精神科Q&A
【0852】境界型人格障害と思われる彼女への対応
Q: 以前、ごく短い期間に交際していた女性について相談させていただきます。
以下に書きますとおり、私は彼女を振り切ることができず、一緒に食事をするなどは今でもしていますが、一刻も早く現状から解放されることを希望しています。
私と彼女の関係は、【0619】とほぼ同じ経過で現在に至っています。
ただ私と彼女は、数ヶ月前までは幾度か体の関係を持ったことが違っています。
○は彼女から聞いた話で事実かどうかはわからないこと、
●は、私や第三者が確認した事実、もしくは、ほぼ事実であると思われる事柄。
また、●の項目には私の独断も含まれていますが、事実と独断は文面から判別できるように書いているつもりです。『』内は、直前の項目に関する補足です。
● 私は二十代後半の男性で、彼女は三十代前半です。
● 職場では、私のほうがやや上の立場です。
○1年ほど前、彼女は別の男性に二股をかけられて悩んでいた。
○ それを知りつつ奴隷のように扱われたり、気違いよばわりされ、 病院に行けと言われて行ったら「軽い鬱病」と診断された。『異性問題に悩んでいたのは事実のようだが、その経緯は不明』
○以前にも、前の職場でのストレスで薬を飲んでいたことがある。
● 私と彼女は、接客業の同じ職場で働いている。
○二股をかけたという男性、もう一人の女性も同じ職場の人である。
● 私が彼女の症状に気付いたのは半年前。その時は特にひどいとは感じなかったので、 私を好きだという彼女と短い期間交際した。
しかし、症状の悪化に伴い、私が前の男の代りにされているように感じ、交際を断った。以来、現在に至っても症状は悪化の一途を辿っている。
〜半年前の状態〜
● 異常な躁状態。幼稚な話し方。自己中心的な行動。
『当時は親しくなかったため、それ以外の症状は不明』
〜現在の状態〜
● 非常に幼稚な話し方。
● 常に足元がおぼつかない。ろれつもあまり回っていない。
『服用している薬のせいかもしれない』
● 自分の意見が通るまで、だだをこねて都合の良い返事を得るまで 引き下がらない。
● 一人になること、捨てられることを恐れている。
● 私が他の女性と仲良くしていると、異常に嫉妬する。
● ひどければ、めまいを起こして倒れることもある。
●何かと大きな音を立てるが、まったく自覚がない。
● 両手の親指の甲をカッターナイフで切る。
● 時に体をぶるぶる震わせたり、 ボカボカと自分の顔を両手のげんこつで殴ったりする。
(そんなに強くではありません)
● 自分が悪い、自分がみんなに迷惑をかけていると言う。
● 二股をかけられたことも、自分が悪かったという。
● 同時に、自分は正常で、どこも悪くない、と言う。
● 殺してやる、なにもかもめちゃくちゃにしてやるというメールを送ってくる。
● 直後に、謝罪のメールを送ってくるが、さらに直後にはまた暴言を吐く。それの繰り返し。
● 私が休みの日などには、
他の女性といるのではないかとメールを送ってくる。
『彼女いわく、前のことがあったから気になるとのこと』
『私と彼女は恋人ではないことははっきりと伝えてある。
(そのようなことを言うのはおかしな話ですが、 現在の彼女は相手の雰囲気を察して気持ちを判断することができないようです)』
○「いらいらした時に飲む薬」を医師に指示された量以上服用し、
●足元がふらついて仕事に大きな支障が出ている。
1年たっても症状は悪化するばかりなので、私は彼女に別の病院を紹介しました。
当初は私もついていくつもりでしたが、どこまで深く関われるかの自身がなく迷っていたところ、彼女はひとりで行きました。
まだ一度だけですが、そこを気に入って、また行きたいと言います。
これからは新しい病院に通うようです。
通院している以上、直接的な治療はもちろん主治医におまかせするつもりですが、
以下の理由のとおり、私は彼女の治療に関わろうとしています。
◎ もともと彼女を助けようとして親しくなったこともあり、できる限りこれからも力になりたい。
◎ 私の身にも被害が及んでいる。具体的には、
◎ 彼女とのやりとりの中で、
私自身が心の調子を崩しており、通院を希望している。
◎ 私自身が、常に誰かに監視されているように感じ、手が震えることがある。
◎ 夜、眠れずにアルコールに頼ってしまう。
◎ 仕事中も彼女は私に恋愛感情を持っているような行動をし、まわりから奇異の目で見られている。私は彼女を使用する立場にあり、そのため仕事に支障が出ている。
◎ 彼女自身も奇異の目で見られており、このままではいつまで仕事を続けられるかわからない状態である。
以上のことから、
彼女の快復は私にとっても必要なことであるからです。
長々と書きましたが、林先生のご意見を伺いたいことは以下のとおりです。
(1) 病院では、症状に自覚がないためか、上記のさまざまな事柄を言わず、単に気持ちが落ち込んでいるとだけ言っているようで、私が主治医に現状を話すべきかどうか。
(彼女の話では、彼女のご家族は彼女がそこまでひどいとは思っていないようです。 また、調子がいいときはいいので、ご家族も症状を見ていないと思われますし、主治医の先生も、誰かが言わなければわからないかもしれません)
(2)もしくは、主治医に手紙などを書いて彼女に持たせるべきか。
(3) 私のことを好きで、一緒にいると救われると言い、せめて少しでも安らぐならと食事には行きますが、彼女のためにはそれを続けるべきか。(恋人ではないと言いつつ、そんなことをするのは異常だとわかっていますが、人が通る場所でしゃがみこんでだだをこねられたら私の世間体を気にしてしまいます)
(4) 「少しでも安らぐなら」と考える私は正常かどうか。それとも私は「お助けおじさん」なのか。
(5) 林先生のHPや本などを読む限り、彼女は以前の出来事のせいでこうなったのではなく、境界型人格障害によくあてはまるように思いますが、いかがでしょうか。(私を好きと言うのも、特有の依存なのではないかと考えています)
林: (1)(2)(3)については、現在のあなたが彼女にどういうスタンスを取るつもりかによります。彼女の適切な治療のためには、現状を主治医にお伝えしたほうがいいのは明らかです。あなたが友人として、あるいは元愛人として、その他、どういう表現が適切かわかりませんが、いずれにせよ他人のあなたがどこまで手助けする覚悟があるのかによります。
結局のところ、
◎ もともと彼女を助けようとして親しくなったこともあり、できる限りこれからも力になりたい。
◎ 私の身にも被害が及んでいる。
この二つのバランスをあなたがどうお考えになるかということにかかってくるでしょう。
(4) 「少しでも安らぐなら」と考える私は正常かどうか。それとも私は「お助けおじさん」なのか。
「少しでも安らぐなら」と考えるのはもちろん人間として自然な感情でしょう。
そのことと、「お助けおじさん」かどうかということは関係ありません。
(5) 林先生のHPや本などを読む限り、彼女は以前の出来事のせいでこうなったのではなく、境界型人格障害によくあてはまるように思いますが、いかがでしょうか。
確かに境界型人格障害によくあてはまるように思えます。
ただしそもそも人格とはもともと持っていた素因に、環境が影響して形成されるものですから、以前の出来事が無関係であるとは言えません。