精神科Q&A
【0021】先生が病名を教えてくれないのですが
Q: 25歳の女性です。人に対する不安感がとても強くなって、精神科を受診しました。先生は親身になってよくみてくれるのですが、病名を教えてくれません。私は何かとても重い病気なのでしょうか。それとも病名を教えにくい理由が何かあるのでしょうか。
林: 病名をお教えしない理由は大きく分けて二つあります。ひとつは、まだ診断がつかない場合です。もうひとつは、病名をお教えすることで、治療がうまくいかなくなり、かえって病状の悪化につながる場合です。
Q: 診断がついてないってことはないと思います。私はその先生にもう何回もみてもらっていますし、先生に言われた検査は全部受けていますから。それに、薬ももらってます。病名がわからないのに薬が出せるはずないですよね。
林: おっしゃることはもっともですが、何回診察してもなかなか診断がつかないことは実はよくあることです。たとえば気分がとても落ち込んでいるとしても、なにかショックになる出来事が原因なのか、性格的な要素が強いのか、ひとりでにうつになったのか、そういった判断はとても難しいものです。さまざまなうつ状態も参考にしてください。薬については、最終的な診断がついていなくても、症状に応じて処方することはできますし、むしろそういうことはよくあります。
ただし、きまりとしては診断がつかなければ治療は始められないことになっていますから、カルテには仮の病名はついているはずです。
Q: それならその仮の病名を教えてくれたっていいと思いますが・・。
林: そこに「病名を教えることでかえって治療がうまくいかなくなる」という第二の問題が関係するのです。というのは、精神科の病名に対する受け取り方は、人によってとても大きな違いがあるからです。たとえば「うつ病」と診断されたとすると、それを聞いてしっかり治療しようと考える人・病院に来なくても自分で治せると軽く考える人・愕然としてかえって落ち込む人、など、いろいろな人がいます。どの人がどういう反応をするかはなかなかわかりませんので、ある程度でもそれを予想できるくらいまでその人をみてからでないと、なかなか病名は言いにくいものです。
Q: おっしゃることはわかりますが、逆に病名を教えてもらえないことで不安が強くなって、治療がうまくいかなくなることもあるんじゃないですか? 私の場合はかえって不安になってると思うんですが。
林: 確かにそういうこともあります。病名を教えることにも教えないことにも、良い点と悪い点があります。ですから実際にはひとりひとりの患者さんによって対応は変わってきます。あなたの場合がどうなのか、ちょっと私には判断できませんので、あらためて今かかっておられる先生とよく話されるのがいいと思います。
それから念のためつけ加えますと、とても重い病気のために、病名をお教えしないというのは、精神科ではほとんどないことです。もし病名を聞いてとても重い病気だと思った場合は、先入観を捨ててそれが本当に重い病気かどうか、よく聞いたり調べたりするべきでしょう。
なお、病名については、あなたが本物の患者ならもご参照ください。