精神科Q&A
【1745】職場でのいじめでうつ病になりました
Q: 私は36歳男性、未婚の会社員です。家族構成は、両親と妹です。
初期の症状:極度の不明な対象への恐怖感・電話の着信恐怖、多汗、微熱、手足の震え、首の緊張、めまい、極度の倦怠感
現在の症状:電話の着信恐怖(以前と違い固定電話は大丈夫になり、携帯電話だけになりました。また、家族と一部の友人・親戚の電話は取れるようになりました。ただ、着信音は出しておらず、バイブ設定にしています。)首の緊張、めまい、倦怠感(大分改善されました。)記憶力のなさ
9ヶ月前に会社内の組織が大きく変更され、私が信頼しておりました上司が事実上解雇となり、私もその上司との円滑な関係が新上層部より目をつけられいじめが始まりました。前任の上司は、社長からと新任に着任予定の当時まだ他会社の人間より強烈なプレッシャーを受けノイローゼになり、組織変更の頃までには出社できなくなりました。私はその方より、業務の進行を任されましたが役職等が付いたわけでもなく、新任の上司から着任早々、「私の指示以外の仕事は、理解しない。君は前任者と仲が良かったので要注意だ。気にくわなければ会社を辞めてほしい。」と言われましたが、前任者の願いや、総務部の他職員からも頑張ってほしいと後押しされ二ヶ月ほどは頑張りました。しかし、ある日その上司から、たくさんの社員がいる場所で、書類を机に投げつけ私に対して、「仕事ができないやつは、必要ない。」と罵声を浴びせられました。その後の記憶は定かではありませんが、かなり遅くまで一人職場に残っていました。すでにその少し前より微熱が続き、仕事へ行くにも全身から大量の汗が出て、動悸もし、一本電車を遅くしなければ通勤できない状況が続いていたのですが、風邪だろうと考え(思い込み)業務に着いていました。
翌朝、全く前日から寝付けずにいたのですが、極度の不明な恐怖感が襲い、いつにも増して汗が出てめまいがしていたため会社を休み、地元のメンタルヘルス科にて診察を受けました。当初の投薬は、ナウゼリン10mg1錠、ジェイゾロフト25mg2錠を朝夕一回ずつ、就寝前にアモバン7.5mg1錠、メイラックス1mg1錠を処方していただきました。即日、医師から休職をするよう勧められたため、会社へは初め二ヶ月間の休職を申告し、その後現在まで休職を更新しています。投薬も数度内容が変更されました。現在は、アキネトン1mg1錠、ピーゼットシー2 2錠、ガスター10g1錠、ジェイゾロフト25mg2錠を朝夕一回ずつ、就寝前にアモバン10mg1錠、ジプレキサ2.5gm1錠を処方されています。
長々となりましたが、すでに7ヶ月が過ぎ、家族からはただ怠惰な生活をしているように見られ、周囲の目も非難しているように感じます。夜はなかなか寝付けず上記の処方を受けていますが、寝付けるまでに2〜3時間はかかっています。今一番心配なことは、本当に社会復帰ができるのか?会社などの組織で以前のように対人関係は構築できるのかという点です。(他人に対して、信用することが現在できづらくなっています。)またこの倦怠感や恐怖感は消えるのか心配でなりません。本当に長々となり申し訳ございません、どうぞよろしくお願いいたします。
林: この【1745】のように、はっきりしたきっかけがあってうつ状態になった場合、それがうつ病であるのか、それともストレスに対する人間としての正常な反応にすぎないのか、判断しにくいことはよくあります。ひとつの判断基準は、きっかけとなる出来事と、結果としてのうつ状態の重さ・長さがつりあっているかどうかという点です。つまり、あまりたいしたきっかけではないのにもかかわらず、重いうつ状態となったり、長い期間うつ状態が続いたりすれば、うつ病の可能性は高まります。もっとも、きっかけとなる出来事のストレスの大きさは、なかなか客観的に判断できない場合もあり、そうなるとこの基準も万能ではありません。(この点については それは「うつ病」ではありません! のケース16に解説しました)
この【1745】のケースの職場での出来事は、客観的に見ても相当に大きなストレスであったことが読み取れます。すると、それだけを取り上げてみれば、うつ病ではなさそうということになります。つまり、職場の環境が改善されれば(もっとはっきり言えば、問題の上司がいなくなれば)、薬など飲まなくても症状は良くなるかもしれないということです。
けれども、ここに描写されている具体的な症状、そして、7ヶ月もうつ状態が続いているという経過を見ると、うつ病の可能性も否定できません。もしうつ病であるとすれば、症状が改善しないのにもかかわらず、抗うつ薬としてはジェイゾロフトを7ヶ月も続けるという薬物療法には疑問があると言わざるを得ません。薬の変更による改善が期待できるからです。
しかし、このメールにはその7ヶ月間の様子(生活の仕方や症状の変動など)が書かれていませんので、何ともいえないところではあります。また、職場の状況がこの期間にどうなっているのか、それがご本人にどのように伝えられているのか、あるいは、伝えられていないのか、それもまた重要な情報です。
結論としては、この【1745】の診断はよくわかりません。
そこをあえて回答しますと、
今一番心配なことは、本当に社会復帰ができるのか?会社などの組織で以前のように対人関係は構築できるのかという点です。
うつ病であれば、治りますので、そのような心配はありません。(但し、今の治療は疑問です)
うつ病でなければ、職場の環境の変化が、復帰のカギになるでしょう。
その後の経過(2010.9.5.)