精神科Q&A

【2356】性的虐待の過去と向き合うべきか


Q: 20代女性です。【1901】から【1948】を拝見させていただきました。あまり理解がいいほうではないので分かったつもりだけになっていれば申し訳ないです。 ただ「性的虐待はしてはいけない」と言う言葉。その通りだと思います。どんなに人生に不遇があっても、ストレスがあろうなかろうが人の道は決して外れてはいけないと思います。仮に手をあげてしまったり、言葉で傷つけてしまっても、子が苦しむなら心から謝罪するべきです。私は父からその悔いている姿勢を見ることができれば…と思いますがなにかなったんでしょうか分かりません。脱線して申し訳ないです。 一番に知りたいことは、虐待した当事者以外の家族にも、被虐待者への心のケアを求めていいのかということです。当事者以外の家族とは、私の場合でいえば、私の夫です。私には夫に私の心の負担を背負わせる権利なんてあるのでしょうか。場違いな質問と思いますが、専門の方から何かしらの返答をいただけると今後の方向性が見つけられるような気がします。
まず私の生い立ちから書かせていただきます。始まりの記憶は曖昧ですが3〜6歳頃から13歳の頃だったように思います。父親から挿入なしの性的虐待を受けていました。服の上から勃起した性器を擦り付けられる入浴時、浴槽に「きれいにするためだ」と言われ執拗に性器を洗われる(舐められる行為はなく父親の顔の前に足をひろげている)行為がエスカレートし夜添い寝をするときに舐められ素股をするまでになった 幼なながらに「これは人に言ってはいけないこと」と分かっていました。そして嫌がる素振りを見せながら積極的に自分から布団に入っていました。母が家事をしている夜の8時頃なので、急に母が来るときは何も申し合わせていないのに2人ともバッと隠す(?)というんですかね、そういった行為は隠されていました。私も快感を覚えていましたし、今まで父を責めたことさえありませんでした。 ただ母には申し訳なかったし、どこの家庭もしているんじゃないかと思い小学校のとき何度も友人に聞きそうになりました。 父以外の家族も異常でした。母は親の愛情なく育ったからか、ヒステリーでした。兄(3つ上)は父の暴力に幼い頃から怯えていました。そのせいか分かりませんが人付き合いが不器用で学校ではいじめにもあっていました。父のいない間は母や私に暴言を吐いていました。私は兄に生理的嫌悪をずっと(今も)抱いていました。祖母(父は婿養子なので母方の)は実害はありませんでしたが、実の子の扱いがむちゃくちゃでした。母(姉)には責めてばかりで叔母(妹)を甘やかし、叔父(弟・身体障害)を施設に預けっぱなしで邪魔者扱い(←邪魔者扱いと感じたのは私の主観です)。叔母(甘やかされてる妹)と祖母に責められヒステリーになる母を守らなければとずっと思っていました。母の味方は私しかいないと。しかし同時に父との行為に母への罪悪感を感じていました。 人と明らかに違う。一生分かりあえない。普通の人生に戻れることは決してないと思いながら、人一倍普通の人になりたいと思っていました。心が普通になりたいというより、表面上でいいから人と普通に仲良くなったりしたいと思っていました。 性的に早熟でした。保育園のときに既に自慰をしていましたし、9歳頃には父や兄のエロ本を読んでました。捨てられたものも拾って読んでました。レイプ物やロリコン物や薬でラリッてるものが興奮しました。(エロ本とかロリコンとかすみません。適切な表現がわからないので)。 13歳のころいつものように性的なことをして欲しくて布団にはいりました。エスカレートしていつもと違う体位になったので「入れられる!」と思って布団から出ました。それ以降やめました。挿入とフェラだけでなんとか死守しました。本当は挿入自体には憧れてましたけど、近親者は流石に…となぜか思っていました。 高校のとき県外の専門学校に行くと勇気を出して言いました。とても反対されましたが1年働きながら頭を冷やせと言われ、1年後県外に出ました。今までにない自由を感じました。今までの養育費を返してさらに親から自由になるぞとすぐに風俗をしました。3、4年しました。学校も行っていたし夢もあり暗いものではありませんでした。 今までを通して人と分かりあえないと落ち込むこともありましたが、いい縁に恵まれ人の暖かさや優しさに触れることも多々ありました。貞操観念がぶっ壊れてましたが(誰か分からない人の子を妊娠をして堕ろしたこともあります)人として尊敬できる男性と結婚もできました。 でも夫やその家族と触れあう内に、自分や家族のことが気持ち悪くなりました。仕事も技術職から事務職に変わり、元から物忘れが多いこと人の気持ちに共感したいが共感が難しい等ということが重なり、(数年かけ段階を踏んで)自分はおかしいと思うようになりました。最初は発達障害を疑い、先天的に自分はおかしいと思いました。(ネットを通してだけです)そこにはトラウマがあると似た症状がある、もしくは両方のときは見極めが困難とありました。これは向き合わないとと思う気持ちと、原因を作ってもらって甘えたいんじゃないかと悩みましたが、ネットを見たり友人に話し、とりあえず父に事実確認をしようと思いました。電話しました。ショックなことに事実でした。父は覚えているが忘れたい。最後までしてない。いってない。(精子服に付いたのを私は覚えてます) お前から来た。と言いました。私は虐待について文献を読んだりしたら?教師なんだし。と言いました。父はもう年だし、やることも多い。そんなこと勉強する気になれない。大体飼い犬だって腰をふる。気にすることない。それより手首切ったりしてないか?と言われました。生まれて初めて純粋な怒りがこみあげてブチギレました。お前に言われたくないと。けど冷静になって、家族として付き合っていくが母と兄を責める発言はもうしないで。頑張りを認めてあげて。あとあたしは病院いくから金をくれと言いました。父は、金で解決するんか?と言いましたが10万でいいと言うと、金額に納得したのか振り込みました。 今まで父はストレスがあった。尊敬することもある。あたしが悪かった。家族のために家を出た分孝行しなければと言い聞かせていましたが、もうはっきりと父を異常者として憎むことができました。 すっきりした気分になりましたが、今度は夫とのことを考えると言うべきか迷いました。考えすぎて死のうと思いました。今までだって風俗していたことを受け入れてくれたのに、さらに過去を話して負担をかけるんじゃないか?負担をかけた私を恨むんじゃないか?いや受け入れてもらえなくても1人で強くならなければ。いや、家族友人もうどうでもいいとしたら死ぬことにためらいはないなと。 結局、何があっても側にいる、という夫の言葉で全部話しました。夫は、もう会わなくていい。よく頑張った。何かあったら俺がどうにかするから心配はいらないと。

長くなりましたが、一昨日のことまでです。 【1901】からの回答を拝見して、このまま専門機関を探さず(本とかネットも見ず)自分で答えを探して夫のために生きるか、専門の方と向き合い直すか迷います。回答されていたように治療の期間に自分が不安定になり、それで夫に負担をかけるのがこわいです。1人ならば迷わず治療(?)を選ぶと思います。 リストカットや自殺未遂などありません。強いていう弊害は健忘や、白昼夢、感情がダイレクトに分からない。どれも生活に大きく支障はありません。 ただ自分がわからないときが苦しいです。心に膜がずっと張っています。たまに膜を突き抜けて直接感情を感じれらるような気がするときがあります。だけど夫の愛を心の膜が邪魔をすることがなく感じられるようになりたいです。痛みを感じて苦しくなってもいいです。その分他人が与えてくれる愛を頭じゃなくて心でちゃんと感じたいんです。 ここまで生きてこられたし、私は無意識にその都度対処して、意識的には「普通の人間」を追い求めてきたんだと思います。しぶといんやと思います。 もっと(言い方悪くてすみません)重度な方のためにお時間を割くべきでしょうが、私が質問をお出しすることによって貴重なお時間をいただくことは心苦しいです。吐露したいために、蛇足ばかりで要点のない乱文失礼しました。


林: おそらくこれまでは心の底にしまっておられたと思われるご経験をお知らせいただいたことに、まず感謝申し上げます。あえて距離をおいた冷淡な言い方をすれば、子ども時代に性的虐待を受けた方の、その後の人生への深刻な影響が、読者の方々にも直に感じられる貴重なご報告であると思います。
現在の症状としては、

健忘や、白昼夢、感情がダイレクトに分からない
心に膜がずっと張っています


と短く書かれていますが、いずれも解離ないしは解離に関連する症状で、性的虐待との因果関係があると強く疑われるものです。(但しこの判断の確定には難しい点が多々あります。それについては【1901】から【1948】をご参照ください)

質問メールのタイトルが

性的虐待の過去と向き合うべきか‏

ですが、あなたはすでに性的虐待の過去と十分に向き合っておられると思います。そして配偶者の方にすべてを話し、彼からの最大限の支持を受けておられます。

一番に知りたいことは、虐待した当事者以外の家族にも、被虐待者への心のケアを求めていいのかということです。当事者以外の家族とは、私の場合でいえば、私の夫です。私には夫に私の心の負担を背負わせる権利なんてあるのでしょうか。

という気持ちは理解できます。
けれども逆に、そういう気持ちを一方に秘めつつである限り、ケアを求めることは良いことであると思います。

【1901】からの回答を拝見して、このまま専門機関を探さず(本とかネットも見ず)自分で答えを探して夫のために生きるか、専門の方と向き合い直すか迷います。

その迷いも理解できます。
どちらが適切か、メールの内容だけからお答えすることには無理がありますが、この種の専門家の数は限られていて、現実には適切な治療を受けることはなかなか難しいこと、そして配偶者からの十分な支持が期待できることも考慮すると、少なくとも今すぐに医療機関を受診する必要性は大きくないと思います。
 すでにあなたは過去と向き合い、回復への道を歩んでおられると思います。

(2013.2.5.)

その後の経過(2013.4.5.)


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