精神科Q&A

【0303】うつ状態・被害妄想の父


Q:  69歳の父は2ヶ月ほど前からうつ状態になり、今は家にひきこもり、テレビも見ない日が続いています。
 うつ状態になったきっかけは、お酒の席で失言をしてしまったということのようです。人を中傷するようなことを言ったのは事実のようで、一緒に飲んでいた仲間がそれを本人に告げ口したと思い込んでいます。今では町中の噂になっていると思い込み、極端に人に会うのを嫌い、裁判になってここに住めなくなると言っています。
 些細な物音に反応し、私たちから見れば被害妄想と思われるようなことばかり言っています。
 母も心配して2回ほど精神科に連れて行き、診てもらい薬ももらって来ました。眠れないと言いながら、癖になるからと薬を2日くらいで止めているというので昨日電話で説得し、また服用し始めたようです。
 父と母は現在二人暮しですが、母も毎日幾度となく繰り返される父の愚痴に疲れ気味で心配です。この前、私の家に来て一緒に食事をしたりして、少しもち直したように思えましたが、相変わらずのようです。心配なのは叔父に当たる父の弟が二人も、うつ病で自殺という最悪の結果になってしまったのでとても心配です。どうしたらもとの父に戻ってくれるのか、家族は何がしてあげられるのか、教えて下さい。


: 入院治療が必要な状態だと思います。ご家族のすべきことは、主治医の先生によく相談して、入院を実現させることです。それも一日も早くです。
 お父様の診断として第一に考えられるのはうつ病です。
 「うつ状態、引きこもり、町中の噂になっているという思い込み、極端に人に会うのを嫌う、裁判になってここに住めなくなると言っている」などの症状は、統合失調症(精神分裂病)の可能性もありますが、年齢的なことを考えますと、被害妄想を伴ううつ病の可能性のほうが高いでしょう(もちろんだからといって統合失調症(精神分裂病)でないと断言はできませんが)。
 「被害妄想的なことばかり言っている」とのことですが、その具体的な内容も書いていただけるともっと正確な回答ができたと思います(この点については【0292】【0307】などをご参照ください)。
 お父様がうつ病であるとすると、まず必要なのは薬物治療ですが、ご自宅では十分な服薬は期待できないように見えます。説得されてしぶしぶ飲み始めるという形では、早晩飲まなくなるか、飲んでいても不確実と思われますので、薬の効果はなかなか期待できません。
 症状が軽度であればそれでも徐々にやっていく、という方法も考えられますが、お父様の場合ははっきりした被害妄想があり、しかもご兄弟がお二人も自殺という事実もありますので、早くしっかりした治療を始めなければ、自殺という最悪の事態を招くことも考えられます。(うつ病はいわゆる遺伝病ではありませんが、どんな病気にも遺伝の要素はあるということは【0022】で解説した通りです。また、うつ病の方が多発する家系も確かに存在します)
 一日でも早く入院させてあげるべきです。


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