精神科Q&A
【0021】先生が病名を教えてくれないのですが
もう少し解説します・・
病名を患者さんにどうお伝えするかは難しいことが多いものです。この方のように、病名を聞かないとかえって不安だとおっしゃる方でも、ストレートに病名をお教えすべきかどうかは簡単には決められないところです。病名というのは、他人のこととして聞く場合と、自分のこととして聞く場合では、受ける印象が全然違うものです。ですから、自分の病名を聞いてショックを受けるということも少なからずあるのです。ただし、精神科の病名についての先入観は間違っていることが非常に多いので、ショックを受けた場合には、(逆にたいしたことはないと思った場合にも)、その先生によく説明を聞いたり、ご自分でその病気のことを調べたりなどすることが大切でしょう。
また、病名をどうしても知りたいとおっしゃる方の中には、すでに自己診断で病名を決めていることも多く、そういう方は、医者の口からその同じ病名を聞けば安心するのですが、それ以外の病名だと不満で、病名告知をきっかけに治療が続かなくなることもありがちです。
そういうような色々な問題があるので、病名というものは診断がつけば単にお教えすればいいというような単純なものではありません。精神科での病名告知は、診断や治療と同じかそれ以上に重要な、専門的な技術を要する医療行為のひとつと考えるべきだと私は思います。
とは言うものの、最近ではカルテ開示の法制化が進んでおり、将来はそんなことは言っていられない状況になるかもしれません。病名告知がもし法律で医師に義務づけられた場合、告知したことによって病状が悪化したらどうするのか。患者さんによっては病名を聞いただけで自殺を考える方もいます。そういう場合、法律に定められているからといって何でもかんでも告知していいのか。そんなはずはないわけで、この問題については最近は学会などでもたくさん議論されています。 (2000.12.5.)