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は一般向け、は専門家向けです。


●●アルコール症の正体と治し方 森岡洋著 白揚社 1984年

長年アルコール依存症の治療に携わってきた著者による意欲作です。初版が1984年とやや古いのですが、内容は古びておらず、時代に影響されない事実(正体)の本と考えていいでしょう。図はひとつもなく、味も素っ気もない感じを受けますが、内容で勝負している本と言えます。特に家族について、問題点や解決法が具体的にわかりやすく書かれています。「アルコール症ひとりについて、そのまわりに酒を飲まない数人の病人が出る」と言われています。家族のアルコール問題に困っている方に、特におすすめします。

 

●●ぼくが電話をかけている場所  
レイモンド・カーヴァー著 村上春樹訳 中公文庫 1986年

アルコール依存症だったレイモンド・カーヴァーの短篇集です。表題作の「ぼくが電話をかけている場所」は、アルコール依存症者の療養所(と訳されていますが、原文ではdrying-out facilityで、直訳すればアルコールを抜くための施設、解毒施設といったところです。日本にはこれにあたる施設はなく、事実上は病院がそういう役割を果たしています。まあ療養所という訳は妥当なところでしょう)が舞台で、小説でないと書きにくい本音のようなものも描写されており、医学的にも貴重な作品だと思います。余談ですが、この小説の中に深い井戸に落ちた体験の話も出ています。村上春樹の小説に時々出てくる井戸の話は、もとはここから取ったのではないかと思います。もうひとつ余談ですが、この本の中の「大聖堂」という作品は、視覚障害者の方とのふれあいを描いた話ですが、綺麗ごとを許さないリアリティと、一見その反対のような優しさに満ちており、一番の名作だと私は思っています。なお、中央公論社のカーヴァー全集ではこちらが表題作になっています。

 

●●夜になると鮭は・・・  
レイモンド・カーヴァー著 村上春樹訳 中公文庫 1987年

もう一冊だけ文庫になっているレイモンド・カーヴァーの短篇集が「夜になると鮭は・・・」で、この中では「二十二歳の父の肖像」という作品がアルコールに関係しています。現代はMy father's lifeで、レイモンド・カーヴァーの父親の思い出を書いたものです。彼の父親もアルコール依存症でした。父親のアルコール問題による家族の苦労や、父親がとうとう「神経衰弱」(本当はこういう病名はないので、詳しいことはわかりませんが、アルコールによる脳機能の低下か、またはうつ病だったと思われます)になってしまい、最後は消え入るように亡くなることまでが淡々とつづられています。淡々としているのはおそらく時間がたっているからで、実際にはこの父親にカーヴァー一家は大変な苦労をされられたということが随所に読み取れます。アルコールの問題がある親に苦労させられて育った人が、「自分は親を見てよくわかっているから、絶対にアルコール依存症にはならない」と言うことはよくあるのですが、アルコールという薬物の依存性は侮れないものがあり、そういう人が結局はアルコール依存症になってしまうことは非常によくあります。なりやすい体質が遺伝するということも関係しているのでしょう。
 レイモンド・カーヴァー自身も結局はアルコール依存症になってしまいました。もっとも彼は自助グループに参加するなどして立ち直り、見事な作品をたくさん残したのですが・・。
 ところでこの作品の日本語訳の題名の「二十二歳の父の肖像」は、この小説の最後に引用されているカーヴァーの詩の題名です。この詩はカーヴァーが自分の存在を父親の中に結びつけようとした("The poem was a way of trying to connect up with him")、美しい作品です。

●●「アルコール依存症対策実践ガイドブック」 
ASK 1990年

アルコール問題と戦う市民の会として発足したASKによる良書。アルコール問題に関する基本的データから始まり、悩めるアルコール依存症患者への語りかけ、キーワードの解説など、「実践ガイドブック」の題にふさわしい内容です。医療機関や民間団体の一覧はすぐにも役に立つでしょう。


●●「嗜癖行動と家族」  斎藤学著 有斐閣  1984年
ロングセラーの名著。最近はアルコールをはじめとする依存症や過食症は社会問題として認識され、本もたくさん出ていますが、10年以上前にこの問題の深さ・重大さを見抜いていた著者の鋭さには敬服せざるをえません。題はむずかしそうな本(しへきこうどうとかぞく、と読みます)ですが、内容は実例を紹介しつつわかりやすく書かれています。あえてアラを探すと、アルコールによる脳の障害についての解説だけは的をはずれています。著者は臨床経験豊富のはずですが、おそらく脳にダメージがくるまで飲んだ患者さんはあまりみたことがないのでしょう。

「子どもの飲酒があぶない」
鈴木健二著 東峰書房1995年

長年未成年者のアルコール問題に取り組んできた著者(国立療養所久里浜病院行動科学研究室長)による現代・未来への警鐘。データが豊富で、ドラッグや摂食障害にもふれています。
  

「アルコール性臓器障害と依存症の治療マニュアル」
猪野亜朗著 星和書店 1996年

アルコール問題の治療に携わる人を対象にした本ですが、正確にわかりやすく書かれており、実際にアルコールの問題に悩む本人や家族の方にもとても役に立つ内容です。著者の猪野先生は三重県でアルコール依存症の治療に取り組んでおられる方で、長年のご経験に基づいた主張は説得力と迫力にあふれています。本の構成が、医療現場での患者・妻・医療スタッフの言動から始まっている点も、従来の本には見られない特徴で、いかにも実践家の著者という感じがします。ちょっと読めばすぐに役立ち、じっくり読めば正確な知識が得られる、珍しい本です。
  

●● Higuchi S et al: Alcohol and aldehyde dehydrogenase polymorphisms and the risk for alcoholism. American Journal of Psychiatry 152: 1219-1221, 1996.
アルコール代謝酵素の遺伝子の型によってアルコール依存症になりやすいかどうかが決まることを実証的に示した、20世紀後半のアルコール医学界を代表する論文です。

 


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