精神科Q&A
【1526】発作的な体調不良…非定型うつ病が原因なのでしょうか
Q:
私は36歳主婦です。
たまたまこの先生のサイトを目にし、様々な質問に対する回答を読ませていただきました。
数年前から様々な不調があるのですが、最近日常生活にかなり支障をきたすようになり 何かしらの治療が必要ではないかと考えるようになりました。是非ご意見をきかせていただければ幸いです。
最近あらためて考えてみたところ、私の体調不良の種類には大きく分けて3つあるように思います。
1,偏頭痛 回数は月に4〜10回くらいの発作
2,腹痛・下痢・軟便 週に数回
3,激しい倦怠感・息苦しさといった自律神経失調症の症状 3日に1回以上
随分以前からある症状であるのと、20代のころ何回か病院にかかってもさして原因がなく、痛み止めや精神安定剤を出されるだけでとくに病気として扱われることもなかったので病院に行っても仕方ないという思いが強く今まで放置してきたのですが、偏頭痛は頻度が少し増し気味なので、頭痛外来を近々受診する予定です。また、胃腸障害も様子をみて、一度検査をしてみようと思っています。
ただ、一番原因がわからず困っているのは3番目の症状で、そのことをもう少し説明すると…
・3ヶ月以上、ほぼ毎日微熱がある。37.1〜37.5
・のどがややはれぼったく、ヒリヒリ感がある。
・夜型で朝が起きられず、睡眠時間も長く、寝不足でなくても横になると寝てしまう。
・食後に突然具合が悪くなり、横になったまま眠り込んでしまい、数時間起き上がれなくなる。
・ひじと手首の間接あたりがある時期痛み、いつの間にか直るということを繰り返す。
・何もしていないのに体が非常にだるい、動かすのが苦痛。症状は日によって色々。
他人のように体が重く、座ってする作業ぐらいしか出来ない
少しでも動くと、高熱があるときのように息がぜいぜいあがって横たわっていることしか出来ない
とりあえず作業や車の運転も気力さえ出せば何とかでき、人目には分からないが、 普段自分の2,30パーセントの力くらいで出来ることを、精一杯(100%)でしないと出来ない。
どこが痛いとか、どこが苦しいとかいうより、身体的に生きているのがつらい
(精神的な意味ではまったくなく)という感覚の苦しさに見舞われる。
といった感じです。
特に最後にのべた点なのですが、日によって半日続いて、だいたい夕方には動ける程度に改善したり、発作的に突然具合がわるくなるが、数十分から数時間で治まるのが普通。
いつ具合が悪くなって、いつ治るかわからないという不安がある一方、経験上、我慢していればかならず回復するという確信もありこれは自分の体質なのだろうか? 思うこともあります。
また、誰でも多少しんどいことはあるもので気力を出せば、動けないわけではないので、自分が軟弱なのか?とも思ったり、でも月に数回、とくに具合が悪くない日には、普通に家事をこなせるので、やはり、いつもの苦しさは異常なのだと思うのですが…自分ではよくわかりません。
登校拒否の子供が身体的に不調を訴えるような、精神的に自分で不調をきたしているのかと自分を疑う気持ちがある反面、正直、そこまでのストレスは今のわたしにはなく(これはかなり客観的に自分を判断してです)
買い物とか娯楽といった、自分のしたい予定の前であっても、この不調に見舞われるので
気の持ちようではないように思えます。(でも深層心理はわかりませんが)
実際、身体的症状が主で、精神的には不安感はなく(しいていえば、体調不良が一番の不安くらい)、出来ないのにやる気だけはあり、喜怒哀楽も豊かで、失意や絶望感はほぼありません。
実は20代前半にうつ病になり治療を受けていたこともあるので、その時と熱とのどの痛みなど、類似点があるものの、死にたいという気持ちや感情的な沈みがないのでこれは純粋な自律神経失調症で、うつではないと思い、病院にいかなくても…という気持ちがあったのですが、最近たまたま、テレビの情報番組をみていて、『非定型うつ病』というものの存在を知りました。
定型うつとは違い、感情の起伏があり、過眠、やや過食で、一見うつに見えないので
自分も周りも気づかないとのことでした。
意外にも症状が当てはまったので、ネットでさらに調べたところ、かなり自分に思い当たることがありそうであれば、症状を改善するため、治療をしたほうがいいのかと考えています。
ちなみに、
最近強く感じていたことは、自分に対する憎悪とか、苛立ちです。
それに気づいたことで少し和らぎはしたのでかが
死にたいではなく、自分を殺したい。罪悪感ではなく、自分に対する嫌悪感。
わたしは、自分という人間が好きではありません。
なのに、自分のことが一番大事で、そういう思考立ち振る舞いをしている自分がまた嫌いなのです。
また、自分で驚くのですが、最近以前よりキレやすくなり、さっきまでとくに何も苛立ってなかったのに自分でもほんのささいと思うきっかけで、別人のように子供に腹をたてて声を荒立てたりします。
かと思うと、何かの拍子に感情が高ぶって、涙します。ただ、悲しいという個人的マイナス感情ではなく、感情移入したり、感動したりで簡単に涙腺が緩むという感じなので、性格的なものかもしれませんが?
多少ひっかかる感情面での事柄はその二つと、思考過多かつ、無意識意識に自分にたいして評価や批判をしていること。
もしかしたら、それが実は思いのほかストレスを与えているかでしょうか?
林: これはなかなか難しいケースですが、結論としては、うつ病と考えるべきだと思います。一方、非定型うつ病という病気は、確かに存在すると私は考えています。
最近「○○うつ病」という病名が氾濫しており、そういった紛らわしい病名は使うべきでないし、そもそもそれらはうつ病ではないというのは、【1524】の回答にも引用した通りです。けれども、「非定型うつ病」については事情が異なります。これはうつ病の一種か、あるいはうつ病に近いある種の病気だと思います。
けれども、そのことと、「非定型うつ病」という病名を使うべきかということは別の話です。つまり私の基本的な考えは、
「非定型うつ病」は存在する、しかし、この病名は使うべきではない
というものです。理由は、他の似て非なるうつ病につけられている病名と紛らわしいこと、それから、特に「非定型うつ病」という病名を使わなくても、「うつ病」という病名で充分だと考えるからです。
というわけで、この【1526】は、うつ病と考えるべき、という回答になります。非定型うつ病に類似した点はありますが、うつ病という診断でいいと思います。
そして、明らかに身体症状が前面に出ていますので、仮面うつ病と呼ばれるものに近いともいえます。しかし仮面うつ病という病名も、上と同じ理由で私は感心しませんし、この【1526】は身体症状が前面であっても、身体症状が唯一の症状ではないので、仮面うつ病にもあたりません。
さらにこのケースの診断で最も知りたいことは、
実は20代前半にうつ病になり治療を受けていたこともあるので、
このときの症状と経過がどうであったかということです。それが間違いなくうつ病であれば、今の症状もうつ病であるという判断が強く支持され、当時と同様の治療法による効果が期待できるでしょう。
もうひとつ付け加えますと、
そこまでのストレスは今のわたしにはなく(これはかなり客観的に自分を判断してです)
とのことですが、ストレスを自覚しにくい人ほど、身体に症状が出やすい(つまり、ストレスの影響が精神面に出る代わりに身体症状として出る)とも言われています。(【1147】のアレキシチミアの解説もご参照ください)。これは定説とまでは言えず、反論もたくさんあるのですが、そういう人が存在すること自体は事実です(そういう人とは、ストレスを自覚せず、それが身体症状として出る人、という意味です)。
いずれにせよ、この【1526】は、うつ病としての治療効果が期待できると思います。