精神科Q&A
【0937】友人が境界型人格障害のようです。本人のためにも私は縁を切ったほうがいいのでしょうか。
Q:
私は30歳女性です。
境界型人格障害の疑いのある友人(25歳・女性)の件でご相談に乗って頂きたく今回メールを致しました。
友人(以下Mとします)とは留学中に知り合い7年間の付き合いになります。
当時、私はホームステイをしていましたが、ホストと折り合いが合わずMの紹介によって
Mの住んでいるアパートの管理人の部屋に新しくホームステイをする事にしました。
移り住んでから数日間は何事もなく過ぎていましたが、ある日Mがドラッグをやって錯乱状態で帰宅した頃からMの嘘が発覚しました。
Mは私には、以前からドラッグをしている友人の事で悩んでいて、止めさせたいとまで言っていたのですが、真実は、Mは以前からドラッグをやっていて、管理人が何度も注意をしても止めず錯乱状態で帰宅をしては管理人を困らせているという事でした。
Mはアパートを追われ、私までも管理人からMの友人は信用できないから出て行って欲しいと言われた為、やむなくMと2人でMの友人であるJの所に一時的に移り住みました。
それから私とJで、Mの脱ドラッグおよび悪い交友関係を絶つ事に尽力し、何とかドラッグからは手を引かせました。
その間、Mの精神状態は大変不安定で、リストカットを繰り返したり、私に母親の代理を求めたりする状態(具体的には主にMの身の回りの世話です)が数週間続きました。
私はMから家庭環境があまり良くなかったという話を聞いていたので、大変な状況から脱したばかりでしたし、何より彼女は年齢的にも未だ子供だったので(当時Mは18歳でした)
仕方が無いと寛容に受け止めていましたが、日が経つにつれ段々甘えが悪化してきたのでMにはっきりと私に出来る事と出来ない事を告げました。
しばらくして私たちはアパートを借り、Jの所からは越し、共同生活をするにあたっての役割を決め新生活をスタートさせました。
ところがMはちっとも約束事を守ろうとしないので、堪忍袋の緒が切れてMに強く当たりました。
私は一時帰国が迫っていましたし、Mを置いてそのまま帰国しました。
日本に帰ってきてからは、毎日Mから分厚い手紙が届き、その内容は反省している様子もなくただひたすら私の戻りを待っているという事でした。
アパートに戻ってみるとMは無邪気に喜んでいつものように甘えてきたので、私が怒ると急にMはうつ状態になり、ひどく落ち込み、その状態が数日続きました。
その後、何度か話し合いを続け、Mとは和解し、それからMの症状も治まりました。
この時、私は日本に帰っても、もしこのような状態があったら精神科に行くように勧めました。
Mの症状は落ち着き、半年後私たちは帰国しました。
帰国後、Mとは住んでいる場所が離れている為、年に数回しか会う機会も無く、Mの方からいつも私の家に遊びに来る状態が続いていました。
特にMには変わった様子もなく、来たときは楽しい時を過ごしていました。
ところが今回、7月末にMが来る予定でしたが、Mから病気にかかり、おまけに問題が発生したので来られないという電話がありました。
事情を聞くと、Mが家を出てアパートを借りた為、母親が激怒し、親子の縁を切ると言われたそうです。
現在Mは母親から任されて自営業をしており、経営も安定しています(これは事実です)。
Mはその仕事も放棄したいと言っております。
常日頃、Mは両親の悪態に嘆いており、私は何度もその件で相談にのっていました。
その時点で私はMの話を信用していたので、Mに助言をした所、Mが他人事のような態度に出たため思わずかっとなり私は電話を切りました。
その後、Mの母親と初めて電話で話をした所、Mの嘘が発覚しました。
Mの母親は、Mから聞いた印象とはずいぶん違い、憔悴しきった様子でMの事について詳しく話し始めました。
まず、Mはアパートなど借りておらず、病気にもかかっておらず、親子の縁も切るなどと言われていませんでした。それどころか、Mは消費者金融から何度も借金を繰り返し、会社のお金にも手を出していて、その都度Mの母親が全て尻ぬぐいをしていました。今回、また新たに借金が発覚して、Mの母親がどうしようもなく私に相談をしてきたという経緯です。借金の内訳は常にギャンブルと、交際費です。その交際費ですが、友人全員の旅費をMが持って旅行に行ったり、その際、小遣いまで与え、物も購入してあげるという、異常なまでの貢ぎぶりでした。
私は一度、留学先でMの嘘を目の当たりにしている為、とてもMの母親が嘘を言っているとは思えません。
現在、Mの母親がMと話し合いを続けていますが、Mの態度は沈黙、号泣、開き直りの態度を繰り返している様子です。
数日前、Mから今まで感謝している旨と、これ以上心配を掛けたくないので会社を閉じて遠くへ引っ越すと言った内容のメールが届きました。しかし、その直後、再度Mの母親と電話で話をした所、会社を続けて現状を維持する事に本人が納得したというのです。
私は以前、消費者金融に勤めていた経緯もあり、常日頃、Mに対して消費者金融に万が一手を出すような事があったら縁を切ると冗談交じりに言っていました。
でも、私にとってMは、掛け替えのない友人なので、これで終わりにはしたくありません。
しかしながら、もし彼女が境界型人格障害なら、【0619】で林先生がおっしゃったとおり「いったん設定した限界は変えない」ことを破ってしまいます。
そこでご質問なのですが、彼女の為には私も縁を切った方が良いのでしょうか?
Mは私の悪口を両親には一度も言った事が無いらしく(それどころか、どんな状況下にあっても私の事だけは良く言っていたらしい)Mの母親から私は絶対的な信頼を置かれ、頼られています。
林: 身近な境界型人格障害の方に困らされることは少なからずあります。【0063】、【0702】などがその例です。
仕方が無いと寛容に受け止めていましたが、日が経つにつれ段々甘えが悪化してきたのでMにはっきりと私に出来る事と出来ない事を告げました。
これは適切な対応だったと思います。【0619】にもお書きしたとおりです。
けれども、その後の経過を見ますと、Mさんのあなたへの不誠実な言動は続いていることがわかります。あなたが縁を切りたいと思われるのも理解できるところです。その一方で、
私にとってMは、掛け替えのない友人なので、これで終わりにはしたくありません。
ということであれば、どうされるかはあなた自身がお決めになることです。
ただ、ひとつだけ申し上げておきたいことは、
彼女の為には私も縁を切った方が良いのでしょうか?
縁を切るなどの処置を取る場合、このように「彼女のため」とはよく言われることですが、本当のところは大部分は自分のためだということを認識した上でどうするかお決めになるべきだと思います。