精神科Q&A

【1794】うつ病で長期欠勤し退職。その3ヵ月後、突然回復。現在、社会復帰に向けて努力しています (【1745】のその後)


Q【1745】職場でのいじめでうつ病になりました でご回答いただきありがとうございます。結論から申しますと、未だうつ病との診断で休暇中となっております。 誠に申し訳なく感じたのは、林先生にご指摘いただいたように、当初の七ヶ月間どのように過ごしたかを【1745】に記載していなかったことです。この時期は、記憶が曖昧になっており、今の自分ではあまり思い出せません。ですが、分かる範囲で記載させて頂きます。
うつ病と診断された日に、診断書では二週間の休養が必要とありました。はじめの一週間はほとんど布団からは出ずに過ごしておりました。また、過食気味となり、一気に体重が10kg近く増えてしまいました。その後は、起きられるのですが、特に外出などもせず家の中で時間を潰していた記憶があります。 二週間後に再度診察を受けると、今度の診断書では2ヶ月の休養が必要となり、それが先生にメールを送付した時期には期限が半年に延びていました。その間、生活は昼夜関係なくなり、布団の上で過ごす日が多くなりました。また、年末になって、会社から長期欠勤により会社都合退職とのことで、無職となりました。はじめは主治医も、退職勧告を受けたから、快方に向かうのでは?と、言われていたのですが、そのようなこともなく、かえって症状は悪化し、夜眠れない・多汗症・過食・集中力の低下・興味が薄れる・電話着信への恐怖増大と苦しい日々が年明けまで続きました。三月に入り、将来への不安から、全く眠れない日が一週間続いた後、それこそ突然ではあったのですが、前向きに心が変化しました。 それから5月までは、主治医から元気になってきたとはいえ、いきなり動き回るのではなく、徐々に行動をするように注意もされていたので、その指示に従い外への散歩や、ダンベルを用いた運動をするなどしてきました。 
あと【1745】で林先生が指摘された薬の処方ですが、私は薬のアレルギーが少しあり、なかなか合う薬がありませんでした。その中で、バランスがよい薬として、ジェイゾロフトが選択されたそうです。ご心配をおかけしました。
来月からは、地域障害者職業センターのサービスである精神障害者総合雇用支援を活用し、社会復帰へ向けて訓練を開始する予定です。 当時感じていた、社会への復帰は無理なのでは?と言う気持ちはかなり弱まり、これから受けるサービスである雇用支援制度を活用し、もう一度頑張ろうと考えております。
最後に、今の薬の処方ですが、記載をさせて頂きます。 ピーゼットシー 一日二錠; ガスターD一日二錠; ジェイゾロフト一日朝夕各二錠; エビリファイ一日朝夕各一錠; アキネトン一日朝夕各一錠; 睡眠時アモバン一日一錠; ピレチア一日二錠; レスリン一日一錠。
今後も、快方に向かっていく中で、経過をご報告できればと思っております。失礼いたします。                         


林: 経過のご報告をいただきありがとうございました。快方に向かっているとはいえ、まだつらさや億劫さが残っていると思われるこの時期に、ご丁寧な報告をお書きいただいたことに感謝申し上げます。

会社から長期欠勤により会社都合退職とのことで、無職となりました。

うつ病は治療すれば治る病気であるにもかかわらず、退職せざるを得なかったのは大変残念なことだったと思います。

はじめは主治医も、退職勧告を受けたから、快方に向かうのでは?と、言われていたのですが、

退職勧告が快方に向かうきっかけとなることは、ないとは言えませんが、むしろ悪化のきっかけになると予想するのが普通でしょう。しかし主治医の先生は、あなたに希望を持たせるために、あえてそのようにおっしゃったのだと思います。そしてその言葉がプラスに作用する可能性もあったとは思いますが、

そのようなこともなく、かえって症状は悪化し、夜眠れない・多汗症・過食・集中力の低下・興味が薄れる・電話着信への恐怖増大と苦しい日々が年明けまで続きました。

これは残念な経過であるものの、現実にはごく自然に予想された経過であるといえます。しかしその後の好転、すなわち、

三月に入り、将来への不安から、全く眠れない日が一週間続いた後、それこそ突然ではあったのですが、前向きに心が変化しました。 

この変化の仕方は、あなたが真のうつ病であったことを強く支持するものです。うつ病は脳の病気ですから、状況の影響による症状の変化はあまりなく (「あまりない」のであって、あることはあります。しかし状況の変化が症状に決定的な影響をおよぼすことはまずありません。そのような影響が見られた場合は、うつ病ではないと考えるべきです)、このように、外部の状況とは無関係に変化するものです。
そしてその後の主治医の先生の指示とあなたの行動、すなわち、

それから5月までは、主治医から元気になってきたとはいえ、いきなり動き回るのではなく、徐々に行動をするように注意もされていたので、その指示に従い外への散歩や、ダンベルを用いた運動をするなどしてきました。 

これらはうつ病の回復期としてきわめて適切であり、その結果、どんどん快方に向かっていると判断できます。

今後も、快方に向かっていく中で、経過をご報告できればと思っております。

そのご報告を楽しみにしております。


とはいえ、退職せざるを得なかったのは残念なことでした。
ここに、抗うつ薬による治療に常に内在する問題があります。すなわち、うつ病の診断が正しければ、抗うつ薬はとてもよく効く薬ではあるものの、効果が出るまでには日数がかかるため、その期間中に、職を失ったり、職場での地位が危うくなったりするということがあり得るのです。それを避けるためには、うつ病には早期から電気けいれん療法(即効性があります)を施行すべきであるという考え方もあり、この【1794】のようなケースを見ますと、それも一理あると考えざるを得ないところです。




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