精神科Q&A
【0627】涙が出ます・・・しかし、擬態うつ病でしょうか
Q: 私は33歳の男性です。妻子がいます。
もともとIT業界でSE、プロジェクトリーダー等の職務を7年以上こなしていました。性格はまじめで責任感が人一倍強いほうだと思います。
3年前に、激務(会社に毛布を持ち込んで宿泊する日々)と人間関係の摩擦により、出勤できない(朝がつらく、涙がとまらない)状態になりました。その時にはメンタルクリニックでうつ状態と診断され、結局、抗うつ薬投与+4ヶ月の休職の後、職場復帰をしました。そのときは自責の念と情けなさでいっぱいでした。
その後、服薬、通院、カウンセリングを続けていましたが、経過は一進一退であまり良くなく、その会社を一昨年末に退職し、去年は3ヶ月半入院をし治療に専念しました。
入院中はそれなりに経過もよく、退院後はまずは社会復帰を目標に、週3回のスーパーでのアルバイトを始め、本格的な就職活動へ備えました。
それから3ヵ月後、かつてのIT業界に復職し、ごく最近にいたるまで順調に仕事をこなし、問題なく仕事をすることができたと思っていました。先日も上司から「試用期間後は正社員として登用する」と明言され、嬉しく思っていました。
しかし、ここ数日、急に
「まわりの皆は、自分のことを非難しているのではないか」
「どうしてこんな簡単な作業を1日かけてもできないんだろう」
「自分はダメな人間だ」「いずれ解雇されるに違いない」
「自分はこの会社には合っていないのではないか?」「浮いていないか?」
「自分は会社の役に立っていない。」などという感情が頭を支配し、まるで針のムシロの上に座っているような気分で職場の椅子に座っています。
職場でも、急に涙がこぼれることもあります。集中力や思考力が著しく低下し、とても辛く、いつもは出来ていた作業がまったく手につかなくなりました。
一日の作業が、1枚の紙に10個の枠線を書いてオシマイという日もあります。
一方で、私は2週間ほど前に、先生の「擬態うつ病」という本を読んでから、きっと自分も「甘えや怠けや自称うつ病を語っているだけなんだ。もっと強い心をもたなくてはいけない。」と思っていた矢先でした。なのに、そう思えば思うほど、体や心がそのように反応せず、現在苦しい日々を送っています。
薬は半年以上、パキシル20mgx2、テグレトール200mgx2、セパゾン1mgx2、頓服でデパス1mg を適宜飲んでいます。
質問1) 私の状態は、うつの再発による、意欲低下や焦りなのでしょうか?
それとも、甘えや怠慢によって、巧妙に擬態うつを装っているのでしょうか?
質問2) 私の妻は、うつ病に対し著しい偏見と差別の感情を持っています。もしうつ病の再発だとすると、離婚を考えていると通告されている現状です。もし再発ならば、これ以上症状を悪化させるわけには行きません。すみやかに症状を改善し、現状の職務を続けていくためのアドバイスがあれば、お願いします。
林: あなたはうつ病だと思います。ここ数日の症状としてあなたが書かれていることはいずれも典型的なうつ病で見られるものです。今回の症状は再発です。気を取り直して、うつ病の治療に専念されることをお勧めします。
私は2週間ほど前に、先生の「擬態うつ病」という本を読んでから、きっと自分も「甘えや怠けや自称うつ病を語っているだけなんだ。もっと強い心をもたなくてはいけない。」と思っていた
「もっと強い心をもたなくてはいけない」とお考えになることは、ある意味では常に正しいことではありますが、うつ病の症状がある程度以上出ている期間は例外です。この時は、とにかく休むことが第一です。いろいろ考えをめぐらすと、すべて悪いほうに考えたり、自責感に押しつぶされそうになることがしばしばあります。そして、あなたの現在の状態はこれにあたります。激務をきっかけに気持ちが落ち込んだり仕事が出来なくなった場合、それがうつ病なのか逃避なのかは、判断が難しいこともありますが、あなたのようにこれまで何年も勤勉に働いてきた方がそうなった場合は、うつ病の可能性がきわめて高いのです。【0625】、そしてうつ病の相談室もお読みください。
今はあれこれ考えず、うつ病の治療に専念されることをお勧めします。あなたの今の症状はすべてきれいに治ります。