精神科Q&A

【2190】夜、起きて物を食べるが、その記憶がない


Q: 74歳になる母親のことでご相談いたします。家族は、母と私(48歳)、私の息子(21歳)の3人家族です。母は、入眠障害を訴え、2年ほど前より近医の内科よりマイスリーを処方され、毎日服用しています。マイスリーを服用しているので、睡眠は十分とれているようです。ただ、気になるのは、布団に入った後、再び起きだしてアイスクリームや菓子などを食べることがあり、そのことを本人は覚えていないことです。何となく覚えていることもあり、そのときはとてもいやな気分になるようです。母は、体型を気にする方なので、就寝前にそのようなものを食べるような人ではありません。私は母より先に眠ってしまうので、現場を目撃したことはありませんが、私の息子は何度か見ています。また、一度はアルコールに酩酊したようにヘラヘラ笑って私や息子にしつこく絡んできたことがありました。そのときはもちろんアルコールを飲んだわけではなく、後で聞くと、ひどく疲れていたところにマイスリーを飲んだだけだと本人は話していました。心配になり、マイスリーを処方していただいている医師にそのことをお話ししたのですが、マイスリーにはそんな副作用はないと言われてしまいました。年齢が年齢だけに、認知症の始まりかと心配もしつつ、このような現象をどのように見るか、先生の見解をお聞かせください。


林: これはマイスリーの副作用です。マイスリーに限らず、睡眠薬にはこのタイプの副作用が出ることがあります。同様のケースとして【1998】就寝前の薬を飲んだ後に記憶が飛ぶようになりました がありますので、その解説をご参照ください。【1998】でご紹介してあるのは主にハルシオンについての医学論文ですが、マイスリー(ゾルピデム)についての医学論文も複数発表されています。

なお、この【2190】では

また、一度はアルコールに酩酊したようにヘラヘラ笑って私や息子にしつこく絡んできたことがありました。そのときはもちろんアルコールを飲んだわけではなく、後で聞くと、ひどく疲れていたところにマイスリーを飲んだだけだと本人は話していました。

とのこと、これは抑制欠如と呼ばれる症状で、やはり睡眠薬の副作用として現れることがあります。医学論文にも症例報告があります。

したがって、

心配になり、マイスリーを処方していただいている医師にそのことをお話ししたのですが、マイスリーにはそんな副作用はないと言われてしまいました。

この医師の説明は明らかな誤りです。
しかも、これはかなり有名な副作用ですので、もしこの医師がそれを知らなかったとすれば、睡眠薬を処方する医師としてはあまりに勉強不足と言わざるを得ません。

この【2190】のケースでは、マイスリーを中止すべきです。
このタイプの副作用は、どの睡眠薬でも出る可能性があることはありますが、マイスリーのような超短時間型(効果の持続が短い)の睡眠薬で出やすい傾向があります。
ですから、お母様の睡眠障害に対して、薬の治療が必要であるなら、より効果の持続が長い睡眠薬に変更することが勧められます。


(2012.2.5.)


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