精神科Q&A
【0558】失声は自然治癒しますか
Q:
33歳女、美容師です。
10ヶ月程前から多少鬱気味でした。仕事に集中できない、悲観的なことばかり考えている、好きな人から見放される恐怖感などで、何も手に付かない状態に陥りました。以前にも（20代後半）似たような状態になったことがあったので、なるべく気持ちを切り替える努力をしたのですが、最終的には外を歩いていて、突然訳もなく涙が止まらなくなり、20代の時にお世話になった精神科に行きました。
久しぶりの通院は、道に迷い、パニックを起こし、泣きながら電話をする有り様で、待合室でも、診察室でも、顔を上げられませんでした。
診断は軽度の鬱で、
薬は 朝夕 トレドミン１５×２錠
就寝前 ベンザリン５×１錠、デパス０.５×１錠
を処方されました。
１ヶ月後に、トレドミンが２５×２錠に増え、その１カ月後にアナフラニール１０×１錠が朝夕に追加されました。症状も、小康状態で落ち着いてきていました。
就寝前の薬は、仕事柄睡眠時間がバラバラなので、５時間以上眠れる時間がある時のみベンザリンを服用しています。デパスは、だるくなるので止めました。
上記のような経過の後、ある日声が出なくなりました。耳鼻科を受診したところ、機能的な問題はなく、心因性と思われるので神経科・精神科などを受診することをすすめられました。通っている精神科の先生にも、心因性の失声だと言われ、カウンセリングを受けるようにとのことですが（それまでは、診察室で５分程度「どうですか？」「ではまた」という診察のみでした）、私は出来ればカウンセリングは受けたくありません。
発症したきっかけは、大きな仕事を抱えてプレッシャーがかかっていること、5年間お付き合いしている男性と、突然連絡が取れなくなっていることなどが重なったためではないかと、素人考えで想像しています。
失声の症状が現われた時は、文字通りまったく声が出なかったのですが、２週間ほど経った現在はとぎれとぎれながらも、かすれ声のようなものは出るようになりました。このまま、時間の経過とともに自然治癒する可能性はあるのでしょうか？
林: まず、診断は失声(しっせい)に間違いないと思います。そして、自然に治る可能性は十分あります。【0436】でも解説した通りです。
とぎれとぎれながらも、かすれ声のようなものは出る
というのは、失声の典型的な症状です。完全に声が出なくなることはむしろ稀で、ささやくような声なら出る、ということが多いものです。
良いカウンセラーや精神科医の治療を受ければ、回復は早まると思われますが(とはいっても、本当のところは、失声の回復に本当にカウンセリングが役立つのかどうかは証明されていません)、治療を受けなくても自然に回復します。
なお、原因はおそらくあなたがおっしゃるように、公私のストレスが重なったことだと思います。原因について、現実的なプラスの展開があれば、それに伴い急に回復することもあります。しかし、それがなくても、時間とともに回復します。
あなたのケースでは、失声以前に、うつ病にもかかっておられるようです。今のうつ病の治療はきちんと続けてください。失声については、あせらず回復を待ちましょう。