつ病とは違うようです。しかしうつ病ではないと言い切れるかというと、ちょっと難しいところです。
 擬態うつ病をお読みいただいたとのことですので、少しややこしい説明を致しますが、うつ病であっても、ご自分の特に好きなことなら楽しめるという状態も本当はあり得るのです。特に回復期などには、まだ休職中や就労制限中であっても、日曜日に好きな趣味を楽しめるということは十分にあることです。
 これは擬態うつ病の記載とは矛盾すると思われるかもしれません。しかし擬態うつ病は、p.200のあとがきにもお書きしたように、うつ病というものをはっきりとわかって頂くために、思い切って単純化した本です。ですから、あの本の中で、「うつ病らしくない」と書いた症状であっても、うつ病ということはあり得るということはご理解ください。
 メールに記載されたご主人の症状の中で、うつ病らしくない点は、
・一日中寝込んでいる日が何日か過ぎると今度は家中のお金を遣い込むほどパチスロに没頭する日々が続く
・入院中はうつになることも全くなく途中で嫌になり退院した
・日曜日には野球チームの練習があって、うつで会社を休んでいるときもさっそうと着替えて野球の練習に行けるのです。次の日の月曜日になるとうつが出てきます。
の三点です。3年間も治療しているのに抗うつ薬の効果が不十分ということがここに加わります。(もちろん抗うつ薬の効きにくい難治性のうつ病というものもありますが、「入院中はうつになることもない」というのは、難治性のうつ病としては考えにくいことです)
 その一方で、夜なかなか寝付けずに朝方になってようやく寝る生活を繰り返し、結局、昼夜逆転の生活が繰り返されるようになる、起きても倦怠感がありゴロゴロする、人と会うのが億劫になる、食事を食べなくなる、お風呂に入らなくなる、会社に行こうとするとためらってしまい、出勤出来なかったことを後悔し、そこでまた落ち込みその繰り返し
などは、うつ病として矛盾する症状ではありません。(うつ病の不眠は、寝つきが悪いというよりも早朝に目が覚めてしまうというほうが多いですが、寝つきが悪いというケースもあります)
総合的には、私もやはり御主人はうつ病らしくないとは思いますが、そうも言い切れないところです。【0139】【0184】【0200】【0244】のようなケースはメールからだけでもうつ病ではないとかなりはっきり言えるのですが、ご主人の症状とはニュアンスが異なります。
 擬態うつ病を書いた意図のひとつに、ご主人のような症状をあまり簡単にうつ病と判断しないほうがいい、ということはあります。しかし、「簡単にうつ病と判断しない」ことは、「したがってうつ病ではない」ということにストレートにはつながりませんので、この点にはご注意ください。
 なお、ご指摘のように、簡単に「うつ」と診断する医師が存在するのは確かで、そういう医師は本人を堕落させるというのも本当だと思います。しかし、必ずしもあなたのご相談になった医師が皆「簡単に」診断したとは限りませんし、やむを得ず「うつ」と診断しておかざるを得ないこともあること(擬態うつ病61〜69ページ)もご理解ください。


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