精神科Q&A
【1424】慢性疼痛に効く泌尿器に影響の無い治療薬はありますか
Q: 32歳、女性です。
私は長年前歯の根っこの慢性的な炎症で悩んでいました。
痛みがひどく、何度外科的な処置をしても治らなかったので、抜歯後、インプラントをしました。
しかし、神経のぴりぴりしたような痛みが続き、やむなく一旦インプラントを抜くことになりました。
CTでは何の異常も認められないため、ペインクリニックの専門家を何人か訪ねたところ、典型的な神経因性疼痛と診断されました。
現在ペインクリニックで、週2回 星状神経節ブロックを受けていますが、まだ激しい痛みがあります。
抗うつ薬がこの種の痛みに効果があることが証明されていると知り、主治医の先生に抗うつ剤の処方をお願いし、トリプタノールを1週間ほど服用しました。
しかし、私は慢性の膀胱炎を持っており、トリプタノールの副作用(排尿困難)から膀胱炎の症状が急激に悪化したため、服用をやめざるを得なくなりました。
私の主治医は抗うつ剤に関してはあまり詳しくないらしく、”星状神経ブロックだけで治療しましょう”と言われました。
ただその薬を止めてから、疼痛が激しくなりました。
泌尿器に影響の無い慢性疼痛に効く治療薬を教えていただけませんか?
この痛みで長年悩まされているため、ご回答どうかよろしくお願いいたします。
林: 慢性疼痛には抗うつ薬が有効です。【0600】, 【0643】をご参照ください。
ただしこの【1424】での問題は、慢性の膀胱炎があることです。このような場合、
トリプタノールの副作用(排尿困難)から膀胱炎の症状が急激に悪化
というのは十分予測できることです。ですから、
泌尿器に影響の無い慢性疼痛に効く治療薬を教えていただけませんか?
というご質問が出るのは自然です。そしてこのご質問には答えがあります。それはSSRIです。
SSRIは、従来の三環系抗うつ薬と比べて、決して副作用が少ないわけではありません。(副作用が少ないというのは、製薬会社の宣伝と、それを鵜呑みにしているかまたはあえて乗せられている医師を含めた周辺の人々の声にすぎません)。しかし、副作用のプロフィールははっきりと違います。ですから、患者さんによっては、三環系抗うつ薬よりSSRIのほうが副作用が出ないということがありますし、逆にSSRIより三環系抗うつ薬のほうが副作用が出ないということがあります。
そして、三環系抗うつ薬の主な副作用は、抗コリン作用と呼ばれるもので、その一つが排尿障害です。
ですからこの【1424】のケースは、三環系抗うつ薬よりもSSRIの適用ということになります。SSRIでも排尿困難の副作用がゼロではありませんが、三環系抗うつ薬よりははるかに少ないので、このケースでは当初からトリプタノール(代表的な三環系抗うつ薬の一つです)ではなく、SSRIで治療すべきだったといえるでしょう。もちろん今からでも遅くありません。SSRIの効果が十分に期待できます。