精神科Q&A

 【1316】自覚的にはうつ病は良くなったと思えるのですが、職場を強制的に休まされています(【1091】のその後)


Q 【1091】うつ病の回復期に自信を取り戻そうとあせっていますで相談にのっていただいた者です。
その後昨年は年内いっぱい休職し、年明けに半日勤務で復帰しました。その頃は回復も順調だったのですが、3月にフルタイム出勤した頃から好不調の波が出てきて仕事も休みがちになりました。主治医に相談したところ薬をアモキサン中心の処方に変えてもらい様子を見ることになりました。

その後は波はあるものの仕事をそれなりにこなしているつもりだったのですが、与えられた仕事が終わると暇をもてあましてしまい(自分で仕事を見つけることができず)、新聞スクラップやネットばかり見ていることが多くなりました。そして6月の終わりに別の精神科医にセカンドオピニオンを求める機会があったので相談にのってもらったところ「3ヶ月〜半年の休養が必要」と言われました。そして職場からはそのことを理由に、半ば強制的に休まされることになってしまいました。何でも職場の上司に言わせると、(1月の)職場復帰の頃から全然よくなっているように見えない、このような状態のまま出勤させてもかえって職場にとって迷惑だというのが言い分のようです。主治医は「本人が休みたくないのなら無理して休まなくても」という意見だったのですが、結局自分の意思に反して、とりあえず3ヶ月間休むことになってしまいました。

でも自分としては、以前と比べて良くなっていると思えるのです。家族も前よりはずっと良くなっているように見えると言うのです。それでいて職場では「休養が必要」というのです。なんだか矛盾したようにも思えます。

先生にお聞きしたいのは、私の状態は以前より悪くなっているのでしょうか、前回の休みが足りずまだよくなっていない状態なのでしょうか、はたまたうつ病は寛解していて今の状態は擬態うつ病に過ぎないのでしょうか。自分としては、やりたい仕事でない職種に就き、かつ仕事を与えられないことによるストレスに起因しているうつ(もしくは擬態うつ)に過ぎないのだから、仕事の量を増やしてもらえればよくなるのではと考えています。

また職場では「歩いて体力をつけることがうつの回復につながる」と歩くことを強制されましたが、自分としては(うつが回復して)気力が戻ってきてから自然と体力も戻ってくるのではと考えています。このことについて先生のお考えはいかがでしょうか。

なお4月以降の状態としては、
異動したかった職場を動くことができなかった頃から不安感のようなものがまた出てきた、大きな不安の波が3ヶ月で3回ほどやってきて、そのときは朝起きても出勤することができなかった、いったん出勤してしまうと夕方までそれなりに過ごせるが(前述のように)退屈さを我慢できなくなると早退することもあった、体力的な面に多少の不安はあるものの(メールを書いている時点では)病識はない等の状態です。
現在の服薬状況は、アモキサン150mg/day、テトラミド10mg/day、マイスリー5mg/day、パキシル20mg/day、アビリット50mg/day、レスリン50mg/day等です。


林: 【1091】で回答した通り、あなたはうつ病だと思います。もっとも、これも【1091】の回答にお書きしましたが、擬態うつ病でないとも言い切れない点はあります。しかしそこまで微妙なところまではメールから判断するのは無理がありますので、ここではうつ病であるという判断のもとに回答を続けます。

それはともかく、このメールに書かれた経過はどうもよくわかりません。

6月の終わりに別の精神科医にセカンドオピニオンを求める機会があったので相談にのってもらったところ「3ヶ月〜半年の休養が必要」と言われました。そして職場からはそのことを理由に、半ば強制的に休まされることになってしまいました。

とは一体どういうことでしょうか? そもそも、主治医以外の精神科医の意見を求めるに至った経緯がわかりません。ご自分から希望されたのでしょうか? だとすれば、意にそわない診断結果を、わざわざ会社に連絡し、ご自分の不利を招くということは考えられませんね。そうしますと、会社の指示で別の精神科医に意見を求めたということでしょうか。そうだとすれば、あり得ることです。主治医は一般に、職場復帰を促進する方向に意見を述べますので、会社側としては、それをいつも受け入れるわけにもいかず、より客観的な意見を、主治医以外の医師に求めることはしばしばあります。おそらくこの【1316】では、

職場の上司に言わせると、(1月の)職場復帰の頃から全然よくなっているように見えない、このような状態のまま出勤させてもかえって職場にとって迷惑だ

という本音があり、その事態を解消するために、別の精神科医の意見を求めたのでしょう。それが客観的に見て適切か否か、それは会社でのあなたの実際の仕事ぶりを見ない限り判断できません。

ただし、

また職場では「歩いて体力をつけることがうつの回復につながる」と歩くことを強制されました

という指示は、もし医師以外の方からのものであれば、論外です。【1091】にもお書きしたように、うつ病の回復期の活動は、慎重であるべきです。やりすぎればかえって回復は遅れます。

また、

先生にお聞きしたいのは、私の状態は以前より悪くなっているのでしょうか、前回の休みが足りずまだよくなっていない状態なのでしょうか、

わかりません。わからない理由は、上記の通り、会社でのあなたの様子を知る手段がないからです。

ただし、

自分としては、やりたい仕事でない職種に就き、かつ仕事を与えられないことによるストレスに起因しているうつ(もしくは擬態うつ)に過ぎないのだから、仕事の量を増やしてもらえればよくなるのではと考えています。

このように、「仕事がないことがかえってストレス。ゆえに、仕事の量が増えればよくなる」と考えることは、回復期のうつ病の方にはよくあることです。そして、それは多くの場合誤りです。やはり仕事量は段階的に増やしていくことが、スムースな回復への早道です。


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