精神科Q&A
【0642】躁うつ病とアルコール依存症の合併
Q:
私の妹(現在24歳)のことです。妹は、心療内科でうつ病と診断されてから約5年たちます。妹は大学入学、一人暮らしをしていましたが、当初は、時期的にうつになるということで、(春先から梅雨にかけてうつになる)一定時期のみ薬を飲み、カウンセリングなどうけていましたが、いっこうに改善せず、昨年実家の方にての療養となりました。しかし、療養というより、現実は、朝からアルコールを飲み続ける日々が続き、一旦は抗酒剤を服用することにより、アルコールは飲まなくなり、うつ病のほうもよくなったかのように思われましたが、昨年秋口ぐらいから、急に活動的になり、知らない人に親しげに話しかけたり、夜中なのに電話しまくったり、消費者金融にお金を借りてまで洋服などを買い、私はなんでもできる!とか、私には人とは違った才能がある!とか自信ありげに多弁をふるい、しまいには人の話は聞かなくなり、抗酒剤を飲んでいても、飲酒するようになりました。どちらかというと、飲酒することにより、そういう症状がでていましたので、飲酒できないようにお財布をとりあげたりしましたが、しまいにはコンビニでビールを万引してまで飲酒するようになりました。このままではダメだ!と思った両親が妹を説得して、アルコール依存症からなおそうと、三ヶ月入院させました。入院中はアルコール依存症の治療と併用して、うつ病の薬も併用し、改善の傾向がみられました。
しかし、退院して二週間後、妹は散歩してくると言って自宅を出てから、何時間も帰ってきませんでした。親が心配して、外へ探しに行ったところ、スーパーのベンチでうつろな表情をしてビールを飲んでいる妹を見つけたのです。お金も持たず出て行ったのに、買い物かごにビールを30本ほどいれて座っていたそうです。店長に理由を話し、お金を払って、自宅に連れ帰りましたが、翌日、その行動の理由を聞くと、全く覚えていない。とのことでした。ただ、2・3日前から急にうつがひどくなった。。と言っていました。その後も通院はしていて、担当の先生にカウンセリングを受けています。先生の前では、真実は言わず、いい患者で、経過は良好だと言っているみたいです。私が思うに、妹はアルコール依存症と躁うつ病を併発していると思うのですが、こういう場合どのように治療していけばよいのでしょうか?ちなみに、躁状態は、二年ぐらい前からでていて、それもうつと同じで時期的なもので秋から冬にかけてです。そういったことも担当の先生にはお話したのですが、「妹の躁状態は軽いから、抗うつ剤を飲めば大丈夫です」と、言われました。それも本当でしょうか?
林: まずアルコールを完全にやめることです。妹さんがうつ病であれ、躁うつ病であれ、アルコール依存症でもあることは明らかです。こういう場合、まずアルコールを完全にやめなければ治療効果は期待できないことは、【0572】やうつ病の相談室のp.87以下にお書きしたとおりです。
なお、もし妹さんが躁うつ病であれば、薬物療法としては抗うつ薬だけでは不十分です。したがいまして、
妹の躁状態は軽いから、抗うつ剤を飲めば大丈夫です
と主治医の先生がおっしゃったというのは不可解です。
ただしこれは躁うつ病という前提が正しければ不可解ということです。うつ病でも不安焦燥が強いと躁状態に見えることがあります。その場合は抗うつ薬中心の治療になるでしょう。
けれども、
急に活動的になり、知らない人に親しげに話しかけたり、夜中なのに電話しまくったり、消費者金融にお金を借りてまで洋服などを買い、私はなんでもできる!とか、私には人とは違った才能がある!とか自信ありげに多弁をふるい、しまいには人の話は聞かなくなり・・・
この状態はうつ病の不安焦燥とは到底思えません。やはり躁状態でしょう。
診断については、もう一度主治医の先生によくお聞きすることをお勧めします。
しかし、診断がうつ病であれ躁うつ病であれ、今すべきとはアルコールを完全にやめることです。そうしなければ何も解決しないでしょう。