精神科Q&A

【0674】眠れない・・・でも睡眠薬の依存症になるのが怖い


Q:  私は26歳の女です。何らかのアドバイスを頂ければ、と思いメールをさせていただいています。

だいぶ前から不眠症に悩んでいます。仕事で終電やタクシー帰りが続いても、疲れているのに眠れない。一晩中うとうとしていたら朝になった、というようなことがしょっちゅうありました。
夜中に必ず目が覚めるし、覚めてからはまた寝付くのに時間がかかってしまいます。また、早めに眠りに付いても熟睡できた感じが無く、毎日朝起きた瞬間から一日中眠いです。本当に眠すぎて仕事が辛いです。ただ、休日は腐った様に寝ています。
10時間ぐらいは寝ています。ほっといたら一日中寝てるんじゃないかと思うぐらい寝てしまいます。寝れないのは平日だけなんです。

疲れがたまっている所為かとは思いますが、毎日眠いためお昼ご飯も食べず昼休みは職場の机に突っ伏して寝る日々が続いています。人と付き合うのも億劫になってきてしまいます(食堂に行って誰かとしゃべりながらご飯を食べるのが鬱陶しい。誰にも会いたくない、という気分です)。

恋人に「寝付けなくて毎日仕事をするのが辛い」と話をしても「世の中には、本当に仕事が忙しくて寝たいのに寝れない人がいる」と言われてしまいます。そう言われると私は私という個人の体力に限界を感じているのに、人と比べるとまだまだ甘えているんだと、自分がまるでダメ人間のような気分になって落ち込んでしまいます。
いくら疲れているからと言って、いくら眠れないからと言って、こんなことで弱音を吐くべきではないのではないか。みんなもはもっと疲れているし寝れない人もいる。今不眠症と言う言葉を使っているけれども、本当の不眠症はもっとひどいものなのかもしれない。軽々しく言うものではないのかもしれない…?

職場の健康診断で「眠れない」という話をしてみたところ、「普段の生活に支障を来す様であれば病院に行った方が良い」と言われました。
でも、「生活に支障を来す」ということがどういったことでどういうレベルなのかが分かりません。母親には睡眠薬を勧められました(母親が病院からもらってきている薬です)が、依存症になるのが怖くて飲めません。
仕事に集中できないくらい眠気が取れないなら、やはり睡眠薬を飲むなり病院に行った方が良いのでしょうか。それともただ単に疲れているだけなのでしょうか。病院に行くほどでもないのでしょうか。



: 「眠れない」というのは色々なレベルのものがありますが、治療を必要とするかしないかは、あなたが職場の健康診断で言われたとおり、

普段の生活に支障を来す様であれば病院に行った方が良い

ということになると思います。

「生活に支障を来す」ということがどういったことでどういうレベルなのかが分かりません。

とのことですが、あなたは夜の不眠のため日中の活動(職場など)に大きな影響が出ていますので、明らかに生活に支障を来たしているといっていいと思います。なんらかの治療が必要な状態といえるでしょう。

不眠に対しては、睡眠の環境を調整するなど、睡眠薬以前に試みる方法はありますが、睡眠薬の使用自体をそれほどおそれる必要はありません。あなたのメールの内容から判断する限り、不眠があなたの生活を大きく阻害しており、そしてそれは睡眠薬の使用で比較的容易に改善できると思います。

ただ、依存についてのあなたの心配はある意味ではもっともです。現在広く使われている睡眠薬には、昔の睡眠薬のような依存性はありませんが、それでもどの薬にも「習慣性あり」と注意が書かれています。
習慣性と依存性の違いは微妙です。
一般的な言葉の使い方としては、依存性というのは、自分の意志ではどうしてもやめられず、それどころか場合によっては量もどんどん増えていってしまうことを指すことが多いようです。(量が増えていくことは、耐性ができるといいます。【0685】がその例です)。

けれどもそこまでいかなくても、頼る気持ちが出てくればそれも依存といえないこともありません。そうなると、効く薬に対しては頼る気持ちが多かれ少なかれ出るのは当然ですので、厳密にいえば効く薬にはみな依存性があるということにもなります。しかしこの言い方は一般的ではないでしょう。

現代の睡眠薬に注意として書かれている「習慣性あり」という言葉は、上記の二つの状態の中間を意味していると考えて大体間違いありません。現実的には、曖昧な言い方ですが、「やめるのが難しくなる人はいるが、そう多くはない」という程度が事実ということになります。

ですから、依存を強くおそれるのも、逆に全く心配しないのも、どちらも正しい姿勢とはいえません。ただ私の経験上は、依存を強くおそれる人が、睡眠薬をやめられなくなることはまずないと言えます。これは、現代の睡眠薬は、薬理作用としては依存性は強くないので、本人の姿勢や意志が比較的大きく関係しているということだと思います。

依存に限らず、薬を飲んだほうがいいかどうかは、結局は期待する効果と副作用とのバランスによって決めることです。あなたのケースでは、不眠による日常生活の支障がかなり大きく、薬での治療をすすめるべきだと思います。

 

その後の経過 (2004.10.5.)


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