精神科Q&A

 【0543】不安神経症と診断されていたのですが、今の症状はうつ病でしょうか


Q: 34歳、女性です。七ヶ月前に初めてのパニック発作が起こり、その三ヵ月後にはじめて心療内科を受診しました。不安神経症と診断され、ワイパックスを服用していましたが、夏ごろからうつ病を併発しました。主な症状は睡眠障害、すぐに涙が出てしまう、体重減少、頭が重い、首と肩の凝りなどがあります。なんとか会社へ行っていましたが、仕事中に理由もなく涙が止まらなくなることが増え、集中力や意欲も極端に落ちてしまい、以前のように仕事がはかどらないことで、すっかり自分に自信を失いました。同僚に無言で責められているように感じられ、消えてしまいたいと思うようになりました。オフィスに居ることが苦痛で、在宅で仕事ができるよう上司にお願いしましたが、理解してもらえず絶望し、生まれてはじめて死にたいと思いました。主治医の指導で休職することになり、現在一ヶ月が経過したところです。

 投薬は、現在ルボックス(100mg)、ワイパックス(1.5mg)、睡眠薬(ドラール、サイレース)、漢方(半夏厚朴湯)を処方されています。漢方は喉の異物感(ヒステリー球)を緩和するためと主治医が仰っていました。

 休職しはじめの三週間は、冬眠しているかのように、ほとんど一日中眠っていました。が、ある日を境に不眠になり、一度に二時間、多くて四時間しか眠ることができません。体も心も消耗してしまい、睡眠薬を出してもらったのですが、やはり長く眠ることはできません。慢性的な疲労感があり、ふらついてしまうため、ほとんど外出もせず家事も放ったままの状態です。実家から家族が様子を見に来てくれましたが、人に会うと非常に疲れてしまい、家族が帰った途端、なぜか号泣してしまいした。翌日も一日中泣いていました。電話で誰かと話すことも悪い刺激になるようで、やはり泣いてしまいます。いっぽう、悪い夢で目覚め、一日イライラしてしまうこともあります。夢の内容はたいてい会社に関することで、復職したとたん同僚に無視されたり、会社で私の糾弾集会が開かれたり、といったものです。実際、仲のよかった同僚達が潮を引くように私に近寄らなくなり、休職後も全く連絡がありません。かなり人間不信になってしまいました。

 休職してからは、会社に行かずに済むためか、「消えたい、死にたい」と思うことはなくなりました。ただ、なにかにつけて 「どうして私はうつ病になったのだろう。どうしてパニック発作が起きたのだろう」と悩み、非常に落ち込んでしまいます。いつ、どこで道を誤ったのだろうと、つい過去を振り返ってしまうのです。でも、気分が良い日には近所に買い物へ出るくらいはできるので、そんなときは 「もしかすると、私はうつ病ではないのではないか」と思うこともあります。わかりにくいかもしれませんが、自分がこのような病気になったことに、納得が行かないのだと思います。

 家ではテレビもうるさく感じ見ておらず、ビジネスに関連した雑誌や書物には顔をそむけてしまいます。うつ病に関する本は手に取りますが、症状の説明のところは読むことができるいっぽう、「生き方を変える」「自己を見つめなおす」などの章になると辛くて読めず、本を閉じてしまいます。

 しばらく自宅療養する予定ですが、いずれは復職することになります。しかし、再発がとても怖く、現在の会社(非常に仕事のペースが速く、正確さも求められる職場です)に戻っても、長くはもたないと思うのです。同僚にもどう思われているかと思うと、それだけで戻る気にはなれません。それに、これまでの生き方が間違っていたのであれば、仕事を変えることも視野に入れなければいけないと感じます。かといって、具体的にどうしたら良いのか、まったくわかりませんし、行動を起こす元気もいまはありません。

 まずお尋ねしたいことは、私は本当にうつ病なのかということです。良く眠れた日は、それほど気分が悪くないからです(とはいえ、泣かない日はないのですが・・・)。また、これまでの生き方を振り返り、今後どうしたらいいか考えることは、意味のあることなのでしょうか。つまり、私が本当にうつ病だとしたら、これからの生き方をじっくり考えていくことが、治癒につながるのでしょうか。


: あなたはうつ病だと思います。「良く眠れた日は、それほど気分が悪くない」ことから、あなたはご自分が本当にうつ病なのかと疑問を持っておられますが、うつ病であってもある程度の波はあり、「それほど気分の悪くない」日や、そういう時間帯もあるのは珍しくありません。しかもあなたは抗うつ薬で治療を受けておられるわけですから、ある程度気分の良い時があるのはむしろ当然ともいえます。当初はパニック発作があり(ただし、「パニック発作」という記載だけでは、本当にそれがパニック発作であったかどうか判断できませんが)、不安神経症と診断されたとのことですが、うつ病の初期に不安のみが目立つ時期があるケースもありますので、あなたの症状の経過全体を通して、うつ病の比較的典型的な経過ともいえます。

 うつ病は、治ります。

 今あなたが持っておられる、ご自分の病気や将来に対する不安そのものが、うつ病の症状です。今は深く考えず、休むことがいちばんです。そうすれば必ず治ります。

 うつ病の本を読んで、少しでも改善の努力をされているようですが、これは今はやめるべきです。うつ病の症状がある程度以上ある時期には、今の時期は、うつ病の本は読まないほうがいいです。かえって症状を悪化させる可能性が強いです。何もしないで休むのがいちばんです。

 メールの最後に書かれたご質問、

私が本当にうつ病だとしたら、これからの生き方をじっくり考えていくことが、治癒につながるのでしょうか。

に対する答えは、はっきりと「ノー」です。治癒にはつながりません。悪化につながる可能性のほうが高いです。

 ただしそれは、「今」それを考えることが、悪化につながる可能性が高いということです。治ってからなら話は全く別です。

 というのは、うつ病には判断力の低下という症状もあるからです。生き方を考えるというようなことをすると、ますます悲観的になり、回復が遅れることにつながりやすいのです。

 うつ病の本を読むのも、生き方を考えるのも、よくなってからであれば、再発の予防に役立ちますが、今のあなたには、むしろ逆効果です。まずうつ病を治してください。うつ病についていろいろ考えるのは、そのあとです。

その後の経過(2009.1.5.)


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