精神科Q&A
【0985】抗うつ薬の減らし方(【0720】のその後)
Q:
【0720】なかなか治らない夫のうつについてでは回答をいただきありがとうございました。あれから主人は結局3週間で6回電気けいれん療法を受けました。ところがすぐにはよくならず、会社復帰はその数ヶ月後になりました。でもそれから今(現在復帰九ヶ月目に入りました)に至っているのですから受けた成果はあったのでしょうか。本当のところはわかりません。
今回ご相談したいのは薬を減らし方のことです。
主治医からそろそろ薬を減らしましょうというお話があったのです。
前回失敗していますから慎重にしなくてはと思っていますが、現在飲んでいる薬は
コンスタン0.4mg1錠 一日3回
リーマス 200mg2錠 一日3回
アモキサンカプセル25mg2錠 一日3回
トレドミン 25mg1錠 一日3回
パキシル 10mg1錠 一日3回
リタリン 10mg1錠 一日1回
もうすでに先月にリタリンを一錠減らしました。
このままでいくと今月にまたリタリンを一錠減らすということになると思うのですが、なんだか心配です。
主人は今のところ元気ですが、仕事から帰って夕食が終わるともう横になり、ベッドにも入らずリビングでそのままいびきをかいて寝ています。起こしてもなかなかおきず、そこで二時間ぐらい寝てからようやくベッドへ行くという毎日です。
仕事は簡単な内容になり、帰宅時間は六時半頃で、今のところ金曜の夜に一時間ぐらい残業するくらいです。
土日は子供のピアノ教室の送迎をしたり買い物に付き合ってくれたりと普通に過ごしていますが、少し時間があるともうそこら辺で横になって寝てしまいます。もともとあまり趣味のある人ではないので休みの日に何かしたいこともないようですが。
このまま薬を減らしていって大丈夫なのでしょうか?
また減らしていくとしたらどんなことに注意して減らしていけばよいのでしょうか?
林: まずは回復・職場復帰されてよかったと思います。復帰して9ヶ月が過ぎたとのことですので、症状が消え状態が安定しているのであれば、薬を減らすことを考えてもいい時期といえるでしょう。けれども、
前回失敗していますから慎重にしなくてはと思っています
これは実にもっともで、これまでの経過からいって、慎重なうえにも慎重さが求められるところです。いま「薬を減らしてもいい」と私が言ったのは、つまり「必ずしも減らさなくてもいい」という意味を含んでいます。実際、多くの研究結果によれば、再発を最大限防止するためには、うつ病の回復までに必要だった薬の量をその後も続けたほうが望ましいことが示されているのです。
といっても、そのデータはデータとして、現実には薬を減らすことを考えるほうが普通です。そこでこの【0985】のケースでも、減らす方向で考えてみたいと思います。また、この処方内容をみると、多種類の薬が出されていますので、やはり出来れば種類だけでも減らしたいところです。というのは、今後なにか副作用が出てきたときに、どの薬の副作用かがこのままの処方ではわからず、全部を中止しなければならない事態も考えられるからです。そうなると、もし再発したときに、処方する薬が非常に限られ、治療に困難をきたすことになります。
もっとも、減らすためには、この回答の冒頭で言いましたように、「症状が消え状態が安定している」ことが条件です。このケースの現在の状態は、安定はしているようですが、症状が消えているのかどうかはなかなか難しいところです。
仕事から帰って夕食が終わるともう横になり、ベッドにも入らずリビングでそのままいびきをかいて寝ています。起こしてもなかなかおきず、そこで二時間ぐらい寝てからようやくベッドへ行くという毎日です。
仕事は簡単な内容になり、帰宅時間は六時半頃で、今のところ金曜の夜に一時間ぐらい残業するくらいです。
土日は子供のピアノ教室の送迎をしたり買い物に付き合ってくれたりと普通に過ごしていますが、少し時間があるともうそこら辺で横になって寝てしまいます。
この様子からは、まだうつ病の症状としての倦怠感が残っているようにも思えますが、倦怠感が通常のものかうつ病の症状なのかは、意欲などから総合的に評価する必要がありますので、ちょっとこれだけでは何ともいえません。慎重な判断が必要ということは言えるでしょう。
これがうつ病の症状でないと判断された場合は、減薬を開始していいと思います。 具体的に減らす手順としては、実際にすでにそうされたように、リタリンから減らし始めるのが最善だと思います。リタリンは人によっては依存性を生じてやめるのが困難になることがあるからです(【0993】などをご参照ください)。
リタリンの次はどれを減らすかについては、色々な意見があるところでしょう。主治医の先生の方針通りということでいいと思います。また減らしていくとしたらどんなことに注意して減らしていけばよいのでしょうか?
減らす過程で注意すべきことは、当然ながら再発の徴候です。あなたはかなりよく状態を観察しておられるようですので、変調があれば見逃されることはあまりないと思います。ただし、仮の話ですが、ご本人に対して、再発してもらっては困るというプレッシャーを与えますと、つらい気持ちをぎりぎりまで隠されることがありますので、不調を自覚したらすぐに口に出せるよう気を配ることは大切だと思います。