精神科Q&A
【0490】こころの病に病名はつけられないのでしょうか
Q:
24歳、女です。
私は心療内科に通い始めてから1年経ちます。
はじめの頃はうつ病と医師に言われてましたが、このごろは医師の話し振りでは私は境界型人格障害のような感じなんです。
医師はこう仰います
「自分で自分のことを認めて上げられないうちは治りません。」
「周りの人達に愛情をたくさんもらわれなければ、何時まで経っても良くならない。」
色々相談にのっていただいてますが、私は都合が悪くなると病気のせいにしたり、周りが理解してくれてないように感じると自傷行為や過量服薬をしたりします。
そんな自分を客観視してみると、以前に言われたうつ病ではなく境界型人格障害のように自己解釈して医師に
「私は本当にうつ病ですか?」
と、訊いてしまいますが医師の仰ることは上記の通りです。
それに、訊いても
「病名は風邪のようにつけられません」
と仰られました。
今処方されてる薬は
朝晩ルボックス25、ドグマチール50
朝昼晩デパス1、プロチアデン25
朝、寝る前ガスター10
睡眠時ハルシオン0・25×1、ガスター10×1ヒルナミン5×1レンドルミン0・25×2
です。
心の病には病名をつけるのは難しいのでしょうか?
文章は訂正されなくても結構です。回答お願い致します。
林:
「心の病には病名をつけるのは難しい」
というのは確かにそうですが、「難しい」というのは、「だから病名はつけられない」ということではなく、ましてや「だから病名をつけなくてもいい」ということでもありません。
むしろ本当に難しいのは、
病名をどうご本人に、あるいはご家族に伝えるか
ということだと思います。
というのは、病名はたんなる名前ではないからです。
同じ病名でも、人によって受け取り方はさまざまです。たとえば「うつ病」と言われたとき、ある人は「うつ病なら治療を受ければ治る」と希望を持ち、ある人は「重い病気にかかってしまった」と絶望するかもしれません。「人格障害」や「精神分裂病」でも事情は基本的に同じです。
ですから、精神科では、病名の告げ方も治療の一環であるとする考え方もあります。私はこの考え方に異論はありません。病名の告げ方によって、病状が良くなることも悪くなることもあります。たとえばさきほどのうつ病の例のように、病名を告げたことで絶望されたら、もうその時点で治療は失敗でしょう。境界型人格障害といわれて憤慨しておられる【0168】の方のような例もあります。
あなたの病名が何であるかはわかりかねますが、主治医の先生の言葉から推測すると、いまはあなたに病名を伝える時期ではないと判断されているのだと思います。
「病名は風邪のようにはつけられません」という、あなたの主治医の言葉は、病名の告げ方も治療の一環と考えれば、理解できることです。つまり、もっと正確にいえば、「風という病名を告げるように、こころの病の病名を簡単に告げることはできません」という意味であると解釈できると思います。
自分の病名を知りたいという気持ちもわかりますが、あなたの場合、今はそれより症状の改善を第一の目標にするべきだと思います。
なお、あなたの診断について少しだけコメントいたします:
「私は都合が悪くなると病気のせいにしたり」
というのは、確かにうつ病らしくないことですが、具体的な状況がわかりませんので、なんともいえません。
「周りが理解してくれてないように感じると自傷行為や過量服薬をしたりします」
というのは、確かに境界型人格障害の特徴のひとつです。しかしこれだけでは診断がどうであるということまでは言えません。