精神科Q&A

【0625】会社のストレスでダウンした私は、うつ病か、それとも自分を甘やかしているのか


Q: 36歳男性です。結婚して4年で、家族は妻と2人です。

8ヶ月前に、14年勤めた会社の事業所が撤退することになり、別事業所への移籍を命じられました。ところが、その当時、ちょうど私は家を建築中であり、その家からは別事業所へ通うことができないため、移籍を受け入れるかまたは別の会社への転職をするかの選択に迫られました。辞めるか否かを決定するまで眠れない日々が続き、布団の中でどうすべきか散々悩みました。通信関連の仕事であり、忙しい時もありましたが、そのときしていた業務、仲間にはまったく不満もなく(不満どころか、やりたい業務を割と仲のいいメンバーと仕事できていたというのもあり、やりがいを感じておりました)、ただ勤務地だけが問題でした。通うことが不可能なため、家とアパートでの二重生活をせねばならないということもあり、金銭的・精神的・体力的に難しいのではと判断し、家から通える会社を探すことに決めました。この決定に際しては、妻および両親や友人、会社の同僚らとの相談を通して約2週間の間考えに考え抜いた結論であり、間違いではなかったと思っています(ただ、現在の状況からすると間違った判断をしてしまったのではないかと後悔するときもあります)。

転職活動が始まると、家から通えて業務内容が近い会社がなかなか見つからず、退職日が近づいていること、引っ越しの準備をしなければならないこと、多額のローンを抱えるにもかかわらず無職になってしまうのではという恐怖があり、やや焦りを感じておりました。そんな折、若干私がやりたかった仕事とは異なるのですが、家から通えるところの1社に内定をいただきました。私としてはあと数社の面接を控えており、そちらの状況を聞いてみたいとも思っていたのですが、人事担当者から内定を受け入れたら他社の面接をするのはおかしいのではと指摘され、また私としても前の会社の撤退による不安を早く解消したいとの気持ちからその会社へ入社することを決めました。

転職先では、これまでしてきた仕事とは若干異なる業種であるため不慣れなことも多々ありましたが、最初の2,3ヶ月は気持ちも張り詰めていたこともあり、順調にスタートできたかに思えました。ところが、年末頃から会社の環境・風土の違い、人間関係(これまでは自分より年上の方が多かったのですが新しい会社では若い人が多く馴染めなかった)、役割からくるプレッシャー(新しい会社ではいきなりリーダー的な役割を任され、仕事内容や進め方がまだよく把握できていない状況下でプロジェクトの計画・進捗などをしていかなければならなかった)、上司や他のリーダー、部下からのプレッシャー、新しい仕事を早く身につけてがんばらなくてはという焦り等があり、少し精神的に疲れを感じておりました。そこへまた新しい会社の事業所が移転することが決定したという噂が耳に入り、かなり精神的にダメージを受けました)。

移転話による精神的なダメージにより、仕事が手につかなくなり(ひょっとしたらこれは仕事が手につかない言い訳なのかもしれません)、プロジェクトでの失敗を経験しました。また、年が明けてからもなかなか人間関係においても改善されず(単に私が内向的な性格だからなのかもしれませんが)、事務所での孤独感を感じておりました。会社の帰りの車中では自分の無力感から泣きながら帰っていました。また、夜も眠れなくなりまた寝付いても何度も目を覚ますようになってしまいました。さらに、何をやっていても興味を感じられなくなったり、趣味のスポーツもあまりやる気が出なくなりました。また、食欲は変わらずにあるのですが、体重が入社時より7kg落ちました。

ひょっとしてこれはうつ病の症状?と考え、インターネットで調べたところ、うつ病の簡易テストを実施してほぼ症状が当てはまること、および現在の医療では薬が大変よく効くという話が掲載されており、自らすすんで精神科へ行きました。結果、「うつ病、1ヶ月の静養が必要」と診断され薬を処方されました(デパス錠0.5mg、トレドミン錠25mg、ベンザリン錠5mg)。

薬の効果はあり、日中の眠気はあるのですが、思考もプラスになり、睡眠も十分に取れるようになりました。ただ、会社にいると仕事を能率的にこなすことができない、会社の環境・風土および人間関係にいまだに馴染めないというのもあり、上司へ診断書を見せて少し静養させてもらえないかあるいは負担を減らすことはできないかをお願いしました。ところが、上司は静養・負担減どころか、さらに新しい仕事を私へ任せました。私としてはこれ以上負担をかけられると精神的におかしくなってしまうと感じていたため、退職することを決意しました(また、面接時には設計業務をしたかったのだが、リーダー的な役割で設計以外の間接的な業務がほとんどであったというのも辞めたい理由の1つでもあります)。

退職後、約10日になりますが、家で本を読んだり、TVを見たり、また趣味のスポーツにも興味がだんだん沸いてきました。ただ、再就職できるか(社会復帰できるか)を考えると焦りを感じますが、まだ少し休みたいとも思います。
これは甘えなのでしょうか? 働かなければいけないのは重々承知しておりますが、まだそういう気持ちに持っていくことができません。

私の病気は「うつ病」ではなくてうつ病を装っただけのものなのでしょうか? または「擬態うつ病」なのでしょうか? 自らすすんで精神科へ行ったり、食欲は変わらずありますし、退職後は趣味だけの生活をしたり、まだ少し休みたいと怠け心があったりして、自分を甘やかしているだけのように感じます(ただ、現在の精神状態では次の会社でも同じ失敗をしてしまいそうで、もっと落ち着いてから気持ちを整理して働きたいと考えております)。また、うつ病者の特徴である自殺願望のようなものまではありません(いなくなってしまいたいとは思ったりもするのですが、死んでしまいたいとまでは思いません)。


: 難しいケースですが、うつ病の可能性の方が強いと思います。うつ病として治療を続けることをお勧めします。

あなたのケースのように、気持ちの落ち込みにかなりはっきりした状況的原因がある場合、はたしてそれが病気なのか、それとも単にストレスを乗り越える力が不足しているのかは判断が難しいことが多いものです。けれども、

会社の帰りの車中では自分の無力感から泣きながら帰っていました。また、夜も眠れなくなりまた寝付いても何度も目を覚ますようになってしまいました。さらに、何をやっていても興味を感じられなくなったり、趣味のスポーツもあまりやる気が出なくなりました。また、食欲は変わらずにあるのですが、体重が入社時より7kg落ちました。

上記のような症状が、それまでは特に問題なく仕事をしていた方に出てきた場合、やはりうつ病である可能性が強いでしょう。その他、薬の効果や、ご自分の状態を甘えではないかと考えて自責的になることも、うつ病と判断する根拠になります。

また、自殺願望についても、

うつ病者の特徴である自殺願望のようなものまではありません(いなくなってしまいたいとは思ったりもするのですが、死んでしまいたいとまでは思いません)。

とあなたは書いておられますが、うつ病では、自殺願望には至らないまでも、いなくなってしまいたい、あるいは消えてしまいたい、あるいは時には事故などで死んでしまうのならそれも構わない、というような考えが出てくることはよくあります。生きることに対する執着が減ってしまう、と言ってもいいかもしれません。その極限に自殺があるとも言えるでしょう。

以上より、あなたはうつ病の可能性が高いと思います。甘えではないかというような考えはとりあえず捨て、うつ病の治療に専念することをお勧めいたします。


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