精神科Q&A
【2326】統合失調症の薬を飲み始め、少しよくなりかけてきた妹への対応(【2310】のその後)
Q: 【2310】統合失調症が再発した妹を入院させるべきか の、その後の経過と追加の質問です.林先生,先日はご回答いただき本当にありがとうございました.その後,母と幾つか病院を訪ねて色々相談したところ,その中で入院施設もある精神科専門病院のソーシャルワーカーさんに助けていただき,なんとか妹の受診にたどりつくことができました.やはり統合失調症と診断されてジプレキサ5mgの服用を,まだ1ヶ月半ですが続けています.先生は本当は10〜20mg飲んだほうが良いとおっしゃったそうですが,妹が少なくして欲しいとお願いしたそうです.今回の先生は女性ということや(妹は男性がとても苦手なので),「まだ若いし美人だから,元気になっていずれはお仕事もできるようにしないとね」といった前向きな言葉をかけていただいたこともあったのか,まだ5回目の受診ですが,少しずつ自分のことを話すようになっているようです.先日は眠れないと訴えて,睡眠薬を少量追加したとのことでした.受診にはいつも母が付き添っています.家での様子も以前より少し落ち着き,常にしゃべっていることはなくなり,空笑などもだいぶ減ったのですが,時々壁に向かって話し出したり,日によっては「隣の家のお母さんが子供を虐待しているらしいよ.ご飯を食べさせていないんだって」「お姉ちゃんの結婚はうまくいかないよね.暴力夫だし」などと急に言いだすそうです.ただ,以前のようにいつまでも言っていることはなく,しばらくすると穏やかに過ごしているそうです.あちこちに飲み物や食べ物を置く(妹はお供えしてると言います)のは続いています.意欲は少しでてきたようで,以前はほとんど寝ていましたが,裁縫をしたり一人で買い物に出かけたりはするようになっています.ただ以前よりお金の使い方が荒くなっているようです.副作用と思われるものは軽い眠気と食欲の増加が見られています.食欲については,元々よく食べる子なので,意欲が出た結果なのか,薬の副作用なのかはっきりわからないのですが,担当の先生は体重を測りながら経過をみましょうとおっしゃっているそうです.また,精神科を受診することについては「あの先生が私が病気じゃないって証明してくれたんだから,お母さんもちゃんと認識しないと.いつまでも私をおかしいと扱うなら先生に言いつけるよ」と言ったそうです.これらのことから,私と母は色々話し合って「少し幻覚や幻聴は収まっているが,妄想は完全になくなっていない.病識はできていないようだが,とにかく受診を続けることが大事なので,元気になるために通院して,先生と薬に助けてもらうというスタンスを取るのが良いのではないか」と今は認識しています.妄想が完全になくなっていないことから,病院の先生がおっしゃったようにもう少し多い量を飲んだほうが良いのかとも思いますが,増量することで薬を拒否されたり,副作用が強くでて飲まなくなってしまうのも怖いので,先生にお任せしようと思っています.
今回の質問ですが,治療を始めた妹への家族としての対応の仕方についてです.妹が妄想のようなことを言い始めるのは,何か刺激(例えば隣家で大きい物音がしたり,私と電話で話したりといったことです)があった後のようで,刺激を与えるのが良くないのかと悩んでいます.意欲が出てきたためか,「遊びにいきたい」「お姉ちゃんに会いに行く」と言うようなのですが,外出先で刺激を受けたり,私と話すことが刺激になって症状が悪くなるのではと心配しています.一方で,意欲が出てきたり明るくなってきたことを思うと,したいことを少し叶えてあげたほうが良い気もして,母と悩んでいます.元々我慢することが多く,コンプレックスも強いので,少しずつでも外に出ることで自信がつくのかとも思いますし...治療を始めたばかりのおそらく不安定な状態の時には,あまり刺激になるような活発な行動(遠出や私との接触,人が多い場所に行くことなど)は控えたほうが良いでしょうか?薬を続けられるようにできるだけハイEE(高EE)にならないようには気をつけているつもりなのですが,一緒に暮らす母は,いつ「もう病院に行かない」と言われるかとびくびくしながら接しているようです.曖昧な質問で申し訳ありませんが,お答えいただければ大変嬉しいです.担当の先生にご相談するのが一番とは思うのですが,妹と一緒の受診時にはこういった話はできないので先生にお尋ねしました.すみませんがよろしくお願いいたします.
林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。ご質問の要点、すなわち、
刺激を与えるのが良くないのかと悩んでいます.意欲が出てきたためか,「遊びにいきたい」「お姉ちゃんに会いに行く」と言うようなのですが,外出先で刺激を受けたり,私と話すことが刺激になって症状が悪くなるのではと心配しています.一方で,意欲が出てきたり明るくなってきたことを思うと,したいことを少し叶えてあげたほうが良い気もして,母と悩んでいます.
については、こうすべき、という決定的な答えはありません。刺激を与えることにも与えないことにも、どちらにもメリット・デメリットがあります。ですからある意味手探りで、調子のよさそうな日にはある程度の刺激を与え、その結果を観察する、ということを繰り返していくのが現実には最善の方法だと思います。現在、妹さんは、ご家族の適切な協力により好転に向かっていることが読み取れますので、明るい期待を持ち、一方で慎重に対応を続けていくことが望まれます。
(2012.12.5.)