精神科Q&A
【0502】アルコールを飲むと暴れたり自殺をする症状があります
Q: 33歳の男性です。アルコールを毎日飲んでいますが、飲まないようにしようと思えば飲まなくてもいいのでアルコール依存症ではないと思います。ただ、その時の状況によって飲むと暴れたり自殺をする症状があります。
自分では、記憶がないので良く分からないのですが、周りの人達から聞く話だと、まず顔つきが変わり、暴言を吐き人を殺そうと暴れまくり、警察に保護されても警官相手に殴りかかったり、自分の周りにある物を壊したり収拾のつかない状態になるらしいのです。
警察官の話では、おとなしくしていると思って話をしていると、いきなり暴れ出したりとか、本当に訳のわからない行動にでてしまうということです。自分の愛している人、尊敬する人や、心を許している友人などにも危害を加えるみたいです。
また、飲んで暴れて警察に拘留されているときに留置所の中でトイレの上にある換気扇に自分のズボンを巻きつけ首吊り自殺をしたこともありました。幸い警察官に助けられたのでこうして生きておりますが・・・。その時の警察官の話では、それまでずっと暴れていたのに、急におとなしくなったから様子を見に来たら首を吊っていたそうです。
ただこの時の事は少しだけ記憶があるのです。確か、家に帰ると言ってもまだ酒臭いから帰す訳には行かないと言われ、だったらこのまま自由が無くなるのなら死んで楽になろうと思い周りを見渡し、トイレの換気扇にズボンをかけて自殺しようと思い立ったのです。ちょうど警官の方からトイレの窓をみると死角になって見えないはずと思い実行したことも記憶しています。
ただ、このように記憶が少しでもあることは他のときはまったくといっていいほどなく、暴れたり人に危害を加えたことは本当にまったく覚えていないのです。私はなにかの病気なのでしょうか。
林: あなたはアルコール依存症です。アルコールをやめる以外の治療法はありません。
アルコールを飲んだときに、あなたのように記憶がない状態で別人格のようなふるまいをするのは、病的酩酊といいます。【0384】の方と基本的に同じ症状です。
病的酩酊になるということだけからは、アルコール依存症とはいえません。けれどもあなたのケースを見ますと、これだけ自分や他人に対して害があり、しかもその原因がアルコールであるとはっきりわかっている状況では、自発的にアルコールをやめるのが当然だと思います。それなのに飲むことをやめられない。これだけでアルコール依存症と診断できると思います。
「飲まないようにしようと思えば飲まなくてもいいのでアルコール依存症ではないと思います」
という言い方は、アルコール依存症の人の典型的な否認です。【0491】や【0027】も参照してください。アルコール依存症の人は、ほとんど例外なくこのようなことを主張されます。「飲まないようにすることはできる」と言いながら、飲むことを繰り返すのです。それを嘘つきだという人もいますが、それが病気なのだと考えるべきでしょう。
あなたはアルコールをやめなければなりません。このまま飲み続ければ、自分や他人を傷つける可能性がきわめて高いと思います。病的酩酊下の犯罪は、実際しばしばみられることです。あなたはアルコールをやめなければなりません。