精神科Q&A

 【1179】同じ症状が継続しない場合は、うつ病ではないのでしょうか


Q: 26歳の女性です。 
ここ数年、漠然とした不安感があり、徐々に頻度が増えているような気がするので 
「うつ病」で検索をかけていろいろなサイトを見ています。 
見てきたサイトはどこも自分に当てはまる部分と、当てはまらない部分とがあり、ただ精神的に未熟なだけの擬態うつ病なのか、それとも他の病気が疑わしいのかわからず、という状態です。 

「2週間以上症状が続く」というのが大きな特徴として書かれているサイトが多いのですが、 私の場合は波がある感じです。 

例えば、 
気分が落ち込んだり、やる気が起きにくい状態は、月曜の朝にひどくて、夕方には軽くなり、火曜の朝にはまたひどくなって(月曜ほどではないのですが)、午後から軽く・・・ 
といった感じで徐々に軽くなり、土曜の昼過ぎ〜日曜にはあまり感じることがなくなり、また日曜の就寝前〜月曜の朝にひどくなる。 

睡眠も、通常通りでいい日もあれば、寝ても寝ても眠い日が数日続いたり、なかなか眠れずに目覚めが早い日があったり。 

食欲も、大抵の日は普通なのですが、たまに苦しくてもつめこむような過食気味になったり、食べる気力がなくてぼーっとしている間に深夜になってしまい、そのまま寝る日もあります。 

人づきあいに関しては、普段は内向的な性格なりに最低限の接し方はできていると思いますが、たまにしゃべっているつもりの言葉が声に出ていないときや、相手と会話しているはずなのに、内容が途中からしか頭に残っていないときがあります。 

記憶力も集中力も低下して、締め切りがせまった書類があっても日中はやる気が起きなくてほとんど仕事が進まず、終業時刻を過ぎてから残ってやることが増えました。 
隣の部屋に印鑑を取りに行くのに、現地についたら何をしようとしていたのか忘れ、元の場所に戻って思い出して、また現地に行って忘れ・・・というのを4回繰り返した日もあります。 

趣味に関しては、「楽しい」と思ってどんどん続けたい日が1週間あったかと思えば、「なんとなくやる気にならない」と2ヶ月お休みしたり、という感じです。 
特に周期は決まっていないのですが、やりたいのにやる気が起きないと感じる日のほうが多く、気持ちが焦って不安になり、余計にできなくなってしまう状況が続いたりします。 

「死にたい」「消えたい」と考えることはよくありますが、これも全く考えない日があったり、考えてただ泣くだけの日があったり、コード類で首を絞めて、クラッとなる感覚で安心する日があったり、それで安心できず「自分は死ぬ勇気もないんだ」とさらに気分が落ち込んで泣く日もあります。 
何も考えずにぼーっと髪の毛をぶちぶち引き抜いていたこともあります。 

大切な人(親や彼氏)相手に「生まれてこないほうが良かった?」「私なんていないほうがいい?」 「私が死んだらどうする?」「本当はいらない?」と何度も泣きながら聞いてしまいます。 
否定の言葉があることも予測できているし、悲しむこともわかっているつもりなので、言った直後は「もうこういうことは言わないでおこう」と思うのですが、数日もちません。 

いつ頃から・・・という時期ははっきりとはしませんが、 
「前はこんなことなかったのに」「なんとなく頻度が多くなっている気がする」 
と感じることが増えてきました。 
「自分はちょっとおかしいのかも?」と感じだしたのは2〜3年前からのように思います。 

ただの甘えかなと思いつつ、もし放っておいて周りにもっと迷惑をかけることになったらどうしようという不安があり、メールしました。 
軽いうつ病かなといろいろなサイトを見てみましたが、同じ症状が継続はしていないので 違う気もしますし、医療費がかかることも受診にためらう理由になっています。 
症状が断続的な場合、心配はいらないでしょうか。 
それとも、なんらかの専門機関を受診したほうがいいのでしょうか。 



林: メールに書かれている症状はうつ病に一致しており、やはり受診されたほうがいいと思います。あなた自身、うつ病にかなり当てはまると自覚される一方で、それでも疑問を持っておられるのは、症状が断続的である点、すなわち、

「2週間以上症状が続く」というのが大きな特徴として書かれているサイトが多いのですが、

この「2週間」という基準だと思います。
「として書かれているサイトが多い」というだけでは、その内容が信頼できる根拠にはなり得ません。けれどもこの「2週間」という基準は、国際的に広く用いられている診断基準であるアメリカ精神医学会が作成したDSM-W (あるいはDSM-W-TR) に記されている正式なものです。したがって、うつ病に限らず、精神疾患の説明をするときにはこの基準を尊重するのは当然で、私もうつ病の医学部講堂で引用しています。
但し、この診断基準は、あくまでも「診断と統計のための診断基準」であることに注意する必要があります。
つまり、この診断基準が作成されたひとつの大きな目的は、より正確な統計のためです。そのためには、より確実にうつ病ならうつ病と診断できるケースだけを扱う必要があります。そうしますと、たとえば1,2日間だけ落ち込んでいるようなケースは除外したほうが正確さは増すわけで、そこである程度の期間を定めることになり、いわば便宜的に2週間という基準が作られているに過ぎません。ですから、統計はともかく実際の臨床では、基準に厳密にこだわるよりも、個々のケースをよくみて診断していくことになります。この観点からすると、この【1179】は、うつ病である可能性はかなり高いと言えます。
基準といういのは結局は死物であり、その運用は生きた人間にかかっているとでも言うべきかもしれません。

症状が断続的な場合、心配はいらないでしょうか。 

そんなことはありません。上記の通り、「2週間」というのは、いわば正確な統計のための便宜的な基準にすぎません。

いつ頃から・・・という時期ははっきりとはしませんが、 
「前はこんなことなかったのに」「なんとなく頻度が多くなっている気がする」 
と感じることが増えてきました。 
「自分はちょっとおかしいのかも?」と感じだしたのは2〜3年前からのように思います。


この経過からすると、この【1179】のケースは、2〜3年前から徐々にうつ病が発症してきたのだと思います。

なんらかの専門機関を受診したほうがいいのでしょうか。

受診されることをお勧めします。


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