精神科Q&A
【0448】軽いうつ病と診断された夫が、会社を休むことも辞めることもできず、動きがとれない
Q: 軽いうつ病と診断された夫(36歳)の事で相談させていただきます。
夫は半年くらい前から1日中「疲れた、だるい」を連発し、食欲不振、寝つけないなどの症状がだんだんと酷くなりつい先日初めて病院へ行きました。
原因は仕事です。この症状が出る前から今の会社に不満があり転職を考えていました。夫なりに新たにやりたい仕事を見つけ転職試験を受けたのですがダメでした。もう2年近く前の事です。その後も色々と探してはいるのですが中々条件に合う会社がなく今に至ります。
最近では「今の会社にいても全く希望が持てない、どんどん悪くなるだけで本当に苦痛だ」と言います。イヤな仕事ならば少しくらい手を抜けばいいのでは?と言うと「それが出来ないから悩んでいる」と言います。「こういう所が自分のバカな所なんだ」と・・・。
おききしたいのは以下の2点です:
(1)(主治医の事)
何週間かでも仕事を休んだら・・・と思うのですが、主治医の先生は「今の企業ではこういう精神的な事で休むと評価が下がるし、休んでも今度出て行く時に苦痛だから・・・」と言います。夫も「たとえ休んだとしても今の会社から変わらない限りこの症状が治ることは無い」と言ってその気は全くないのです。仕事を休むのを勧めない先生はどうなのでしょうか?軽い症状だから敢えてそういう言い方をされたのでしょうか・・
(2)(症状の改善の事 ・夫への対応)
そして「会社を辞めるしかない」と言います。私もそんなに苦痛ならば辞めた方がいいと思うのですが問題は辞めた後です。今の状態では次の職を探すのに良い判断が出来ないと思うのです。でも夫にすれば今の会社にいる限りこの症状は絶対に治らないと言います。
「薬を飲んでこの症状が治まってからにしよう」と言うと「いつの事?先が見えないじゃない・・・」と言われて。2〜3週間で本当に良くなればいいのですが、こればかりは分からないですし・・
それに薬で症状が改善されても結局この会社にいる限り薬ナシの生活は出来ないのでは?と思うのです。薬を服用中でも症状が改善されれば正確な判断が出来るものですか?
うつ病の人に対しては出来るだけ同調した方がいい、と言いますが、この場合どうすればいいのでしょうか・・
私自身も頭では分かっているのですが後ろ向きな事ばかりをずっと言い続ける主人にどう対応したらいいのか・・・つい「ちゃんと道は開けるから大丈夫だよ」などと言ってしまうのですが、そういう言葉もいけないんですよね・・
かといって「じゃあ辞めようか」とも簡単に言えなくて・・
林: まずは何週間か仕事を休んだうえで、今後のことをお考えになるべきだと思います。今の仕事を辞める・辞めないということも、まず休んだうえで判断すべきです。
ご質問への回答は以下の通りです:
(1)主治医が休むことをすすめない理由は私にはわかりません。一般的には、あなたもおっしゃっている通り、症状が軽く、休まないでも回復するという予測があれば、あえて休むことはすすめないということはあります。もうひとつは、診断がうつ病ではなく、休むことがプラスになるとはとうてい思えない場合です(【0356】がそれにあたります。【0406】のような展開が予想されるためです)。
けれども、あなたのご主人様のケースは、どちらにもあてはまらないように思えます。私なら、まず休むことをおすすめします。仕事をお辞めになることも考えられているわけですから、「休んだら今度出て行くとき苦痛になるかもしれない」というようなことは、休まない理由にはならないでしょう。
(2)辞める・辞めないは、上記のとおり、まず休んでみてから考えるべきでしょう。ご本人は、
「たとえ休んだとしても今の会社から変わらない限りこの症状が治ることは無い」
とおっしゃっているとのことですが、もし本当にそうなら(私がここで「もし」というのは、そうではないかもしれない可能性を含んでいます)、休んでみて、それでやはり治らないなら辞めればいい、と単純な理屈としては考えることができます。ですからまずは休むことです。
というふうに私が休むことをおすすめするのは、ご主人がうつ病である可能性が高いと考えているからです。うつ病であれば、休養と薬で大部分が治ります。あなたのご主人が例外と考える理由は何もありません。特にうつ病らしいのは、上に書いたご本人の、
「たとえ休んだとしても今の会社から変わらない限りこの症状が治ることは無い」
という発言です。休むことも助けにならない、辞めるしかないが辞めることもできない、といった、八方塞がりの絶望感は、うつ病の方によく見られるものです。休んで治療して回復すると、まったく違った考え方になるのもよくあることです。うつ病の家族カウンセリングルームに書いたとおり、会社を辞めるといったような重大な決定は保留にして、まずはしっかりと治療をすることが必要です。
具体的に休むためには、やはり主治医の先生から休むことをすすめていただくのが最善でしょう。そのためにはあなたがお一人で主治医の先生に現在の状況と家族として休ませたいことをお話するのがいいでしょう。